家族関係と若者|家でくつろげる57.1%、相談できる32.4%の差

家族関係と若者|家でくつろげる57.1%、相談できる32.4%の差

家でくつろげる人は多いのに、家で相談する人は少ない

同じ家について、二つの質問をすると違う答えが返ってくる。こども家庭庁の「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」は、13歳から29歳の男女に、場所ごとにそこがどんな場所かを選ばせている。日本の回答は1,089人で、調査は令和5年11月から12月に行われた。

家庭について「なにもせずのんびりできる、ありのままでいられる」を選んだ日本の若者は57.1%である。アメリカ47.8%、スウェーデン46.0%、フランス44.0%、ドイツ40.1%と並べると、5か国で最も高い。家が休める場所であるという点では、日本の若者の答えは他国より肯定的だということになる。

ところが同じ家庭について「悩みの相談ができたり、自分の意見や希望を受け入れてくれる」を選んだ割合は32.4%で、5か国の最下位である。ドイツは48.1%、スウェーデン43.2%、フランス39.9%、アメリカ35.6%だった。さらに家庭について「あてはまる場所はない、わからない」と答えた人が15.5%いる。他の4か国は3.2%から9.7%の範囲で、ここでも日本が最も高い。休む機能と相談の機能が、同じ屋根の下で分かれている。

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相談相手は母に集まり、きょうだいには向かわない

では悩みを誰に向けるのか。同じ調査は、悩みや心配ごとがあった場合に誰に相談したいかを複数回答で尋ねている。日本の答えは母に大きく偏る。

相談したい相手 日本 アメリカ ドイツ スウェーデン
母 55.2% 39.9% 41.6% 41.8%
父 26.7% 22.5% 27.6% 27.9%
きょうだい 17.3% 29.7% 27.3% 27.5%
祖父母・親類 5.2% 15.5% 17.3% 13.7%
近所や学校の友だち 33.1% 13.6% 21.5% 12.3%
だれにも相談しない 11.2% 9.1% 4.8% 4.4%

母を挙げた割合は5か国のいずれでも首位だが、日本の55.2%は他国を13ポイント以上上回る。一方できょうだいは17.3%で、他の4か国が27%台から29%台に並ぶのに対して明確に低い。祖父母・親類も5.2%で、ドイツの17.3%とは3倍以上の開きがある。家族のなかの相談先が、母という一点に集まっている形である。

変化もある。日本について平成30年度の調査と比べると、母は8.8ポイント高くなり、「だれにも相談しない」は19.9%から11.2%へ8.7ポイント下がった。5年のあいだに、誰にも言わない層が半分近くまで減ったことになる。ただし減った分の多くが母に流れ込んでいるとすれば、特定の相手に負荷が集まる構造は強まっている。人間関係と若者で見た、相談相手が家族に偏る傾向と同じ方向を向いている。

家庭生活の満足度は上がったが、5か国では4番目

相談の経路が細いことは、不満が多いという意味ではない。家庭生活に満足しているかという質問で、日本の若者は「満足」29.6%と「どちらかといえば満足」40.1%を合わせて69.7%が満足側である。不満側は23.5%だった。

平成30年度の調査では満足側が63.1%だったので、6.6ポイント上がっている。5年で確実に動いた数字である。ただし国際比較では、ドイツ79.2%、スウェーデン74.4%、フランス72.2%に次ぐ4番目で、アメリカの68.4%をわずかに上回る位置にある。

満足と答えた水準が上がる一方で、相談の機能が5か国最下位にとどまるという組み合わせは、一見すると噛み合わない。家族に対する評価の軸が、揉めごとのなさや居心地のよさに寄っていると考えると筋が通る。穏やかであることと、込み入った話を持ち出せることは別の条件だということである。

満足の中身を見ると、何を期待していないかがわかる

同じ調査は、今の家庭で生活する上で何に満足しているかも複数回答で尋ねている。日本で最も多いのは「家族からの愛情」40.9%、次に「家族が健康であること」38.8%、「家庭内で争いごとがないこと」33.5%と続く。「家族が自分を理解していること」は32.5%、「家族のだんらんや会話」は28.7%だった。

他国との差が大きい項目が二つある。ひとつは「兄弟姉妹と気があうこと」で、日本は21.1%に対してアメリカ33.6%、スウェーデン32.1%、フランス31.9%、ドイツ31.7%である。先の相談相手できょうだいが低かったことと符合する。もうひとつは「家事・育児の分担」で、日本は8.4%にとどまり、スウェーデン19.3%、アメリカ17.9%の半分以下である。

「満足していることはない」と答えた人は5.9%で、他の4か国の0.9%から3.3%より高い。「わからない」も13.8%で最も高かった。自分の家について評価を言葉にしにくい層が、1割を超えて存在していることになる。家庭を一枚の絵として語れない若者がいるという前提は、支援の設計のときに外せない。

家の外にある居場所が、日本では薄い

家の相談機能が細いなら、外に経路があるかが次の論点になる。同じ調査で「習いごとや趣味のサークル」について「あてはまる場所はない、わからない」と答えた日本の若者は47.6%だった。ドイツ17.8%、スウェーデン16.4%、フランス22.3%、アメリカ26.8%と比べて、2倍から3倍の水準である。

同じ場所について「いろんな人と出会える、だれかと一緒に過ごせる」を選んだ割合も、日本27.7%に対して他国は32.1%から38.8%だった。学校と職場を離れたところにある集まりが、選択肢として視野に入っていない人が半数近くいるということになる。自分の部屋について「悩みの相談ができたり、自分の意見や希望を受け入れてくれる」が日本11.4%、ドイツ39.0%という差も、相談の経路の細さを別の角度から示している。

家族が悪いという話ではない。母という一点に集まった相談を、他の線に分けていけるかどうかという設計の話である。学校と職場は評価や上下関係が付いてくるので、同じ話を持ち出しにくい。趣味や関心でつながる場であれば、家庭内の役割も学校の立場も持ち込まずに話せるので、FLASPOのような接点を早いうちに持っておくと、選べる相手が増える。人間関係と家族でも、家族だけに頼る設計の弱さを数字で確かめている。

よくある質問

この調査の対象は何歳までですか。各国の満13歳から満29歳までの男女です。日本の回答数は1,089人で、調査時期は令和5年11月から12月、方法はウェブ調査でした。

日本の若者は家族と不仲なのでしょうか。満足側の回答は69.7%で、平成30年度より6.6ポイント高くなっています。仲の良し悪しというより、相談という使い方をしていない割合が高いという結果です。

母に相談が集まるのは良いことですか。経路があることは強みですが、1人に集まれば受ける側の負担が大きくなります。きょうだいや祖父母を挙げた割合が他国より低いので、家族のなかでも分散の余地があります。

「だれにも相談しない」が減ったのは改善と見ていいですか。19.9%から11.2%への変化は大きいものです。ただし相談したい相手として挙げられただけで、実際に相談できたかどうかは別の質問になります。

家事の分担への満足が8.4%と低いのはなぜですか。この調査からは理由までは読めません。満足している項目として挙げられにくいという事実が確かめられるだけで、分担の実態は生活時間の調査などで別に見る必要があります。

家の外の居場所は、どう作ればいいでしょうか。目的が決まっている集まりのほうが入りやすいです。やることが先に決まっていれば会話を無理に探さずに済み、通い続けるうちに相談できる相手が出てくる順番になります。


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