大阪大学の産学連携108億円に自治体は1,690万円|地域連携の実体

共同研究1,342件のうち、自治体が相手は2件

大学と地域の連携を調べると、協定の締結件数や拠点の名前はいくらでも出てくる。では実際に研究費が動いた件数はどうなっているのか。文部科学省が毎年公表している産学連携等実施状況調査は、機関ごとの数字を相手先の区分つきで並べているので、ここを見ると量がわかる。令和6年度分の集計は1,051機関から回答を得たもので、調査時点は令和7年3月31日である。

大阪大学の数字を取り出すと、民間企業との共同研究は1,342件、受入額は108億1,175万円。件数は東京大学2,157件、東北大学1,565件、京都大学1,382件に続く全国4位で、受入額では東京大学の約174億円に次ぐ2位である。内訳は大企業969件と中小企業373件。

同じ調査には、民間企業以外の相手との共同研究をまとめた欄がある。大阪大学はここが103件で、相手先は独立行政法人31件、公益法人等29件、その他21件、外国企業15件、国3件、外国政府機関2件と続く。そして地方公共団体は2件、受入額は1,690万円だった。全体の1,445件に対して自治体との共同研究は0.1パーセントということになる。

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自治体との接点は共同研究ではなく受託研究に出る

2件という数字だけで「大阪大学は自治体と組んでいない」と結論するのは早い。同じ調査の受託研究の集計を開くと、別の経路が見える。

区分 大阪大学 全国1,051機関
民間企業との共同研究 1,342件/108億1,175万円 32,093件/1,065億2,011万円
自治体との共同研究 2件/1,690万円 654件/11億6,453万円
自治体からの受託研究 23件/1億3,252万円 1,881件/48億2,305万円

自治体から受託した研究は23件で1億3,252万円。共同研究の11.5倍の件数が、受託という形で動いている。全国でも受託1,881件に対して共同654件で、自治体と大学の関係は共同研究より受託研究に寄る。費用を自治体が出して大学が調査や分析を引き受ける形が標準で、両者が費用を持ち寄る共同研究は例外に近い。

この偏りは制度の設計と予算の性質から来ている。自治体の委託調査は単年度の事業費で発注でき、議会の説明も立てやすい。対して共同研究は複数年度にわたる研究費の持ち出しを前提とするため、首長の任期や財政計画との折り合いがつきにくい。全国の内訳を地方別に見た整理は自治体と大学の共同研究は何件あるか|地方別の実績から確かめるにある。

大阪府内の全63機関を足しても自治体との共同研究は24件

大阪大学だけが少ないのかを確かめるため、同じ調査で大阪府にある63機関を合計した。民間企業との共同研究は2,450件、民間以外との共同研究は426件、そのうち地方公共団体との共同研究は24件である。府内の大学・高専をすべて足しても、自治体と組んだ共同研究は年24件しかない。

機関別に並べると、最も多いのは大阪公立大学の10件で、次が近畿大学の5件、大阪産業大学の3件。大阪大学と大阪教育大学が2件ずつで、摂南大学と大阪医科薬科大学が1件ずつと続く。公立大学が自治体と組む件数で国立の総合大学を上回るのは、設置者が自治体である事情と無縁ではない。大阪公立大学は自治体からの受託研究も38件あり、大阪大学の23件を超える。

全国に目を広げると、自治体との共同研究が最も多いのは慶應義塾大学の48件、次に神戸大学27件、東京大学20件、東北大学19件、北見工業大学18件が並ぶ。民間企業との共同研究が90件の北見工業大学が、1,342件の大阪大学の9倍の自治体案件を抱えている。規模と自治体との近さは比例しない。1件以上の自治体案件を持つ機関は163で、回答1,051機関の6分の1にとどまる。

大阪大学の「近さ」は自治体ではなく府内企業に出ている

この調査には、相手企業が同じ都道府県にあるかどうかを分けた欄もある。大阪大学は大企業969件のうち275件、中小企業373件のうち149件が同一県内で、合計424件。民間企業との共同研究1,342件の31.6パーセントが大阪府内の企業との案件だった。

