平均で聞くと三万円弱、しかし実額はほとんど二つに割れる
講座の広告に並ぶ金額と、合格した知人が言う金額が噛み合わない。資格にいくらかかるのかという問いが答えにくいのは、同じ資格でも学び方で桁が変わり、しかも世の中の平均値が実感と一致しないからだ。
全国規模の実額としては、厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査がある。自己啓発を行った人が令和6年度の1年間に自己負担した費用は、推計で平均2万8,600円だった。正社員は2万9,600円、正社員以外は2万1,100円で、男性が3万600円、女性が2万5,300円である。ここでいう自己啓発は資格の勉強を含む幅のある概念だが、働きながら学ぶ人の年間支出として一度は見ておく値になる。
ただしこの平均は代表値として使いにくい。最も人数が多い区分は0円で、その一方に50万円以上を払っている層が共存しているためだ。平均の三万円弱は、その両極を一つの数にたたんだ結果にすぎない。最終学歴別に見ると中学・高等学校・中等教育学校が1万7,800円、大学院の文系が6万6,000円と三倍以上に開く。年齢では40代が3万2,300円で最も高く、30代が3万100円、20代が2万9,200円と続く。
八割近くが二万円未満で、十万円を超える人は一割に届かない
分布を直接見たほうが話が早い。同じ調査は自己負担額を区分ごとに集計していて、どのあたりに人が集まっているかが分かる。単位はパーセントである。
| 1年間の自己負担費用 | 労働者全体 | 正社員 | 正社員以外 |
|---|---|---|---|
| 0円 | 41.4 | 39.8 | 52.8 |
| 1円以上1千円未満 | 3.5 | 3.5 | 3.6 |
| 1千円以上1万円未満 | 20.3 | 20.9 | 16.6 |
| 1万円以上2万円未満 | 13.7 | 14.3 | 10.1 |
| 2万円以上5万円未満 | 10.4 | 10.7 | 8.4 |
| 5万円以上10万円未満 | 4.7 | 4.9 | 3.1 |
| 10万円以上20万円未満 | 2.6 | 2.6 | 2.3 |
| 20万円以上50万円未満 | 2.2 | 2.2 | 1.8 |
| 50万円以上 | 1.0 | 1.1 | 0.5 |
出典は同調査の結果概要で、不明の回答があるため合計は100にならない。0円から1万円以上2万円未満までを足すと、労働者全体で八割近くがこの範囲に入る。逆に10万円以上を払った人は10パーセントに届かない。市販の教材と受験料だけで組み立てれば数千円から一万円台で収まるという、ごく常識的な結論がそのまま出ている。
注目したいのは正社員以外の列で、0円が52.8パーセントと半分を超える。費用をかけない学び方を選んでいるとも読めるが、1千円以上1万円未満から上の各区分でいずれも正社員を下回っているので、かけられる額に制約があるという読み方のほうが素直だろう。高額側に細い尾が伸びているのは専門実践教育訓練の対象になるような長期の講座で、受講費用が数十万円に届くものが現にある。
受験料は制度側で決まっているので、申し込む前に確定する
総額のうち、見積りを間違えにくいのは試験そのものの手数料である。国の技能検定を例にとると、中央職業能力開発協会が示す受検手数料の標準額は実技試験が1万8,200円、学科試験が3,100円で、令和元年度からこの水準になっている。都道府県が実施する111職種と、指定試験機関が実施する22職種があり、等級は特級から3級までの区分と、等級を分けない単一等級に分かれる。
実技と学科の両方を受ければ2万1,300円ほどになる計算で、これは先に挙げた自己負担費用の平均と近い。つまり講座を使わずに実技を伴う検定を一つ受けるだけで、平均的な年間支出に達してしまう。手数料の重さは資格によって相当違うので、総額の話をする前に実施団体の受験案内で金額を確かめる順番がよい。
若年者に対する手数料の減免は都道府県ごとに要件が定められていて、対象となる級や年齢の条件が年度で改まることがある。古い案内に載っている金額をそのまま信じると差額が出るので、受ける年度の案内を見るのが確実だ。国の制度か民間の認定かという区別は、この手数料の決まり方にも効いてくる。法令で根拠が置かれている資格は手数料も公表された形で定まるが、民間の認定は実施団体の裁量で改定される。
四割強は誰かに出してもらっているが、出し手はほぼ勤務先
自分で全部払う前提でいると、使える制度を取りこぼす。調査では、自己啓発を行った人のうち費用の補助を受けた人が42.9パーセントいた。補助を受けた人の平均補助額は推計で4万2,000円で、自己負担の平均を上回る。年齢別では40代が5万5,000円と最も高く、30代が4万2,100円、20代が4万300円だった。
