結婚と都市部|東京の婚姻率5.7と未婚割合32.15%の矛盾

結婚と都市部|東京の婚姻率5.7と未婚割合32.15%の矛盾

婚姻率が最も高い都道府県は東京都

都市では結婚しにくい、という話は感覚としてよく共有されている。ところが人口に対する婚姻の多さで並べると、順位は逆になる。厚生労働省の令和6年の人口動態統計(概数)の都道府県別表では、2024年の婚姻率は人口千人あたり全国4.0に対して東京都が5.7で、47都道府県のうち最も高い。政令指定都市と特別区を含む再掲でも、東京都区部6.2と川崎市6.2が並んで首位に立ち、大阪市6.0が続く。

下から見ると差はさらに際立つ。最も低い秋田県は2.5で、東京都の半分以下だ。青森県・岩手県・山形県が2.9、奈良県が3.0と、東北と一部の近畿が並ぶ。全国平均の4.0を上回ったのは東京都・大阪府・愛知県・神奈川県・沖縄県・福岡県・埼玉県・千葉県など少数で、ほとんどは平均を下回っている。

この数字だけを根拠にすれば「結婚したいなら都市に出るべきだ」という結論になりそうだが、同じ統計の別の指標を並べるとまったく違う絵が出てくる。都市部と結婚の関係を読むには、婚姻率が何を測っている指標なのかを先に押さえる必要がある。

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生涯未婚の割合も東京都が全国一位

結婚しないまま50代に入る人の割合を示す指標が、50歳時未婚割合である。45〜49歳と50〜54歳の未婚率の平均をとったもので、国立社会保障・人口問題研究所が国勢調査から算定している。人口統計資料集の都道府県別50歳時未婚割合によると、2020年の値は全国で男性28.25%、女性17.81%。都道府県別で最も高いのは男女ともに東京都で、男性32.15%、女性23.79%にのぼる。

男性では埼玉県30.24%、神奈川県30.07%、千葉県29.89%と東京圏が上位を占め、最も低いのは滋賀県23.03%、福井県23.36%だった。女性は東京都に高知県21.13%、大阪府20.60%が続き、最低は福井県12.12%で、東京都との差は11.7ポイントに開く。婚姻率で首位の東京都が、未婚で生涯を終える割合でも首位にいる。

指標 全国 東京都 秋田県 福井県 沖縄県
婚姻率(人口千対・2024年) 4.0 5.7 2.5 3.6 4.4
50歳時未婚割合 男性(2020年) 28.25% 32.15% 28.66% 23.36% 29.12%
50歳時未婚割合 女性(2020年) 17.81% 23.79% 16.01% 12.12% 19.33%
合計特殊出生率(2024年) 1.15 0.96 1.04 1.46 1.54
離婚率(人口千対・2024年) 1.55 1.52 1.17 1.27 2.24
厚生労働省「令和6年人口動態統計月報年計(概数)」第9表および国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」表12-37(不詳補完値)より作成。

二つの指標が逆を向く理由

矛盾に見える並びは、分母と集計の決まりを確かめると解ける。婚姻率の分母はその年の総人口で、分子はその年に届け出のあった婚姻件数だ。結婚しやすい年齢の人がどれだけ住んでいるかによって、同じ「結婚のしやすさ」でも値が動く。東京都には20代が集中して暮らしているため、同じ割合で結婚しても件数は人口比で大きく出る。

人口の集中は毎年の移動で更新されている。総務省の2024年の住民基本台帳人口移動報告では、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)が13万5843人の転入超過、東京都単独で7万9285人の転入超過だった。前年に比べて東京圏は9328人、東京都は1万1000人それぞれ拡大している。進学と就職の時期に流入した人が、結婚する年齢になるころ東京に住んでいる。その流れの実態は東京圏への転入超過を若者の就職から見た記事で詳しく追った。

同じ報告では、日本人と外国人を合わせた社会増加が最も大きいのも東京都で14万548人、前年からの拡大幅も2万4350人で全国最大だった。流入が一年で途切れる動きではなく、毎年積み上がっていることが数字に表れている。働き始めてから結婚を考えるまでの数年を都市で過ごす人が多ければ、届け出の集まる場所も都市に寄る。

