月104,725円のうち、7割が住居と食費に消える
仕送りをいくらにするかという相談は、数字の土台がないまま始まることが多い。手がかりになるのは日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査だ。下宿やアパートに住む大学生(学部・昼間部)の生活費は年1,256,700円で、12で割ると月104,725円になる。学費は別で、ここに含まれているのは暮らすための費用だけである。
内訳を月額に直すと、重さの偏りがはっきりする。住居・光熱費が44,142円、食費が26,808円で、この二つだけで70,950円、全体の67.8パーセントを占める。残りを娯楽・し好費の15,475円、その他の日常費の14,000円、保健衛生費の4,300円が分け合う形だ。
| 費目 | 年額 | 月額 | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 住居・光熱費 | 529,700円 | 44,142円 | 42.2% |
| 食費 | 321,700円 | 26,808円 | 25.6% |
| 娯楽・し好費 | 185,700円 | 15,475円 | 14.8% |
| その他の日常費 | 168,000円 | 14,000円 | 13.4% |
| 保健衛生費 | 51,600円 | 4,300円 | 4.1% |
| 生活費の計 | 1,256,700円 | 104,725円 | 100.0% |
その他の日常費には通信費が含まれる。携帯の料金を別枠で考えると二重に数えることになるので、内訳を自分の家計に写すときは項目の定義を先に確かめておきたい。
一般の単身世帯の平均は、学生に当てはめられない
一人暮らしの生活費を調べると、総務省の家計調査の数字に行き着くことが多い。ところがこの統計を大学生の予算に使うと、前提から外れる。調査の概要に理由が書かれている。
統計局の説明では、家計調査は全国の世帯を対象としながら、いくつかの世帯を調査から外している。その一覧の筆頭にあるのが「学生の単身世帯」だ。除く理由は、世帯としての収入と支出を正確に計ることが難しいことなどとされている。仕送りと奨学金とアルバイトが混ざり、学費が家計の外から支払われることもある学生の家計は、一般の勤労者世帯と同じ枠では測りにくい。
つまり家計調査の単身世帯の平均は、学生を含まない数字である。学生の実額を知りたいなら、学生だけを調査対象にした学生生活調査を見るのが筋だ。この調査は隔年で実施され、国立・公立・私立と居住形態の組み合わせで集計されているため、自分の条件に近い列を選んで読める。
動かせない固定費と、調整できる費目を分ける
月10万円という総額だけ見ても手は打てない。意味があるのは、契約で固定されて動かない部分と、月ごとに増減させられる部分を分けることだ。
固定されるのは住居・光熱費の44,142円である。家賃は契約で決まり、入居後に下げる手段はほぼない。しかもこの表示額の外に共益費がある。国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査では、三大都市圏の民間賃貸住宅で共益費の平均は月4,441円だった。家賃を比べるときに共益費を足さないと、月々の負担を4千円ほど低く見積もることになる。
食費の26,808円は30日で割ると1日894円になる。自炊の比重で動く費目だが、ゼロにはできない下限がある。実際に調整の幅として残るのは娯楽・し好費の15,475円とその他の日常費の14,000円で、合わせて29,475円、生活費の28.1パーセントだ。家賃を1万円高い部屋にすると、削る先はこの3万円の枠に向かう。部屋を決める段階の1万円が、交際や書籍の予算を3分の1削る判断とつながっている。
学寮を挟むと、月の差は1万8千円で収まる
住む形は自宅と下宿の二択ではない。同じ表には学寮の列があり、生活費は年1,038,200円、月86,517円だった。自宅は年500,800円で月41,733円、下宿は月104,725円である。
学寮と下宿の差は月18,208円で、年にすると218,500円になる。自宅と下宿の差が月62,992円であることと比べると、学寮は自宅寄りではなく下宿寄りの位置にある。寮なら格段に安いという印象より、差は限定的だ。住居・光熱費を比べると学寮は年369,200円で、下宿の529,700円より160,500円低い。一方で食費は学寮が年297,800円、下宿が321,700円と、差は23,900円しかない。
自宅の住居・光熱費はこの集計では0円と計上されている。家族の家計に入っていて学生本人の支出として現れないためで、実家に住む負担が無いという意味ではない。比べるときは、この0が何を表しているかを押さえておく必要がある。
国立と私立では、生活費の側にも1万円の差がある
学費が設置者によって違うのは知られているが、差がつくのは学費だけではない。下宿やアパートに住む学生の生活費を設置者別に見ると、国立は年1,197,500円で月99,792円、公立は年1,169,500円で月97,458円、私立は年1,298,000円で月108,167円だった。
私立と公立の差は月10,709円、年に128,500円になる。暮らし方の違いというより、私立大学が都市部に多いという立地の影響が大きいと考えられる。志望校を並べるときに学費の表だけを見ていると、この年13万円ほどの差が抜け落ちる。
同じ金額をどこで使うかは、進学先の土地によって変わる。地方の大学を選んで卒業後もその土地に残る進み方もあり、FLASPOのような地域と人をつなぐ場で現地の暮らしに触れておくと、家賃の数字の裏にある条件が見えてくる。収入の側から見た家計は仕送りとアルバイトの比重を扱った回に、自宅通学との比較は一人暮らしの費用を整理した回にまとめた。
よくある質問
家賃はいくらに設定すればよいですか
平均の住居・光熱費は月44,142円で、ここに電気やガスの料金が含まれている。光熱費を1万円と置くと、家賃と共益費に回っているのは3万4千円前後という計算になる。三大都市圏の民間賃貸住宅の平均家賃77,677円との差は大きいので、学生向けの物件や寮を候補に入れないとこの水準には届きにくい。
食費を月2万円まで下げられますか
平均は26,808円なので、2万円は平均より7千円ほど低い設定になる。調査には品目の内訳がないため、何を削れば届くかはこの統計からは言えない。確実なのは、食費を下げる余地は娯楽・し好費や日常費より小さいという点だ。先に見直す順番としては後ろに置くほうが合理的である。
光熱費だけを別に知ることはできますか
この調査は「住居・光熱費」を一つの費目として集計しており、家賃と水道光熱費に分けた数字は示されていない。分けて把握したいなら、総務省の小売物価統計や電気・ガス事業者の公表する平均使用量から見当をつける方法が残る。学生生活調査の数字をそのまま家賃として扱うと、実際より高い家賃を許容してしまう。
学年によって生活費は変わりますか
公表されている1-1表は居住形態と設置者の組み合わせで集計されており、学年別の区分はない。実感としては研究室や就職活動が始まる学年で交通費や被服費が動きそうだが、この統計で裏づけることはできない。学年別の予算を立てるなら、調査の平均を基準線として、動きそうな費目に幅を持たせる形になる。
仕送りだけで月10万円を賄えますか
同じ調査で下宿の学生が家庭から受けている支援は年1,240,900円で、月に換算すると103,408円になる。生活費の104,725円とほぼ並ぶが、学費がまだ残っている。支援だけで生活費と学費の両方を覆える家庭は限られるため、奨学金とアルバイトを含めた三本立てで組むのが前提になる。
出典
独立行政法人日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」1-1表。大学学部(昼間部)の推計値で、集計の基数は7,461人。調査は令和6年11月1日から令和7年1月31日まで実施された。月額と構成比は年額から算出した。
総務省統計局「家計調査の概要」。調査の対象から除く世帯の一覧に「学生の単身世帯」が挙げられている。
国土交通省住宅局「令和6年度住宅市場動向調査報告書」(令和7年6月)。共益費と家賃の数値は三大都市圏の民間賃貸住宅に入居した世帯の平均。
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