関係人口の調査データは三つある|公表年と対象で変わる母数を読む

同じ言葉なのに人数が三つ並ぶ

関係人口の人数をレポートに書こうとすると、1,080万人・1,827万人・2,263万人という三つの数字に行き当たる。どれも国土交通省の推計で、調査の名前も「地域との関わりについてのアンケート」で共通している。にもかかわらず人数が倍近く違うので、どれが正しいのかと迷ったまま手が止まる。

結論から言えば、三つとも間違っていない。同じ設計のアンケートを時期を変えて三回実施した結果であり、対象にした地域と母数がそれぞれ違う。だから並べて比べる前に、どの年の調査か、誰を母数にした割合かを確かめる必要がある。

最初の調査は三大都市圏の居住者だけを対象にした試行的なものだった。令和2年2月18日の公表資料によると、調査は令和元年9月に実施され、有効回答は28,466人、18歳以上の居住者約4,678万人に対し訪問系の関係人口は約1,080万人と推計された。回答者に占める割合は23.2%である。

二回目で対象が全国に広がる。令和3年3月17日の公表資料では令和2年9月の調査、有効回答148,831人で、18歳以上の居住者約10,615万人のうち訪問系が約1,827万人となった。母数が倍以上になったので人数も増えているが、割合は2割弱に下がっている。

三回目が現在よく引かれる数字である。令和7年6月27日の報道発表では、18歳以上の居住者約10,275万人のうち訪問系が約18%の約1,884万人、訪問を伴わない非訪問系が約4%の約379万人で、合わせて約22%の約2,263万人という推計になった。母数は令和2年国勢調査の人口である。

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三つを並べると何が変わったかが見える

人数の違いの大半は、対象地域と母数の取り方で説明がつく。表に置き直すと、どの数字をどの文脈で使えるかが決まる。

公表 調査時期 対象 有効回答 母数(18歳以上) 関係人口の推計
令和2年2月 令和元年9月 三大都市圏の居住者 28,466人 約4,678万人 訪問系 約1,080万人(23.2%)
令和3年3月 令和2年9月 全国の居住者 148,831人 約10,615万人 訪問系 約1,827万人(約2割弱)
令和7年6月 令和5年9〜10月 全国の居住者 118,963人 約10,275万人 訪問系 約1,884万人・非訪問系 約379万人(計約22%)

注意したいのは、非訪問系という区分が示されたのが三回目だということである。ふるさと納税やクラウドファンディング、地場産品の購入、オンライン交流のように、現地に行かずに関わる人を数えた区分がここで加わった。したがって2,263万人と1,827万人を単純に引き算して「6年で436万人増えた」と書くと、区分の追加を増加と読み違えることになる。

二回目の資料には、全国を三大都市圏とその他地域に分けた内訳も載っている。訪問系の割合は三大都市圏の居住者で18.4%(約861万人)、その他地域の居住者で16.3%(約966万人)だった。地域に直接寄与する型に絞ると三大都市圏で6.4%(約301万人)、その他地域で5.5%(約327万人)である。都市から地方へという一方向の図式が、数字では成り立っていないことがここで分かる。

公表年と調査年がずれている点も押さえておきたい。三回目は令和5年の秋に実施した調査が令和7年6月に公表されている。本文で「2025年の調査」と書くと内容と合わなくなるため、調査時点と公表時点は分けて書く。

類型の内訳まで下りないと使えない

全体の人数だけでは、関わりの中身が見えない。資料1「関係人口の分類と推計値」は、訪問系を結びつきの深さの順に五つへ分け、それぞれの推計値を示している。

類型 割合 推計人数 具体的な関わり
直接寄与型 約23% 約437万人 地域の産業創出、地域づくりの企画・運営・協力、マルシェへの出店
就労型(現地就労) 約6% 約105万人 地元企業での労働、農林水産業への就業やサポート
参加・交流型 約26% 約485万人 地域の人との交流、イベントや体験プログラムへの参加
就労型(テレワーク) 約8% 約145万人 本業や副業を訪問先で行う
趣味・消費型 約38% 約711万人 地域での消費活動や趣味活動

最も多いのは趣味・消費型で、約711万人にのぼる。報道発表でも訪問系の類型は趣味・消費型が最多、次いで参加・交流型、直接寄与型と並ぶと記されている。地域に関わる人の中心は、まず買い物や趣味で通う層だということである。

一方で現地就労型は約105万人にとどまる。全体の2,263万人と比べれば5%に満たない。地域の担い手として期待される層が、実数ではきわめて細いことを示す数字なので、政策の効果を論じる章では欠かせない。関係人口の現状を数字で確かめるで全体像を押さえたうえで、類型別の人数に下りていく順番が読みやすい。