もうひとつ、人口動態統計には「婚姻は夫の住所による」という集計の決まりがある。夫が東京都に住んでいれば、妻がどこから来ても東京都の婚姻として数えられる。単身で働く人の住所が都心に寄りやすい事情と合わさって、婚姻件数は都市側に積み上がる。一方の50歳時未婚割合は、その時点でそこに住んでいる人を数えた割合なので、流入と流出の履歴が消えずに残る。

結婚しても出生率は上向かない東京

都市部の数字でもっとも説明を要するのは、合計特殊出生率である。2024年の東京都は0.96で、全国の1.15を大きく下回り47都道府県で最下位。最も高い沖縄県の1.54、次ぐ福井県の1.46とは5割以上の開きがある。婚姻率が全国一位の地域で、生まれる子どもの数が最も少ない。

ここに住居費と通勤時間が絡む。保育の空きを確保できるか、親族が近くにいるか、二人目を迎えたときに部屋が足りるか。どれも都市では費用と時間に跳ね返り、結婚という段階は越えられても次の段階で止まりやすい。地方では結婚そのものに至る人の割合が低い代わりに、結婚した人の出生率は保たれている。止まる場所が都市と地方で違う、というのが数字の読み方として近い。

この分岐は人口全体の形にも返ってくる。都市へ若年人口が移り、移った先で出生率が下がるなら、全国の出生数は二重に削られる。構造の整理は東京一極集中の構造を整理した記事と少子高齢化の現状を数字で確かめた記事にゆずるが、結婚と都市部の関係は、個人の選択の話にとどまらず人口政策の論点でもある。

住む場所を選ぶときに見る数字

都市と地方のどちらが結婚に有利かという問いには、一つの答えが出ない。出会う相手の数と職の選択肢では都市が勝り、住居費と通勤時間、保育の確保では地方が有利になりやすい。前者は結婚までの段階に効き、後者は結婚してからの段階に効く。自分がいまどちらの段階を見ているかで、重く見るべき指標が入れ替わる。

そのうえで確かめておきたいのは、地域の数字が自分に当てはまるかどうかだ。婚姻率は年齢構成に強く引っぱられるので、同じ県でも中心市と周辺部では事情が違う。市区町村の年齢別人口、保育所の待機状況、住居費の相場、通勤に使える交通の本数といった足元の条件は、都道府県単位の平均からは見えない。

暮らす場所を一度決めたら動かせないわけでもない。二つの地域に関わりを持ちながら働き方を調整する方法は選択肢として増えており、FLASPOが扱う地域との関わり方もその一つだ。結婚と都市部をめぐる数字は、どこかに移れば解決するという話ではなく、どの段階の条件を優先するかを選ぶための材料として読むのが適している。

よくある質問

婚姻率が高い都道府県はどこですか

2024年の人口動態統計(概数)では、人口千人あたりの婚姻率は東京都が5.7で最も高く、大阪府4.7、愛知県4.5が続きます。全国は4.0、最も低い秋田県は2.5でした。

東京都は婚姻率が高いのに、なぜ未婚の人も多いのですか

婚姻率は総人口を分母にするため、20代が多く住む地域ほど高く出ます。東京都は進学と就職で若い世代が流入し続けており、2024年も7万9285人の転入超過でした。一方の50歳時未婚割合はその時点の居住者を数えるので、結婚しなかった人も含めて残り、両方の数字が同時に高くなります。

50歳時未婚割合とは何を表す数字ですか

45〜49歳と50〜54歳の未婚率を平均した値で、国立社会保障・人口問題研究所が国勢調査をもとに算定しています。生涯を通じて結婚しない人の割合を近似する指標として使われます。

都市部で結婚すると子どもを持ちにくいのですか

2024年の合計特殊出生率は東京都が0.96で全国最下位、沖縄県が1.54で最高でした。住居費や通勤時間、保育の確保といった条件が子どもの数に影響していると考えられますが、個々の世帯の事情は統計の平均とは別に見る必要があります。

離婚率にも都市と地方の差はありますか

2024年の離婚率は人口千人あたり全国1.55で、東京都は1.52とほぼ全国並みでした。最も高いのは沖縄県の2.24、最も低いのは富山県の1.13で、婚姻率の高低とは別の並びになります。都市かどうかで一律に説明できる指標ではありません。

結婚を考えて移住する場合、どの数字を見ればよいですか

都道府県単位の婚姻率より、住もうとしている市区町村の年齢別人口、保育の待機状況、住居費の相場、通勤に使える交通の本数を確かめるほうが実際の判断に役立ちます。


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