大学生の一人暮らしの初期費用|敷金・礼金・仲介手数料の実額

大学生の一人暮らしの初期費用|敷金・礼金・仲介手数料の実額

契約時に出ていくお金は、三つの名前に分かれている

家賃7万円の部屋を見つけて、手元に7万円あれば入居できるわけではない。契約の場で請求されるのは、名前の違う複数の費用をまとめた金額だ。国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査は、三大都市圏で民間賃貸住宅に入居した世帯にこの内訳を聞いている。

結果を見ると、敷金または保証金があった世帯は57.7パーセント、礼金があった世帯は42.6パーセント、仲介手数料があった世帯は44.2パーセントだった。金額は家賃の月数で示され、いずれも「1ヶ月ちょうど」が最も多い。更新のときに払う更新手数料がある世帯も44.7パーセントあり、こちらも1か月分が主流である。

費目 払った世帯の割合 最も多い月数 その割合 性質
敷金/保証金 57.7% 1ヶ月ちょうど 61.7% 預け金(条件により返還)
礼金 42.6% 1ヶ月ちょうど 65.0% 返らない
仲介手数料 44.2% 1ヶ月ちょうど 65.6% 返らない(法令に上限)
更新手数料 44.7% 1ヶ月ちょうど 61.5% 更新時に再度発生
国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査報告書」をもとに作成。三大都市圏の民間賃貸住宅に入居した世帯

同じ調査の家賃は平均で月77,677円、中央値は70,000円だった。仮に平均家賃の部屋で三つの費用がそれぞれ1か月分だとすると、契約時に動くのは233,031円になる。家賃の3倍というのは覚えやすいが、実際にこの形になる世帯は一部にすぎない。

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払う世帯は半分前後で、全員が同じ額を出していない

割合をもう一度見ると、どの費目も「あり」が過半数を超えていない、または超えてもわずかである。礼金は「なし」の世帯が49.0パーセントで「あり」より多く、仲介手数料も「なし」が43.3パーセントある。物件によって初期費用の形が大きく変わるということだ。

変化も出ている。礼金の月数で「1ヶ月未満」と答えた世帯は、令和5年度の5.0パーセントから令和6年度は19.5パーセントへ増えた。仲介手数料でも「1ヶ月未満」が25.7パーセントに上がっている。満額を請求しない物件が目立ってきた流れが数字に出ていると読める。

この分布が意味するのは、初期費用は交渉や選択の余地が残る部分だという点だ。家賃は月々の固定費なので下げにくいが、契約時の一時金は物件ごとの条件に左右される。候補を二つ三つ並べるときは、家賃の差だけでなく、契約金の合計を同じ表に並べて比べるほうが判断を誤りにくい。

仲介手数料だけは、法令に上限が引かれている

三つの費目のうち、金額の天井が法令で定められているものがある。不動産会社に払う仲介手数料だ。宅地建物取引業法第46条にもとづく大臣告示では、賃貸借の媒介について、依頼者の双方から受け取れる報酬の合計額は1か月分の借賃に1.1を乗じた金額以内と定められている。

居住用の建物にはさらに細かい線がある。国土交通省の資料は、居住用建物の場合、依頼者の一方から受け取れるのは1か月分の借賃に0.55を乗じた金額以内で、「媒介の依頼を受けるに当たって依頼者の承諾を得ている場合を除く」としている。言い換えると、借主から家賃1か月分に相当する手数料を受け取るには、依頼の段階での承諾が前提になる。そして承諾があっても、貸主と借主の合計で1.1か月分を超えることはできない。

同じ告示には、長期の空家等について貸主から2.2倍までを受け取れる特例も置かれている。学生が借りる一般的な物件には縁が薄いが、上限の数字が複数あることは知っておくと混乱しない。請求書の金額が借賃の1.1倍を超えていたら、根拠を尋ねてよい場面だ。

敷金は預けるお金で、礼金は戻らないお金

同じ「1か月分」でも、性質はまったく違う。民法第622条の2は敷金を、名目を問わず賃料債務その他の賃貸借にもとづく金銭債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭と定義している。担保として預けるお金であって、借りる権利の代金ではない。

