下川町の住民の66.4%は町外出身|関係人口創出事業と移住者29人

2,716人の町で、住民の3分の2が町外から来ている

北海道上川郡下川町の人口は、令和8年11月1日現在で2,716人。内訳は日本人2,663人と外国人53人で、世帯数は1,559世帯である。国勢調査でさかのぼると昭和35年の15,555人が最大で、令和2年には3,126人まで下がった。60年あまりで5分の1になった町ということになる。

ただ、人口の増減だけを追うと見落とすものがある。町が令和8年に実施した「これからのまちづくりに向けたアンケート調査」では、回答者1,218人のうち「下川町出身ではない」が809人で66.4パーセントを占めた。出身者は402人(33.0パーセント)にとどまる。18歳以上の住民票保有者を対象にした調査なので、いま住んでいる人の3分の2は、どこかから移ってきた人だと読める。

移ってきた時期は、新しい層よりも古い層が厚い。町外出身者814人の居住年数は「30年超」が397人(48.8パーセント)で半数近くを占め、「20年以内」102人、「30年以内」95人、「10年以内」80人と続く。対して「1年以内」は34人(4.2パーセント)、「3年以内」50人、「5年以内」47人である。関係人口という言葉が政策に入るずっと前から、この町は外から来た人で成り立ってきた。

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関係人口創出事業は始まったが、測る目盛りがない

令和8年10月30日から11月30日まで、町は「第6期下川町総合計画基本計画(後期)案」の意見を募集している。後期の計画期間は令和9年度から令和12年度まで。その前の中期計画期間が令和5年度から令和8年度までだった。

計画のなかで関係人口が顔を出すのは、総務企画課が担う「多様な人材が活躍できる場づくり」という施策である。主要事業として並ぶのは、町民主体によるSDGs課題解決推進事業、SDGsパートナーシップセンター事業、SDGs普及展開事業、関係人口創出事業、中間支援組織との協働・連携事業、奨学金返還支援事業の6本。うしろの3本は中期計画期間の途中で「新規」として立ち上がり、後期も継続と書かれている。

では施策の達成はどう測るのか。置かれている目標指標は3つで、まちづくりに対する関心度、好きなことや生きがいがある人の割合、そして移住者数である。関わった人数や件数を数える指標は、この施策にも計画の他の施策にも見当たらない。事業は動き出したが、成果を読む目盛りはまだ用意されていない。環境政策で名前の知られた町の文脈は下川町はなぜ環境で名前が残るのか|森林9割と60年の輪伐計画で扱っている。

移住者数は中期計画が置いた目標に届いていない

目標指標 基準値(令和4年度) 後期案の基準値(令和7年度) 目標値(令和12年度)
まちづくりに対する関心度 6.17点 記載なし 7.50点
好きなことや生きがいがある人の割合 63.7% 記載なし 75.0%
移住者数 32人 29人 35人

表は後期案に載った3指標をそのまま並べたものである。移住者数は令和4年度の基準値が32人、令和12年度の目標値が35人。中期計画は令和7年度と令和8年度にそれぞれ33人を置いていた。これに対して、後期案が令和7年度の基準値として載せた数字は29人である。

4人の差は小さく見えて、人口2,716人の町では重みが変わる。年33人の転入は人口の1.2パーセントにあたり、29人なら1.1パーセント。この規模だと数人の増減が小学校の学年人数や公区の役員構成に直接出るため、目標を4人下回ることは年単位の計画の組み替えにつながる。

関心度と生きがいの2指標は、後期案の基準値の欄が空いたまま令和12年度の目標値だけが入っている。どちらも町民意向調査を母体にする指標なので、令和8年のアンケートが確定版になった段階で埋まるとみられる。公表されている数字は速報値で、データクリーニング前の集計だと町が自ら注記している。