ただし経路は一つに偏っている。最も補助額が大きかった主体を聞くと、勤務先の会社が95.6パーセントを占めた。国の教育訓練給付金制度は2.9パーセント、労働組合は1.7パーセントである。事業所の側から見ると、正社員の自己啓発を支援している事業所は81.4パーセント、正社員以外では63.9パーセントで、支援内容の最多は受講料などの金銭的援助だった。正社員向けで74.7パーセント、正社員以外向けで57.6パーセントがこれを挙げている。
労働者が会社に望む支援も同じ項目が首位で、正社員の69.1パーセント、正社員以外の70.2パーセントが受講料の金銭的援助を挙げた。欲しいものと出ているものが一致しているわけだが、企業調査のほうでは自己啓発支援に支出した費用の労働者一人当たり平均額は0.4万円にとどまる。制度としては広く存在し、一人に行き渡る額としては小さい。申請できる上限や対象講座の条件を就業規則や社内規程で確認してから講座を選ぶほうが、取りこぼしが少ない。
雇用保険の給付は三段構えで、上限額が段ごとに違う
勤務先に制度がない場合に残るのが公的な経路である。雇用保険の教育訓練給付は、厚生労働大臣が指定する講座を受けて修了した人に、教育訓練施設へ支払った訓練費用の一定割合を支給する。令和6年10月以降に開講する講座では、水準が次のように定められている。
| 区分 | 基本の支給率 | 上限額 | 上乗せの条件と水準 |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 20パーセント | 10万円 | 修了後に支給される |
| 特定一般教育訓練 | 40パーセント | 20万円 | 資格取得等をして修了後1年以内に雇用された場合は50パーセント、上限25万円 |
| 専門実践教育訓練 | 50パーセント | 年間40万円 | 資格取得等をして就職した場合は70パーセントで年間56万円、さらに賃金が5パーセント以上上昇した場合は80パーセントで年間64万円 |
専門実践教育訓練は受講中に6か月ごとに支給される仕組みで、他の二つは修了後の支給になる。上限が年間で区切られている点にも注意したい。年間40万円という枠は、1年を超える課程では年ごとに適用される。
使うために必要な段取りは二つある。一つは支給対象が指定講座に限られること。講座を決めてから制度を探すと対象外で終わるので、指定の一覧から選ぶ順に変える。もう一つは雇用保険の被保険者であった期間の要件で、これは住まいの地域のハローワークで照会できる。アルバイトでの加入歴が条件を満たす場合もあるため、学生だからという理由で最初から外さないほうがよい。地域で働く道を探しているなら、FLASPOのような地域と人をつなぐ場で、その土地の仕事に必要な資格を先に聞いてから講座を選べば、対象外の出費を避けられる。何が見返りになるのかを把握してから金額を決める順番が、結局いちばん安い。
よくある質問
受験料も教育訓練給付の対象になりますか
制度の説明では、支給されるのは本人が教育訓練施設に支払った訓練費用の一定割合とされている。対象は受講のための費用という構成なので、試験の実施団体に払う手数料そのものを戻す仕組みではない。受験料は自己負担として別に積む前提で見積るほうが安全だ。個々の講座で何が対象経費に含まれるかは講座ごとに決まっているため、申込前に教育訓練施設へ確認するのが確実である。
独学で0円に近づけるのは現実的でしょうか
自己負担を0円と答えた人が四割を占めている事実から言えば、現実的ではある。公立図書館の蔵書や公表されている過去問を使えば教材費は圧縮できる。削れないのは受験料と、学習に充てる時間のほうだ。実技を伴う検定のように手数料が一万円を超える試験では、どう工夫しても下限が残る。
講座と独学で、総額はどのくらい変わりますか
分布で見ると、独学に近い層は1万円未満までの区分に集まり、講座を使う層は10万円以上の区分に現れる。十倍の差が出る計算になるが、専門実践教育訓練の対象講座なら半分から最大八割が戻るため、実質の負担差は見かけより縮む。給付の対象かどうかで比較の答えが変わるので、同じ分野の指定講座があるかを先に調べたい。
会社に補助を申請すると、辞めにくくなりませんか
費用を会社が負担した場合に一定期間内の退職で返還を求める取り扱いを定めている職場はある。就業規則や社内規程に条件が書かれているはずなので、申請前に返還の定めの有無と期間を確認しておきたい。条件が重いと感じるなら、公的な給付を自分で使う道を選べば雇用関係と切り離せる。
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