「二拠点だと月いくらかかりますか」という問いには、正直なところ一つの答えがない。滞在の頻度、距離、借りるか買うか、車を持つかで倍ほど違ってくるからだ。ただ、費目そのものは誰がやっても同じ顔ぶれになる。公的な統計と税率が分かっている部分から積み上げていけば、自分の場合の輪郭はかなり正確に描ける。
三つの層に分けると見通しがよくなる
見積もりが狂う原因の大半は、性質の違う出費を一緒くたにしていることにある。契約時に一度だけ出ていくお金、毎月出ていくお金、年に一度まとめて請求されるお金。この三層に分けて並べ直すと、どこが効いているかが一目でわかる。
| 費目 | 発生のしかた | 見積もりの手がかり |
|---|---|---|
| 住居費(賃料または取得費) | 毎月または取得時に一括 | 令和5年の借家平均は月59,656円 |
| 初期費用(敷金礼金・改修・家財) | 契約時に一括 | 賃料の数か月分に改修費と家財を加算 |
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年 | 課税標準額×1.4%、市街化区域は0.3%以内を加算 |
| 住民税の均等割(家屋敷課税) | 毎年 | 住所がなくても課されることがある |
| 光熱費・通信費の基本料金 | 毎月 | 滞在しない月も発生する |
| 移動費 | 往復のつど | 往復1回の単価×年間の往復回数 |
| 車の維持費 | 毎年 | 自動車税、任意保険、車検、タイヤ |
| 留守宅の管理費 | 都度 | 草刈り、除雪、見回りの委託費 |
この表の右列を自分の条件で埋めていく作業が、そのまま予算づくりになる。埋められない欄が残ったら、そこが調べ残しである。
並べたあとは、すべてを年額に直しておきたい。毎月の支出は12倍し、年1回の税はそのまま、往復のつど出ていくお金は年間回数を掛ける。月単位のままだと年に一度の請求が視界から消えるため、実際の負担を小さく見積もってしまう。
住まいの相場は統計から当たりがつく
借りる場合の水準は公的な統計で確かめられる。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査によると、借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は全国平均で59,656円、平成30年調査と比べて7.1パーセント上がっている。
内訳を見ると幅がわかる。民営借家のうち木造は54,409円、非木造は68,548円。公営の借家は24,961円、都市再生機構や公社の借家は71,831円、給与住宅は37,993円となっている。木造と非木造で1万4千円ほどの差があり、地方の一戸建てを借りる形は前者に近い水準に収まることが多い。
買う場合は、物件価格そのものより改修費の読みが難しい。安く手に入る家ほど、屋根、外壁、水回り、断熱に手が必要で、解体すべき残置物が残っていることもある。見学の段階で必ず見積もりを取り、取得費と改修費を合算した額で判断したい。流通の入口としては空き家バンクが使える。
もう一つ持っておくと便利なのが、滞在1日あたりの単価という物差しである。年間の総額を実際に滞在した日数で割ると、宿を取り続けた場合と比べられる。年に20日しか行かないなら宿のほうが安く、年に60日を超えるあたりから拠点を構える形が有利になりやすい。自分がどちらの側にいるかで、借りるべきか通うべきかの結論は変わる。
税金は滞在していない月も動いている
所有すると毎年かかるのが固定資産税で、標準税率は1.4パーセントである。市街化区域に建っていれば、都市計画税が制限税率0.3パーセントの範囲で市町村ごとに加わる。住んでいようといまいと、1月1日時点の所有者に課される仕組みだ。
負担を左右するのが住宅用地の特例である。住宅の敷地は200平方メートル以下の部分について固定資産税の課税標準額が6分の1、都市計画税は3分の1に軽減され、200平方メートルを超える部分はそれぞれ3分の1、3分の2となる。効き方が大きいため、適用されるかどうかで年額が数倍変わることもある。