なお、この五つは排他的な区分ではない。報道発表は類型を複数回答で見た結果として扱っており、割合の合計も100%にきれいには収まらない。一人が趣味で通いながら祭りの運営を手伝うことがあるため、重複を前提に読む必要がある。

訪問日数と交通手段が「続くか」を測っている

関係人口という言葉の定義には「継続的」という条件が入っている。では継続とはどれくらいの頻度なのか。三回目の調査は訪問日数を集計しており、年間1日以下が約20%、2〜7日が約49%、8日以上が約31%だった。半数が年に数日で、週末に二、三回行く程度が標準の姿である。

類型によって日数は大きく変わる。現地就労型とテレワーク型では8日以上が約半数を占め、他の類型より明らかに訪問が多い。働くという接点が入ると通う回数が増えるという関係が、ここに出ている。

続かない理由も聞かれている。これから地域と関わりたい人が挙げた改善点は、仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保が27.4%、移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減が26.7%、地域に行くための交通の利便性の改善が26.4%で、三つが並んでいる。地域の魅力の不足ではなく、時間と費用と足の問題が上位に来ているのが特徴である。くわしい読み方は関係人口が増えない理由を数字で見る記事にまとめてある。

移動手段では自家用車が約58%で単独では最多だが、鉄道や新幹線、飛行機、高速バス、路線バス、旅客船を合計すると自家用車を上回る。車を持たない学生にとっては、この合計のほうが現実に近い。

流動の方向も意外な形をしている。最も多いのはその他地域からその他地域への約763万人で、次に首都圏都市部からその他地域への約293万人、首都圏都市部から首都圏都市部への約222万人が続く。地方どうしの行き来が最大の塊だという事実は、地域の側で誰を呼ぶかを考えるときの前提が変わる論点である。

調べる順番を決めておくと手戻りがない

数字を探すたびに検索から始めると、解説記事の孫引きに行き着いてしまう。先に資料の並びを覚えておくほうが早い。

出発点は調査結果の資料一覧である。ここに調査ごとの資料1と資料2が置かれている。資料1は分類と推計値をまとめた一枚で、全体像と類型別の人数はここで足りる。資料2は実態把握の詳細版で、地域区分や訪問日数、改善点の集計が入っている。報道発表の本文には引用元のページ番号が併記されているので、資料2のどこを開けばよいかは報道発表を先に読めば分かる。

制度の側から調べるなら総務省の関係人口のページに移る。国土交通省の調査が人数の推計を担い、総務省が自治体の取組や登録の仕組みを担うという役割の分かれ方になっている。資料の性格が違うので、推計値を総務省の資料から探しても見つからない。資料の探し方は総務省の関係人口ポータルで一次情報を探す記事で手順を追える。

引用の書き方では三点を守りたい。第一に調査名と調査時期と公表時期を分けて書く。第二に割合を書くときは母数を添える。18%という数字は18歳以上の居住者約10,275万人に対する割合であって、総人口に対する割合ではない。第三に推計値であることを落とさない。モニター調査の結果を拡大推計した値なので、実査で数えた人数ではない。

地域に出てから数字を確かめ直すと、自分が見た現場がどの類型に当たるのかが分かってくる。FLASPOのような接点で関わりながら統計を読むと、割合の裏にある具体的な人の動きが見えるようになる。

よくある質問

最新の調査だけを使えばよいか。推計の現状を示すなら三回目で足りる。ただし変化を論じるなら対象が全国に揃った二回目と三回目を比べ、一回目は三大都市圏限定の試行として扱う。三つを同じ折れ線に並べるのは避けたい。

市区町村ごとの関係人口は分かるか。公表されているのは全国と地域区分の単位の推計である。流動の集計も首都圏都市部やその他地域といったまとまりで示されており、自治体別の人数は示されていない。特定の市町村を扱うなら、その自治体が独自に行った調査や事業の実績値を探すことになる。

非訪問系はどう説明すればよいか。ふるさと納税や地場産品の購入、オンライン交流のように、現地を訪れずに継続して関わる人の区分である。約379万人という推計で、訪問系の2割程度の規模にとどまる。訪問を伴う関わりと同じ重みで扱うと、母数の性格を見失う。

調査の限界はどこにあるか。インターネットのモニター調査であるため、回答者はネットを使う層に寄る。また関係人口に当たるかどうかは回答者の自己申告で決まる。推計値という表記と調査手法を本文に残しておけば、読み手が精度を判断できる。

人数以外に使える数字はあるか。訪問日数、交通手段、改善点の割合は、人数よりも議論に向く。たとえば時間と費用と交通が並んで挙がっているという結果は、受け入れ側の企画より移動の設計が効くという主張の根拠になる。


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