二地域居住の業種|テレワーク導入率が92.8%と32.5%に割れる

二拠点で働けるかどうかは、本人の意欲よりも勤め先の業種で決まってしまう場面が多い。同じ正社員でも、会社がテレワークを制度として持っているかどうかで出発点が違う。その差は感覚の問題ではなく、業種別の導入率として毎年の統計に出ている。最も高い業種と最も低い業種の間は、六十ポイント開いている。

導入率は、業種のあいだで六十ポイント開いている

総務省の通信利用動向調査は、常用雇用者が100人以上の企業に対してテレワークの導入状況を聞いている。総務省におけるテレワークの取組についてに載った令和7年の集計では、全国の導入率は50.1パーセントで、令和4年以降の下降が止まって微増に転じた。産業分類別に割ると、順位の開きがはっきりする。

産業分類 テレワーク導入率(令和7年)
情報通信業 92.8%
金融・保険業 81.9%
不動産業 66.3%
建設業 57.8%
製造業 54.5%
卸売・小売業 45.5%
サービス業、その他 43.3%
運輸業・郵便業 32.5%
全国計 50.1%
総務省「通信利用動向調査」(常用雇用者規模100人以上の企業、導入していると回答した割合)より作成

情報通信業の92.8パーセントは、ほとんどの会社が何らかの形で導入しているという水準である。これに金融・保険業の81.9パーセントが続き、不動産業で66.3パーセントまで下がる。建設業と製造業は五割台にとどまり、卸売・小売業、サービス業、運輸業・郵便業は全国計を下回る。資料も、運輸業・郵便業やサービス業や卸売・小売業のような現場業務での導入率の低さを課題として挙げている。

注意したいのは、この数字が導入率であって実施率ではないことだ。会社に制度があっても、自分の職務で使えるとは限らない。それでも制度が無い会社で個人が二拠点を申し出るのは難易度が一段上がるので、まず導入率の水準を知っておく意味はある。

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同じ業種でも、会社の規模で三十七ポイント違う

業種だけを見て諦めるのは早い。同じ資料には従業員数別の導入率も載っており、100人から299人の企業は44.3パーセント、300人から499人は51.8パーセント、500人から999人は65.1パーセント、1,000人から1,999人は73.4パーセント、2,000人以上は81.2パーセントとなっている。小さいほうと大きいほうで三十七ポイントの差がある。

つまり業種と規模の二つを掛け合わせると、置かれている条件はかなり分かれる。情報通信業の小さな会社と、製造業の大企業では、どちらが制度を持っているか単純には言えない。資料が課題として挙げているのも小規模な会社での導入拡大で、業種ではなく規模が壁になっている部分が指摘されている。

この数字は常用雇用者100人以上の企業を対象にした調査なので、それより小さな事業所は集計の外にある。従業員数十人の会社に勤めている場合、周囲に前例がない可能性は統計から想定される水準よりさらに高い。制度が無いなら個別の取り決めから始めることになり、就業規則の条文を一から用意する手間が加わる。

実際に二拠点で暮らしている人の就業形態は、順番が入れ替わる

企業側の導入率とは別に、二地域居住を実施している人の属性も調べられている。国土交通省の二地域居住に関する資料によると、実施している人の割合は平均6.7パーセントで、本業が会社経営である人は13.6パーセント、フリーランスは10.4パーセント、正社員は8.5パーセント、自営業は7.3パーセント、派遣・契約社員は5.9パーセント、アルバイト・パートは3.6パーセントだった。

上位は経営者とフリーランスで、雇われている人の中では正社員が最も高い。働く場所と時間を自分で決められる立場かどうかが、そのまま順位になっている。資料も、定職者のうちテレワークを実施している人の割合が高いと整理している。なお学生が17.6パーセントと最も高く出ているが、これは実家への帰省が定義に含まれる影響だと資料自身が注記している。