比較のために東北大学を見ると、大企業1,315件のうち同一県内は62件、中小企業250件のうち78件で、合計140件。1,565件の8.9パーセントである。仙台の事情は東北大学の共同研究1,565件のうち県内140件|仙台で大学と組む順番で扱った。同じ指定国立大学でも、地元経済との結びつきの濃さは3倍以上違う。

つまり大阪大学の地域連携は、自治体を窓口にした形では数字に出にくく、府内の企業との共同研究という形で大量に動いている。加えて企業が研究室内に設ける共同研究講座・共同研究部門が116あり、受入実績は39億1,804万円。これは民間との共同研究全体の3分の1を超える規模で、個別案件ではなく常設の体制として地域の企業が入り込んでいることを示す。

自治体の側がこの数字を使うとき

自治体が大学と組みたいと考えたとき、この調査は交渉の前に相手の形を測る材料になる。確かめるのは3点である。1つは自治体との受託研究の件数で、委託に慣れている機関かどうかがわかる。2つ目は同一県内企業との共同研究の比率で、地元に向いた窓口を持っているかの目安になる。3つ目は共同研究講座の数で、常設の受け皿があるかを示す。

連携という言葉の受け取り方が自治体側と大学側でずれる構図は自治体の96%と大学の40%|連携という言葉がすれ違っている場所に整理した。大阪大学の例が示すのは、協定や拠点の有無ではなく、どの契約形態なら金と人が動くのかを先に見ておく必要があるということである。地域と人をつなぐ側のFLASPOから見ても、成果が残るのは受け皿の形式が決まってからの話になる。

なお、この調査は研究費の受入実績を集めたもので、単位を取る授業やフィールドワーク、学生のボランティアは対象外である。学生が地域に入る活動の量を知りたい場合は、同じ数字では測れない。

時間の目安も押さえておきたい。大阪大学の民間企業との共同研究1,342件のうち、令和6年度に新しく始まったものは443件で3分の1。残りは前年度以前から続く案件である。全国でも32,093件のうち新規は15,414件で半分に近い。企業との案件は入れ替わりが速い一方、常設の共同研究講座は全国で1,166、受入実績は256億4,152万円に達しており、継続する枠組みへ資金が集まる流れがある。自治体が単年度の委託を重ねるだけでは、この継続の側に入りにくい。

よくある質問

大阪大学は自治体と連携していないのですか。研究費が動く共同研究という形では2件だが、自治体からの受託研究は23件ある。包括連携協定のように研究費を伴わない枠組みは、この調査の対象外なので件数には出てこない。

数字はどこで確認できますか。文部科学省の産学連携等実施状況調査の公表ページに、様式ごとのエクセルが機関別で置かれている。共同研究は様式2、受託研究は様式3-1で、相手先の区分と同一県内かどうかの欄まで入っている。

受入額の単位に注意する点はありますか。元のファイルは千円単位で、受入額には直接経費と間接経費の両方が含まれる。民間の集計とランキングで値が食い違うことがあるのは、民間企業だけを数えるか国や独立行政法人も含めるかという対象範囲の違いから生じる。

自治体が最初に当たるべき相手はどこですか。件数の実績で選ぶなら、地元の公立大学が候補になる。大阪府の場合は大阪公立大学が自治体との共同研究10件と受託研究38件で、府内で最も多い。規模の大きい国立大学が必ずしも自治体案件に慣れているわけではない。

共同研究と受託研究はどう違うのですか。共同研究は大学と相手方が研究課題を共有して双方が費用や人を出す形、受託研究は相手方が費用を出して大学が研究を引き受ける形である。成果の権利の扱いや経費の負担が変わるため、自治体が期待する関与の度合いに合わせて選ぶ必要がある。

出典:文部科学省「令和6年度 大学等における産学連携等実施状況について」(令和8年7月10日更新)の様式2(共同研究)および様式3-1(受託研究)の機関別データ。


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