そのため返還の義務も条文に書かれている。賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき、賃貸人は受け取った敷金の額から賃借人が負う金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならない。未払いの賃料や、借主が負担すべき損傷の修繕費があれば差し引かれるが、その根拠がなければ残りは戻ってくる性質の金銭である。

礼金にはこうした規定がない。貸主に支払って終わるお金なので、退去時に戻る前提で予算を組むと穴があく。初期費用を見積もるときは、合計額を出したうえで「戻る可能性のある分」と「出ていったら終わりの分」に分けておくと、4年間の資金計画が立てやすい。

家賃3か月分では、入居日にたどり着けない

契約金の見積もりが済んでも、まだ終わらない。入居日までに必要なものが残っているからだ。前家賃、共益費、火災保険の保険料、家賃保証会社の初回保証料、鍵の交換費用、そして家具と家電と引越しの費用である。共益費は先の調査で平均が月4,441円と出ており、家賃の表示額の外側にある固定費として毎月乗ってくる。

そこへ生活費が重なる。日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査では、下宿やアパートに住む大学生の生活費は年1,256,700円で、月あたり104,725円だった。入居した月は、この10万円台の支出と契約金と買い揃えの費用が同じ月に並ぶ。契約金が家賃の3倍なら、実際に用意したい金額は家賃の5倍前後になる。

この総額を家庭の支援と奨学金でどこまで賄えるかは、家計の形で変わる。収入の構成は仕送りとアルバイトの比重を見た回に、自宅通学と比べた総額は一人暮らしの費用を整理した回に書いた。地方の大学を選んで土地に腰を据える道もあり、FLASPOのような地域と人をつなぐ場で暮らしの実感を聞いておくと、家賃の安さだけでは測れない部分が見えてくる。

よくある質問

敷金と保証金は別のものですか

国土交通省の調査は「敷金/保証金」として一つの項目で集計している。民法の定義も「いかなる名目によるかを問わず」と書かれているため、呼び方が違っても担保として預ける金銭であれば同じ扱いになる。地域によって保証金と呼ぶ慣習があるので、契約書では名称より、退去時に何が差し引かれるかの条項を読むほうが実益がある。

礼金なしの物件は増えているのですか

礼金があった世帯の割合は令和5年度の38.3パーセントから令和6年度は42.6パーセントへ上がっており、「なし」が増えたとは言えない。変わったのは金額のほうで、月数が1か月未満にとどまる世帯が5.0パーセントから19.5パーセントへ伸びた。礼金が消えるのではなく、薄くなっている段階と見るのが実態に近い。

仲介手数料で家賃1か月分を請求されたら違法ですか

それだけでは違法と判断できない。居住用建物では依頼者の一方から受け取れる額は借賃の0.55か月分が原則だが、媒介の依頼を受ける際に依頼者の承諾を得ている場合は除かれる。確かめるべきは、承諾を求められた覚えがあるか、そして貸主側と合わせた合計が借賃の1.1か月分の範囲に収まっているかという二点になる。

初期費用は結局いくら用意すればよいですか

調査の平均家賃77,677円で敷金と礼金と仲介手数料がいずれも1か月分なら、契約金は233,031円になる。これに前家賃と火災保険、保証会社の費用、家具家電と引越しが乗る。学生が借りる部屋は平均より家賃が低い傾向にあるため、自分の候補物件の家賃に5を掛けた額を当面の目標にしておくと、見積もりが大きく外れにくい。

更新のときにもまとまったお金が必要ですか

更新手数料がある世帯は44.7パーセントで、月数は1か月ちょうどが61.5パーセントと最も多かった。2年契約なら在学中に1回から2回めぐってくる計算になる。入居時の費用だけを数えて4年分の予算を組むと、3年生の春に想定外の請求が来ることがある。

出典

国土交通省住宅局「令和6年度住宅市場動向調査報告書」(令和7年6月)6章。民間賃貸住宅の集計対象は三大都市圏で、令和5年4月から令和6年3月までに入居した世帯。

国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」。宅地建物取引業法第46条にもとづく大臣告示の上限を整理した資料で、特例は令和6年7月1日施行。

e-Gov法令検索「民法」第622条の2。

独立行政法人日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」1-1表。大学学部(昼間部)の推計値。


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