ここで業種別の導入率と並べると、二つの軸が見えてくる。会社に制度があるかという軸と、自分の裁量で場所を決められるかという軸である。情報通信業の正社員は前者に恵まれ、業種に関係なくフリーランスは後者に恵まれる。どちらも無い場合に残るのは、業務の切り出しという三つ目の道になる。

現場の業種でも、切り出せる業務は残っている

導入率32.5パーセントの運輸業・郵便業に勤めていれば、二拠点はあきらめるしかないのか。厚生労働省のテレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインは、エッセンシャルワーカーなどが従事する業務のように、性格上テレワークが難しい業種や職種があることを認めている。そのうえで、難しいと考えられる業種や職種であっても、個別の業務によっては実施できる場合があると書いている。

この書き方が実務で効いてくる。配送そのものは持ち出せないが、配車の計画や請求の処理や研修の受講は場所を選ばないことがある。職種の名前でまとめて判断せず、一週間の業務を工程に分けて、どれが通信回線の先でも成り立つかを数えるほうが現実的だ。職種ごとの適性の見分け方は向く仕事と向かない仕事の軸立てが流用できる。

切り出せる業務が週に一日分あれば、月に一度の長めの滞在は組める。ガイドラインは、テレワーク可能日を労働者の希望や当番制や頻度で定める方法にも触れている。全部を持ち出す前提をいったん外すと、交渉の材料は増える。

業種から入るより、滞在の形から逆算したほうが早い

働く人の側の数字も見ておきたい。国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査では、雇用型テレワーカーの割合は全国で25.2パーセント、直近1年間のテレワーク実施率は16.8パーセントだった。令和7年10月のWEB調査で、有効回答は4万人である。企業の導入率が50.1パーセントであるのに対し、個人の実施率はその三分の一ほどにとどまる。

この落差があるので、業種の表を見て自分が入れる側かどうかを決めても、答えは半分しか出ない。先に決めたほうがよいのは、年に何回どれくらい滞在したいかである。週末だけなら働き方を動かす必要はほとんどなく、一週間を超える滞在を望む段になって、はじめて業種と規模と裁量の制約が効いてくる。

同じ資料は、東海や近畿や四国で導入率が大きく伸びた一方、北関東や九州・沖縄では減少幅が大きく、都市部とそれ以外の格差が広がる傾向を指摘している。滞在先の側で仕事を得る前提に寄せると、この地域差を背負うことになる。収入の柱をどこに置くかの整理は二地域居住の仕事の組み方のほうが詳しく、業種の話はその前段に置くと噛み合う。地域ごとの受け入れ状況はFLASPOのような地域情報をまとめた場でも追える。

よくある質問

導入率が高い業種に転職すれば解決するのか。情報通信業の92.8パーセントという水準は確かに別格だが、転職は収入と職務の両方を動かす選択である。実施者の割合で正社員が8.5パーセントと雇用者の中で最も高いことを踏まえると、今の会社で制度の有無を確かめるほうが手数は少ない。

会社に制度が無い場合、何から始めればよいか。ガイドラインが挙げる項目をそのまま議題にするのが早い。導入目的、対象業務、対象となる労働者の範囲、実施場所、実施できる日、申請の手続、費用負担、労働時間管理の方法が並んでいる。制度を作る側の論点なので、個人の希望より通りやすい。

フリーランスなら業種は関係ないのか。実施している人の割合は10.4パーセントで雇用者より高いが、仕事の受注が止まれば滞在も止まる。働く場所の自由と収入の安定は別の問題で、取引先が対面を求める業種では制約が残る。

アルバイトやパートでは無理なのか。実施している人の割合は3.6パーセントで、平均の6.7パーセントを下回る。勤務地に拘束される職務が多いことが背景にあるが、滞在の理由を仕事以外に置く選択は残っている。二拠点を支える収入の設計は若い世代の二地域居住でも仕事と住民票をあわせて扱っている。


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