二つ目の拠点を持とうと思い立った人が最初に開くのは、たいてい物件情報のページである。ところが物件から入ると条件が絞れず、同じ画面を何度も往復することになりやすい。年に何日その土地にいるのか、荷物を置いたままにするのか、家族も一緒に動くのか。この三点が決まらないうちは、借家も空き家も宿も同じくらい正しく見えてしまう。
滞在の型が決まれば住まいの形は絞れる
毎週末に通う人と、春と秋にひと月ずつ腰を据える人とでは、必要な家がまるで違う。前者は移動のたびに荷物を持ち歩かずに済むことが最優先になり、後者は台所や風呂の使い勝手が効いてくる。まず自分の滞在がどちらに近いかを決め、そこから形を選ぶ順番にすると迷いが減る。
| 住まいの形 | 初期の負担 | 荷物を置けるか | やめやすさ | 向く滞在のしかた |
|---|---|---|---|---|
| 賃貸で借りる | 敷金礼金と家財の一式 | 置ける | 解約すれば終わる | 月に数回、通年で通う |
| 空き家などを取得する | 取得費に改修費が乗る | 置ける | 売るか貸すまで残る | 年単位で長く関わる |
| 自治体のお試し住宅 | 利用料のみ | 期間中だけ | 期間が来れば終わる | 地域を見極める段階 |
| 宿や民泊を都度取る | 予約のつど | 置けない | いつでもやめられる | 年に十数日まで |
| 実家や親族の家を使う | ほぼ不要 | 置ける | 関係しだい | 帰省を兼ねる形 |
表の右端が自分の実態と合っていなければ、左の選択は高くつく。年に十数日しか行かないのに家を借りれば空室に家賃を払うことになり、毎月通うのに宿を取り続ければ荷物を運ぶ手間が積み上がる。住まいの形は好みではなく、滞在の頻度から決まると考えたほうが実務に合う。
もう一つ決めておきたいのが、二つの家をどこまで同じ水準でそろえるかである。両方に同じ道具を置けば移動は身軽になるが、持ち物は二倍になり、使わない月の置き場所を払い続けることになる。どちらかを簡素に保つと決めておくと、増えすぎる前に歯止めがかかる。
空き家は多い、けれども選べる家は絞られる
受け皿そのものは全国に大量にある。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査によると、2023年10月1日現在の空き家は900万2千戸で、2018年の848万9千戸から51万3千戸増えて過去最多となった。総住宅数に占める空き家率は13.8パーセントで、こちらも過去最高である。
ただし、この数字をそのまま候補数だと受け取ると外れる。900万2千戸の内訳には賃貸用の空室や売却予定の住宅、別荘などの二次的住宅が含まれており、それらを除いた空き家は385万6千戸となる。さらにその中には、長く使われず傷みが進んで手を入れなければ住めない家も少なくない。
数の多さは「探せば必ず見つかる」ことを意味しない。むしろ、市場に出ていない家が多いことの裏返しでもある。表に出てくる物件を待つより、空き家バンクへの登録や現地の不動産会社、地域の知り合いといった複数の入口を同時に開けておくほうが早い。
先に泊まってから決める順番にする
住まいを先に決めてしまうと、合わなかったときの逃げ場がない。そこで間に挟みたいのが、自治体が用意する移住体験用の住宅である。地域の空き家を改修して数日から数か月の単位で貸し出す形が多く、契約を結ぶ前に生活の感触を確かめられる。
確かめるべきは景色ではなく、暮らしの手触りのほうだ。冬の朝に室内が何度まで下がるか、買い物と病院までの往復に何分かかるか、通信が滞る時間帯はあるか、ごみの出し方と集積所の場所はどうなっているか。写真では伝わらないこれらの条件が、続くかどうかを左右する。
季節を変えて二度訪れると精度が上がる。雪の量、草の伸びる速さ、夏の湿気、祭りや行事の忙しさは、一度の滞在では見えない。FLASPOのように地域と関わる入口を提供する取り組みを使い、短い滞在を重ねてから住まいを決めても遅くはない。