ここに二地域居住ならではの分岐がある。地方税法施行令第36条第2項にいう別荘、つまり日常生活の用に供しない、専ら保養の用に供する家屋は、この特例の対象から外れる。一方、別荘以外の家屋で毎月1日以上居住の用に供しているものはセカンドハウスとして扱われ、特例が適用される。滞在の実績を記録に残しておく意味はここにある。
移動費は頻度で決まる単純な掛け算
交通費の見積もりは、往復1回の単価と年間の往復回数を掛けるだけで足りる。単価には運賃だけでなく、駅までの交通費、高速道路料金、燃料代、駐車場代まで含めておく。この単純な式が重要なのは、頻度を一段変えたときの影響がすぐ見えるからだ。
たとえば往復1万5千円の経路なら、月2往復で年間36万円、月4往復なら72万円になる。住居費が月5万円なら年60万円なので、通う回数によっては移動費のほうが住居費を上回る。にもかかわらず、物件を先に決めてしまう人が多い。
公共交通が届かない地域を選んだ場合は、車の費用も加わる。自動車税、任意保険、車検、燃料、積雪地なら冬用タイヤ。現地でレンタカーやカーシェアを使う選択もあるが、滞在日数が増えるほど所有したほうが安くなる分岐点に近づく。距離と頻度を先に決め、それに見合う住まいを探す順番が結局いちばん安く収まる。
下げられる費目と、下げられない費目
税金と基本料金は工夫の余地が小さい。一方で、住居費と初期費用は制度で圧縮できる可能性がある。2024年11月に施行された二地域居住促進法のもとで、市町村は区域を定めた特定居住促進計画を作成し、滞在者向けの住まいや仕事場の整備を進められるようになった。対象地域なら、改修費の補助や公的な物件の紹介にあたれる。
自治体独自の空き家改修補助や家賃補助も広く用意されている。額も条件も市町村ごとに違うため、候補地が絞れた段階で窓口に直接あたるのが早い。国や自治体の制度全体は地方移住の補助金の整理が参考になる。
住まいを持たない形も検討に値する。月極の宿泊サービスや定額制の住まい、シェア型の拠点を使えば、固定資産税も留守宅の管理費も発生しない。最初の1年をこの方式で過ごし、地域と頻度が固まってから借りるか買うかを決めるほうが、取り返しのつかない出費を避けられる。地域とのつながりづくりにはFLASPOのような場も使える。
やめるときにかかるお金も先に見ておきたい。賃貸なら原状回復の費用、購入した家なら売却までの維持費と仲介手数料が要る。買い手がつきにくい地域では、手放すまでに年単位の時間がかかることもある。入口の安さだけで決めると、出口で想定外の負担を抱えることになる。
よくある質問
費用まわりで実際によく聞かれる点を挙げておく。
最低でも月いくら見ておけばよいのか。条件によって幅が出るため一律の額は示せないが、住居費、光熱と通信の基本料金、移動費の三つを自分の頻度で積むと下限が見える。表の八つの費目のうち、空欄がなくなった時点の合計がその人の実額になる。
別荘とセカンドハウスで税額は変わるのか。変わる。住宅用地の特例が適用されるかどうかで土地の課税標準額が大きく動くため、同じ物件でも年額に差がつく。判定は市町村が行うので、取得前に資産税担当へ確認しておきたい。
家賃の相場を地域ごとに知りたい。住宅・土地統計調査は都道府県別や市区町村別の集計も公開されている。全国平均だけで判断せず、候補地の数値を見たほうが精度が上がる。
補助金はいつ申請するのか。多くの自治体で、契約や着工より前の申請を条件にしている。物件を決めてから調べると間に合わないことがあるため、候補地が絞れた時点で窓口に相談しておくのが安全である。
出典はどこを見ればよいか。家賃は令和5年住宅・土地統計調査の結果概要、土地の税制は国土交通省の土地の保有に係る税制、制度の現況は国土交通省の二地域居住の推進が一次情報になる。暮らし方の全体像は二地域居住の概要にまとまっている。
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