最大の塊は「関わりたいと思わない」35.1%
地域と関わる人を増やしたい、という話は自治体の計画書に必ず出てくる。ところが国土交通省が令和7年6月に公表した実態把握調査を読むと、増やす前に越えなければならない段差がはっきり出ている。全国の18歳以上の居住者、およそ10,275万人のうち関係人口は約2,263万人で、割合にすると約22%である。訪問系が約18%の1,884万人、訪問せずに関わる非訪問系が約4%の379万人という構成になる。
この調査では、居住地や通勤通学先以外の地域との今後の関わり希望も聞いている。「関わりあり」が52.5%、関わりがない人のうち「訪問・滞在して関わる地域があると良い」が6.4%、「訪問・滞在はせずに応援できる地域があると良い」が6.0%で、「特に関わりを持ちたいと思わない」が35.1%だった。関心のない層が3分の1を占め、関心はあるが関わっていない層は合わせて12.4%にとどまる。
この構造は、施策の設計に直接関わる。関心のない35.1%に働きかける費用と、関心はあるが動けていない12.4%を押し出す費用は、同じ額でも効き方が違う。関係人口の現状を数字で確かめた記事では総量を扱ったが、総量の内側にある温度差を見ないと、広報の予算は薄く散る。
動けない理由の上位三つは地域の外にある
関わりの希望がある人に、どの点が改善されれば関われるかを複数回答で聞いた結果が、課題の順位をそのまま示している。最も多いのは「仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保」の27.4%、次が「移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減」の26.7%、三番目が「地域へ行くための交通の利便性の改善」の26.4%である。
| 改善されれば関われる点(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保 | 27.4% |
| 移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減 | 26.7% |
| 地域へ行くための交通の利便性の改善 | 26.4% |
| 現勤務地での十分な収入の確保 | 20.3% |
| 地域内での交通の利便性の改善 | 19.5% |
| 家族や同行者の理解、価値観の合う仲間の存在 | 16.8% |
| 自分の能力・知識・経験を活かせる機会の存在 | 13.6% |
| 訪問地域での活動に伴う収入の確保 | 12.4% |
| つながりをサポートする窓口・コンシェルジュの存在 | 11.3% |
| ニーズに沿った滞在施設の提供 | 9.7% |
| 現地での交流の場や地域体験プログラムの存在 | 9.5% |
| 地域を紹介するHPやSNS、オンラインコミュニティの存在 | 6.6% |
| 所属組織の理解、テレワークや副業の制度化 | 4.9% |
並べ替えると、上位三つはいずれも関わる人の側の事情か広域の交通条件であり、受け入れる地域が単独で動かせる項目ではない。逆に、地域が自前で用意しやすいものは下に沈む。窓口やコンシェルジュの存在が11.3%、現地での交流の場や体験プログラムが9.5%、紹介用のホームページやSNSが6.6%である。所属組織の理解やテレワーク・副業の制度化は4.9%まで下がる。詳細な集計は資料2に収められている。
訪問は年に2日から7日で止まっている
関わりが浅いままになりやすいことも、日数の分布から読める。訪問系の年間訪問日数は、1日以下が約20%、2日から7日が約49%、8日以上が約31%だった。半数が年に一週間未満しか現地にいない。盆と正月の帰省に近い頻度で、地域の課題に手を入れるには足りない。
ただし例外がある。類型別に見ると、就労型のうち現地就労とテレワークの二つは、8日以上が約半数を占めた。仕事として関わる形を取った人だけが、訪問の回数を押し上げている。趣味や消費を入口にした層は日数が伸びにくく、関わりの質を上げる手立ては、楽しさよりも仕事の有無に寄っていることになる。