残る理由と出ていく理由は、別々の数字で出ている

同じアンケートには、関係人口の政策を考えるうえで使える数字がもう少し入っている。「現在の下川町は住み良いところだと思うか」への回答は、住み良い23.2パーセントとどちらかと言えば住み良い51.1パーセントで肯定が74.3パーセント。否定の合計は16.1パーセントだった。

「これからも住み続けたいか」では、住み続けたい63.2パーセントに「住み続けたいが、この先は事情により困難」22.7パーセントを足した85.9パーセントが定住の意向を持つ。町外のどこかに移りたいは11.4パーセントである。住み良いと答えた割合より、住み続けたい割合のほうが11.6ポイント高い。

理由の側を見ると、残る側と出る側がきれいに分かれる。住み続けたいと答えた770人では居住環境がよい345人(44.8パーセント)、自然環境がよい306人(39.7パーセント)、災害や交通事故の危険が少ない260人(33.8パーセント)が上位。移りたい・困難と答えた415人では交通の便が悪い239人(57.6パーセント)、買い物する場所が少ない217人(52.3パーセント)、福祉・医療環境に不安がある172人(41.4パーセント)が並ぶ。環境のよさで引き留め、移動と買い物と医療で押し出されるという形である。

町が持っている数字から関係人口を組み立てる

関係人口の人数を市町村単位で数えた統計は、国にも町にもない。国の実態把握は都道府県別までで、町ごとの推計には届いていない。母数の取り方で評価が変わる事情は関係人口の調査データは三つある|公表年と対象で変わる母数を読むにまとめた。だから下川町の規模では、関係人口を正面から数えるより、関わりの入口になる数字を拾うほうが現実的である。

手元の材料は3つある。1つは公区活動・社会活動への参加で、何らかの活動に参加している人が556人(45.6パーセント)、参加していない人が518人(42.5パーセント)。2つ目は産業側の要望で、今後重要な施策として「担い手確保と人手不足への対策」を選んだ人が638人(52.4パーセント)と最多だった。3つ目は政策の優先順位で、子どもを産み育てやすい仕組みづくりが392人(32.2パーセント)で首位に来ている。

外から関わる人を増やす話は、この3つにつないだときに具体になる。担い手が足りない産業へ副業や短期の就労で入る、公区の行事に町外の人が加わる、子育て世帯の受け皿を町外の縁で広げる。すでに任期付きで入る仕組みの実際は森林9割の町で協力隊になる|下川町の9人と任期後に残る条件で確かめられる。地域と人をつなぐFLASPOの立場から見ても、受け入れ側の課題が特定されている町ほど、関わる側の役割は決めやすい。

よくある質問

下川町の関係人口は何人ですか。公表されていない。町の計画にも関係人口の人数を数える指標はなく、国の実態把握も都道府県別までしか推計していない。近い数字として使えるのは移住者数の基準値29人(令和7年度)と、住民のうち町外出身者が66.4パーセントという調査結果である。

関係人口創出事業はいつから動いているのですか。中期計画期間(令和5年度から令和8年度)の途中で「新規」として始まり、後期案では継続と書かれている。所管は総務企画課で、同じ施策に中間支援組織との協働・連携事業と奨学金返還支援事業が並ぶ。

アンケートの数字はそのまま引用してよいものですか。速報値であり、町はデータクリーニング前の集計だと明記している。設問8の町外出身者は809人、設問9の母数は814人と食い違いがあり、無回答者の回答が混じった可能性も町が注記している。確定版で動く前提で扱うのが安全である。

後期計画案に意見を出せますか。令和8年10月30日から11月30日までが募集期間で、郵送・ファックス・電子メール・役場窓口への持参で受け付けている。計画案は役場庁舎、公民館、総合福祉センターでも閲覧できる。意見の要旨は公表されるが、氏名や住所は公表されない。

出典:下川町「第6期下川町総合計画基本計画(後期)策定における意見の募集について」(町の告知ページ)および同ページ掲載の基本計画(後期)案・アンケート調査速報値報告書、下川町「町の人口・世帯数」(令和8年11月1日現在および国勢調査)。


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