二つの地域を行き来する暮らしで、最初に折れるのはたいてい住まいではなく収入の側である。家は借りれば手に入るが、働き方は勤め先の制度や取引先の都合と噛み合わなければ動かない。だからこそ順番としては、仕事の形を先に決め、その条件に合う土地と家をあとから探すほうが崩れにくい。
働き方は三つの方向に分かれる
収入源をどこに置くかで、必要な準備がまるで変わる。今の勤め先の給与を持ったまま場所だけ動かすのか、都市の仕事に地域の仕事を足すのか、地域の側に稼ぎの軸を移すのか。この三方向を混ぜて考えると話が進まなくなるので、まずは自分がどれを基本にするかを決めたい。
| 収入の置き方 | 収入の安定 | 滞在の自由度 | 必要な準備 |
|---|---|---|---|
| 雇用のままテレワーク | 高い | 勤務地の定めに縛られる | 就業規則と勤務場所の確認 |
| 本業に副業や兼業を足す | 本業ぶんは安定 | 時間の配分しだい | 届出と労働時間の管理 |
| 自営やフリーランス | 波がある | 自分で決められる | 取引先と通信環境の確保 |
| 地域で雇われて働く | 職種により差 | 勤務先の勤務日に従う | 求人の季節性の把握 |
| 農林漁業などのなりわい | 初年度は見込めない | 繁忙期に拘束される | 担い手や研修の窓口探し |
上の二つは都市側の収入を持ち込む形、下の二つは地域側で稼ぐ形になる。どちらが優れているという話ではなく、始めやすさが違う。多くの人は上から入り、地域での関わりが深まるにつれて下へ重心を移していく。
在宅で働ける人は思ったほど多くない
離れた場所から働ける前提そのものを、統計で確かめておきたい。総務省の令和6年通信利用動向調査によれば、テレワークを導入している企業は47.3パーセントで、前年の49.9パーセントから2.6ポイント下がった。導入予定を含めても51.2パーセントにとどまる。
働く人の側から見ると数字はさらに小さくなる。国土交通省の令和6年度テレワーク人口実態調査では、雇用型就業者のうちテレワーカーの割合は全国で24.6パーセント、前年度から0.2ポイントの微減だった。首都圏に限ると27.2パーセントで、全国より高い水準を保っている。
四人に一人という数字は、裏を返せば四人に三人は職場に行かなければ仕事にならないということでもある。同じ会社でも部署や職種で扱いが違うことは珍しくないため、制度があるかどうかではなく、自分の担当業務で何日まで離れられるかを確かめるところから始めたい。働き方の基礎は地方創生テレワークの解説も手がかりになる。
導入率が下がっている点も押さえておきたい。制度を縮める企業が出ている以上、いま在宅で働けていることは将来も続く保証にはならない。勤め先の方針が変わったときに収入の置き方をどう組み替えるかまで考えておくと、拠点を持ったあとの打撃が小さくなる。
雇われたまま動くなら就業規則を先に読む
勤務先の許可を後回しにすると、家を借りたあとで計画が崩れる。確認しておきたいのは、勤務場所がどう定められているか、出社の頻度に決まりがあるか、通勤手当や住宅手当の支給条件はどうなっているかの三点である。
見落とされやすいのが費用の扱いだ。二つ目の拠点から出社するときの交通費が通勤とみなされるのか、私的な移動として自己負担になるのかで、年間の持ち出しは大きく変わる。通信費や電気代の補助についても、支給の有無と金額の根拠を人事に聞いておきたい。
上司との合意だけで進めるのも危うい。異動や担当替えで前提が消えることがあるためだ。書面や社内の申請制度に残る形で認めてもらえるかどうかが、長く続けられるかの分かれ目になる。申請が通らない場合は、週の一部だけを試す段階から始め、成果に問題がないことを示してから範囲を広げる進め方が現実的である。
二本目の柱として副業や兼業を置く
地域側での仕事を少しずつ育てたいなら、副業という形が入口になる。厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを平成30年1月に策定し、令和2年9月と令和4年7月に改定している。企業と働く人の双方が注意すべき点を示したもので、労働時間の管理や健康確保の考え方が整理されている。
雇用されて副業をする場合、労働時間は本業と通算して扱われるのが原則である。ガイドラインでは原則的な管理方法に加えて簡便な管理の方法も示されており、受け入れる側の企業がどちらで運用するかによって、働ける時間の上限が変わってくる。
公務員は民間と扱いが異なり、法令にもとづく許可が必要になる。近年は地域貢献にあたる活動を認める自治体が増えており、基準を公表しているところもある。詳細は地方公務員の兼業の整理を読むと差がわかる。いずれの立場でも、先に許可の道筋を確かめてから相手方と話を始めたい。
報酬のとり方にも段取りがいる。請け負う形で仕事を受ければ労働時間の通算からは外れるが、そのぶん確定申告や経費の管理が自分の手に移る。年の途中から始めるなら、帳簿の付け方と保険の扱いを初回の入金までに決めておきたい。
地域の側で稼ぐなら季節の波を前提に置く
地域に収入の軸を移す場合、都市の求人とは需要の出方が違うことに注意がいる。農繁期、観光の最盛期、雪の季節といった山と谷があり、一年を通して同じ量の仕事があるとはかぎらない。一つの職場で通年の収入をまかなう発想ではなく、複数の仕事を組み合わせて年間を埋める考え方が要る。
この組み合わせ方を制度にしたのが、人口が減っている地域向けの特定地域づくり事業協同組合である。組合が職員を雇用し、季節ごとに需要のある事業所へ派遣する仕組みで、働く人は無期雇用のまま複数の現場を経験できる。受け入れ側も、通年では雇えない人手を必要な時期だけ確保できる。
二地域居住促進法の改正で指定制度ができた特定居住支援法人も、住まいやコミュニティと並んで、なりわいに関する情報提供や相談を担うと位置づけられている。地域の仕事は求人サイトに出ないものが多いため、こうした窓口や現地の人のつながりから入るほうが早い場合がある。仕事の探し方は地方移住後の仕事の見つけ方も参考になる。
よくある質問
移動している時間は仕事にできるか。新幹線や特急のように座って作業できる区間なら実務の時間に充てられるが、運転を伴う移動では不可能である。移動を働く時間として見込むかどうかで、選ぶべき交通手段と拠点の距離が変わってくる。
通信環境はどの程度必要か。会議を伴う仕事なら、契約前に現地で実際の速度を測っておきたい。光回線が引けない住所もあり、携帯回線で代替する場合は建物や時間帯による差が出る。予備の回線を一つ持っておくと、当日になって会議に出られない事態を避けられる。
収入が下がる覚悟は必要か。都市の給与を保ったまま動く形であれば下がらないが、地域側へ軸を移せば水準は変わりやすい。生活費の差で相殺できるかを先に試算し、貯えでどれだけの期間しのげるかを把握してから移すのが安全である。
家族がいる場合はどう調整するか。配偶者の勤務や子の通学は、本人の働き方より動かしにくいことが多い。一人だけが行き来する形にするのか、長期休暇に合わせて全員で動くのかを先に決めておくと、住まいの広さや滞在の時期も自然に定まってくる。
始める前に何を確かめるべきか。就業規則、副業の可否、通信環境、そして繁忙期の拘束。この四つが揃って初めて、二拠点の生活は計画として成り立つ。FLASPOのような地域とつながる場を使い、現地の働き口を知る人に直接聞いておくと精度が上がる。制度の一次情報は厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインと、国土交通省の令和6年度テレワーク人口実態調査で確認できる。
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