ここが「関係人口を増やす」と「関係人口を深める」の分かれ目である。人数を数えるなら趣味・消費型が最も多いが、地域の担い手として期待するなら、訪問日数が伸びる就労型をどう作るかが問われる。移住まで進む層が限られることは関係人口のうち移住へ向かうのは2割という記事で扱った。
自家用車58%という足の条件
交通の課題は、交通費の高さだけではない。訪問系が地域まで使う主な交通手段は、自家用車が約58%で最も多い。新幹線以外の鉄道、新幹線、旅客機、都市間高速バス、一般路線バス、旅客船・フェリーを合わせると自家用車を超えるが、単独の手段としては車が圧倒的である。
車を前提にした関わりは、運転免許と車を持たない人を自動的に外す。学生、高齢者、都心で車を持たない世帯がそこに当たる。調査で「地域内での交通の利便性の改善」が19.5%と、地域へ行く交通の26.4%に次ぐ位置にあるのも、着いてからの移動が自力に頼る形になっているためと読める。
関わりの流動量も見ておきたい。訪問系の流動人数は、三大都市圏を除く「その他地域」から「その他地域」への移動が約763万人で最も多く、首都圏都市部からその他地域が約293万人、首都圏都市部から首都圏都市部が約222万人である。都市から地方への一方向ではなく、地方のなかでの行き来が最大の塊になっている。地域の交通を考えるとき、東京発の新幹線や飛行機ではなく、隣県からの車の経路が実際の主役である。
学生の場合は壁の順番が入れ替わる
上位三つの壁を学生に当てはめると、順番が変わる。長期休暇のある在学中は、27.4%が挙げた時間的な余裕については社会人より条件がよい。一方で26.7%の金銭的な負担は重くのしかかり、現勤務地での収入の確保を挙げた20.3%に当たる悩みは、仕送りとアルバイトの時間で代替される。つまり学生にとっての最大の障壁は移動費と滞在費に絞られる。
そこを埋める制度は、すでにいくつか動いている。交通費や滞在費を自治体が負担する短期の受け入れ枠、大学の実習として単位に乗せる形、企業の副業として交通費が出る形がそれぞれ別の財源を持つ。どれを使うかで、負担する側が本人から大学や自治体に移る。関わり方の入口を比べるなら、FLASPOのような地域の仕事や活動を扱う窓口で、交通費や宿泊の条件まで含めて募集を読むのが早い。
家族や同行者の理解、価値観の合う仲間の存在を挙げた16.8%も、学生では意味が変わる。ひとりで行くより友人と行く方が続くという傾向は、若い層の入口の作り方に直結する。18歳から34歳の接点についてはZ世代と関係人口はどこで接するかで整理した。
よくある質問
この調査はいつ、どのように行われたのか。国土交通省国土政策局が実施したインターネットアンケートで、調査時期は令和5年9月から10月、有効回答数は118,963人である。18歳以上の全国の居住者を対象としており、推計の母数には令和2年国勢調査の人口が使われている。公表は令和7年6月27日で、資料は国土交通省のページから辿れる。
2,263万人という数字は多いのか少ないのか。18歳以上の約22%に当たる。5人に1人強が居住地以外の特定の地域と継続的に関わっているという意味で、規模としては小さくない。ただし年間の訪問日数は約49%が2日から7日に収まるため、関わりの深さは人数ほど厚くない。
受け入れ側は何から手を付けるべきか。調査の順位をそのまま読むなら、交通と費用の負担を軽くする手当が効く順位は高く、紹介サイトの整備は6.6%と低い。ただし上位の項目は一つの自治体で解決しきれないため、交通費の補助や滞在拠点のように、負担の一部を公費で引き受ける形に落とすのが現実的である。
関心のない35.1%は放っておくべきか。費用対効果で言えば、関心はあるが動けていない12.4%を先に動かす方が近い。関心のない層に広報を当てる前に、すでに訪れている人の訪問日数を伸ばす手立ての方が、同じ予算で変化が見えやすい。
テレワークや副業の制度化はなぜ4.9%と低いのか。この項目は会社員に限った設問ではなく、関わりの希望がある人全体への複数回答である。学生や無職の人、すでに自営の人には当てはまらないため、割合が下がる。会社員に限って集計すれば順位が上がる可能性はあるが、公表された数字はあくまで全体の値である。
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