統計には「Z世代」という区分がない
若い世代と地域の関わりを数字で語ろうとすると、最初に壁にあたる。官公庁の調査に「Z世代」という欄はない。年齢の区切り方は調査ごとに違い、18〜34歳、20代、15〜19歳といった形で分かれている。世代の名前で検索しても一次情報に行き着かないのは、そもそも集計の単位が違うからだ。
関係人口について最も詳しいのは、国土交通省の「地域との関わりについてのアンケート」である。令和5年9月から10月に行われ、有効回答は118,963人。結果は令和7年6月27日に公表された。この調査の年齢区分は18〜34歳、35〜49歳、50〜64歳、65歳以上の4つで、いちばん若い層が18〜34歳にあたる。大学生から社会人数年目までが、ここにまとめて入っている。
全体像から確かめておく。18歳以上の居住者およそ10,275万人のうち、特定の地域と継続的に関わっている人は約2,263万人と推計された。訪問をともなう関わりが約1,884万人で約18%、訪問しない関わりが約379万人で約4%である。この母数の作り方は関係人口の現状を数字で確かめる|2,263万人とふるさと住民登録制度でも扱っている。
関わりの歴史が、世代で真逆になる
同じ「関係人口」でも、いつから関わっているかは年代で大きく割れる。訪問系の人に関わり始めてからの年数を尋ねると、全体では「30年以上」が21.4%で最も多く、次が「3年〜4年未満」の16.9%だった。山が両端に二つある分布である。
年代別に割ると、この二つの山の正体が見える。35歳以上では「30年以上」が最も多い。親の実家や子どものころから通っている土地が、そのまま関わりとして続いているケースだ。これに対して18〜34歳で最も多いのは「3年〜4年未満」である。年齢を考えれば当然ではあるが、若い世代の関わりは生まれつきの縁ではなく、近年になって自分で始めたものが中心だということになる。
この差は、地域側の受け止め方にも関わってくる。30年続いている関わりは、放っておいても続く可能性が高い。数年前に始まった関わりは、理由がなくなれば途切れる。若い世代を関係人口として数えるとき、人数だけを見て安心できないのはこのためだ。関わり方の分類そのものは関係人口の種類と分類|訪問系と非訪問系、5つのタイプで関わりを読むに詳しい。
始まりは制度ではなく、誘いである
では若い世代は何をきっかけに動くのか。同じ調査では、住んでいる地域での地域活動について参加理由も聞いている。全体で最も多かったのは「職場、自治会、PTA等の取組みの一環として参加している」だった。所属している組織の都合で、半ば自動的に参加している形である。
ところが18〜34歳だけは、最も多い理由が「知人等に誘われた」になる。35〜64歳は組織の一環、65歳以上は「いざという時や困った時に助け合える関係性を構築したい」が最多で、若い層だけ性質が違う。職場での役割も町内での役回りもまだ薄い世代にとって、入り口は人づてなのだ。
参加していない理由のほうも見ておきたい。18〜64歳では「時間的な負担が大きい」が最も多く、65歳以上では「地域社会とのつながりが煩わしい」が最多だった。若い世代が地域に関わらない主な理由は、関わりたくないからではなく、時間が取れないからである。募集の設計を考えるなら、心構えを説くより、所要時間を短く具体的に示すほうが効く。
泊まるのは若い世代のほうだ
訪問一回あたりの滞在期間を見ると、全体では四つの形にきれいに分かれている。日帰りが合わせて47.9%、泊まりが52.1%で、ほぼ半々という構図だ。
| 訪問一回あたりの滞在期間 | 割合 |
|---|---|
| 半日程度(日帰り) | 23.5% |
| 丸1日程度(日帰り) | 24.4% |
| 1泊2日程度 | 24.3% |
| 2〜4泊程度 | 22.0% |
| 1、2週間程度 | 4.9% |
| 1ヶ月程度 | 0.7% |
| その他 | 0.2% |
年代別でも大きな傾向は変わらないが、一つだけはっきりした差がある。「半日程度(日帰り)」は年代が上がるにつれて多くなる。言い換えれば、短時間で帰るのは上の世代のほうで、若い世代は相対的に泊まる割合が高い。近所の地域に短く顔を出す関わりと、遠くへ行って数日滞在する関わりの違いが、そのまま年代の差として出ている。
1週間以上の滞在は全体で5.6%にとどまる。長期滞在は例外的な形だということは押さえておきたい。学生が長い休みを使って数週間入れるなら、それは関係人口の中でもかなり珍しい位置にいることになる。
まだ関わっていない人の、最初の一歩
現時点で特定の地域と関わりがない人にも、今後どう過ごしたいかが尋ねられている。全体で最も多かったのは「その地域に訪問・滞在して、地域ならではの飲食や買物、自分の趣味や地域の環境を楽しむ」で約24%だった。次に多いのが「ふるさと納税によって、その地域を応援」である。
年代で分けると順位が入れ替わる。18〜49歳では「ふるさと納税によって、その地域を応援」が最も多い。まだ行ったことのない地域に対して、若い層が最初に思い浮かべる関わり方が寄附だという結果である。訪問を前提としない関わりが入り口になりうることを示しており、受け入れる側にとっては、来てもらう前の段階で接点を作る余地があるということでもある。ふるさと納税を関わりに変えていく方法は関係人口のふるさと納税事例|5,963万件の寄附を関わりに変えるで扱っている。
ここまでの四つを並べると、若い世代の関わりの像が結ばれる。始まってまだ数年で、人に誘われて入り、行くときは泊まり、行く前の段階では寄附から考える。地縁で続いてきた上の世代とは、組み立てがまるで違う。だからこそ、同じ募集文や同じ説明会では届きにくい。若者が地域に関わる企画の作り方はFLASPOが各地の自治体と組んで実践しており、人口移動の側から見た姿はZ世代と地方|43道府県すべてが20代前半を東京圏へ送っているとあわせて読める。
よくある質問
Z世代の関係人口は何人いるのか。この問いに答えられる公的な数字はない。国土交通省の調査は18〜34歳という区分で集計しており、世代名での人数は公表されていない。年代別の割合から推し量ることはできるが、推計値を断定的に使うのは避けたほうがよい。
調査の元データはどこで読めるか。国土交通省の報道発表資料全国の「関係人口」は18歳以上の2割強に概要があり、年代別の集計は関係人口の実態把握(資料2)に収められている。設問ごとに母数が違うので、引用するときは一次調査か二次調査かを確かめたい。
学生のうちに関わり始めると何が違うのか。年数の分布を見るかぎり、若いうちに始めた関わりは「3年〜4年未満」の層を形づくっている。続くかどうかは別の問題だが、早く始めればそれだけ長く関わる可能性は残る。途切れる理由の多くが時間の制約であることを考えると、学生のうちは条件がよい時期だといえる。
自治体が若い世代を呼ぶには何から手を付けるべきか。参加理由の分布は「知人等に誘われた」が入り口だと示している。広く告知するより、すでに関わっている学生から次の学生へ伝わる経路を作るほうが筋がよい。あわせて、参加しない理由の最多が時間的な負担である点から、必要な時間を明示する工夫が求められる。
日帰りでも関係人口に数えられるのか。数えられる。この調査の訪問系には半日程度の日帰りも含まれており、実際に23.5%を占める。滞在の長さが関係人口かどうかを決めているわけではなく、特定の地域と継続的に関わっているかどうかが基準になっている。
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