利用にあたっては、募集要項を先に読んでおきたい。移住や二地域居住を検討していることの確認、滞在後の報告、利用できる期間や人数の上限など、条件を設けている自治体がある。人気のある施設は希望の時期が埋まりやすく、申込みから利用までに数か月かかることも珍しくない。
契約と管理の取り決めが後から効いてくる
家が決まりかけたら、紙の上の条件を先に詰めておきたい。賃貸なら更新の有無と解約予告の期間、原状回復の範囲。期間が区切られた契約であれば、延長できるかどうかを入居前に確かめておく。留守が長い使い方をする以上、途中でやめる条件は入口で握っておくほうが安全である。
保険も確認が要る。常時人が住んでいない建物は、住宅として契約できる場合とそうでない場合があり、区分によって補償の範囲も保険料も変わる。取得して所有する場合はなおさらで、加入の前に使い方を正直に伝えておかないと、いざというときに支払いの対象外になりかねない。
そして、留守の間に誰が家を見るかを決めておく。郵便物、通水、草刈り、雪おろし。近所に頼めるのか、有料で委託するのかで、年間の手間と費用は大きく変わる。取り決めのないまま始めると、その負担は結局、近くに住む誰かが黙って引き受けることになる。
住まいの確保を制度の側から支える仕組みが動き出した
個人の工夫だけに任されてきた部分に、2024年から公的な後ろ盾がついた。広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の改正法が2024年5月2日に公布され、同年11月1日に施行されている。市町村が特定居住促進計画を作れるようになり、あわせて特定居住支援法人の指定制度が設けられた。
この支援法人が担うと位置づけられたのが、住まい、なりわい、コミュニティの三つである。つまり家の情報提供や相談が、個々の大家や不動産会社の善意ではなく、指定を受けた法人の役割として明文化された。国は施行から5年以内に、計画と支援法人をそれぞれ600件まで増やす目標を掲げている。
実際に動き出した自治体もある。静岡県焼津市は協議会を設けたうえで特定居住促進計画を策定し、地元企業を特定居住支援法人に指定した。住まい探しで行き詰まったとき、この計画を持つ市町村かどうかを確かめると、相談先が見つかる可能性は高くなる。仕組みの全体像は二地域居住の基礎知識もあわせて読むと整理しやすい。
よくある質問
借りるのと買うのでは、どちらから始めるべきか。迷う段階なら借りる側から入るほうが損が小さい。合わなかったときに解約で済み、地域の相場や生活の勘所を知ってから取得を検討できるからだ。
安い空き家を見つけたら、すぐ決めてよいか。価格だけで判断しないほうがよい。屋根や外壁、水回り、床下の状態によっては改修費が本体価格を上回ることがあり、残置物の処分費が別に必要になる場合もある。見学の段階で複数の業者から見積もりを取り、合計額で比べたい。
家具や家電はどこまで運ぶべきか。最初から一式をそろえると、やめるときの処分が重くなる。寝具と最低限の調理道具から始め、滞在が続くと分かってから買い足す進め方が現実的である。地方での暮らし全般の準備は地方移住の基本も参考になる。
改修にはどこまでお金をかけるべきか。最初の年に全部を直そうとしないことだ。雨漏りやシロアリ、給排水の不具合といった建物の寿命に関わる部分を先に手当てし、内装や設備は住みながら順に整えていくと、無駄な出費を避けやすい。自治体によっては改修費の一部を補助する制度があるため、着工前に窓口へ確認しておきたい。
住民票はどちらに置くのか。制度上、住民票は生活の本拠に一つだけ置く。二つの家を行き来していても、暮らしの中心がどちらかを自分で判断して届け出ることになり、行政サービスや税の扱いはその一つに結びつく。詳しくは国土交通省の二地域居住の推進や、総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査の結果で最新の情報を確かめてほしい。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
