地元に戻って一次産業に入るとき、入口は三つに分かれる
卒業後に生まれ育った地域へ戻る進路を考えると、農業や林業、漁業が候補に上がることがある。実家が経営しているか、法人に雇われるか、自分で始めるかで、必要な準備も使える制度もまったく変わる。統計も最初からこの三つを分けて数えている。
農林水産省が令和8年8月25日に公表した令和7年新規就農者調査によると、令和7年2月1日から令和8年1月31日までに農業へ新たに入った人は4万2,850人で、前年に比べ1.5パーセント減った。このうち49歳以下は1万4,410人で、8.3パーセントの減少である。
| 就農の形態 | 令和7年の人数 | うち49歳以下 | 49歳以下の構成比 |
|---|---|---|---|
| 新規自営農業就農者 | 2万9,240人 | 5,080人 | 17.4% |
| 新規雇用就農者 | 1万250人 | 7,030人 | 68.6% |
| 新規参入者 | 3,360人 | 2,300人 | 68.5% |
| 合計 | 4万2,850人 | 1万4,410人 | 33.6% |
全体の7割近くを占めるのが新規自営農業就農者である。家族経営の一員として農業に入る形で、実家に戻るという進路はほぼここに入る。残りが法人などに雇われる1万250人と、土地も設備も自分で用意して始める3,360人に分かれる。
実家に入る2万9,240人は、49歳以下が17.4パーセントしかいない
自営の内訳を年齢で割ると、戻る進路の実態がはっきりする。令和7年の新規自営農業就農者2万9,240人のうち49歳以下は5,080人で、構成比は17.4パーセント。前年は6,110人で20.7パーセントだったので、人数で16.9パーセント、構成比で3.3ポイント下がった。
逆に言えば82.7パーセントは50歳以上である。定年の前後に家の農地を引き継ぐ形が主流で、学校を出てすぐ入る経路は細い。男女別では男が2万2,820人、女が6,420人。女は前年の8,200人から21.7パーセント減り、構成比も27.7パーセントから22.0パーセントへ落ちた。
ここで気をつけたいのは、この調査が数えているのは農業に新しく入った人であって、Uターンで戻った人ではないという点である。Uターン就職の人数そのものは国として公表されていないので、戻る動きを見たいときは転入超過や移住の統計と突き合わせる必要がある。
雇われて入る入口は、49歳以下が7割を占める
三つの入口のうち、若い世代の比重が最も高いのは雇用である。令和7年の新規雇用就農者は1万250人で、前年の1万180人から0.7パーセント増えた。三つの形態で前年を上回ったのはここだけである。
49歳以下は7,030人で構成比68.6パーセント。前年の7,050人からほぼ横ばいで、人数の水準を保っている。男女別では男6,790人、女3,460人で、女の構成比は33.8パーセントと自営より10ポイント以上高い。
雇用就農は、農地を持たず資金も要らない状態から始められる。技術を身につけてから独立するという順番を取る人もいる。地域の側から見ても、法人の求人は地元出身者だけを対象にしていないため、縁のない土地へ入る経路としても機能している。
自分で始める3,360人が選んでいる部門
独立して始める新規参入者は3,360人で、前年の3,750人から10.4パーセント減った。49歳以下は2,300人で構成比68.5パーセント。経営の責任者が3,100人、共同経営者が260人で、共同経営者は前年の420人から38.1パーセント減っている。
| 新規参入した部門 | 令和7年の人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 露地野菜作 | 1,050人 | 31.3% |
| 果樹作 | 810人 | 24.1% |
| 稲作 | 540人 | 16.1% |
| 施設野菜作 | 480人 | 14.3% |
| 畑作 | 220人 | 6.5% |
| 花き作 | 100人 | 3.0% |
露地野菜作と果樹作で過半を占める。初期投資が比較的小さく、販路を自分で開きやすい部門が選ばれている。畜産は酪農30人、肉用牛40人、養鶏10人と桁が違う。設備と頭数の確保が重いため、新規参入の入口にはなりにくい。
男女別では男2,720人、女640人で、女の構成比は19.0パーセント。前年の20.3パーセントから下がっている。自営・雇用・参入の三つを並べると、女の比率が最も高いのは雇用で、最も低いのが参入という順になる。
林業は年3,000人、漁業は年1,700人という規模である
一次産業のうち農業以外も、入口の人数は公表されている。林野庁の業務資料では、新規林業就業者は令和6年度に3,039人。令和5年度の3,333人から減ったが、平成28年度の3,055人からの9年間はおおむね3,000人前後で推移している。
林業就業者そのものは国勢調査で数えられ、令和2年は6.1万人、うち65歳以上が1.4万人だった。平成2年の10.8万人からは4割以上減っている。母数が小さいぶん、年3,000人の新規就業は全体に対する比率としては農業より高い。
漁業は水産庁の水産白書に数字がある。令和5年の漁業就業者は12万1,389人で、前年から1.4パーセント減少した。令和5年度の新規漁業就業者は1,733人で、前年度の1,691人から2.5パーセント増えている。内訳は雇われて働く人が1,150人、独立や自営を目指す人が576人で、近年は新規就業者の約7割が39歳以下である。
三つの産業を並べると、年あたりの入口の大きさは農業4万2,850人、林業3,039人、漁業1,733人。地域の求人を探すときは、この規模の差がそのまま選択肢の数に出る。地域で働く形を具体的に確かめたい段階なら、FLASPOのような学生向けの地域企画で現地の事業者と接点を作っておくと、求人票だけでは見えない部分が埋まる。
よくある質問
実家が農家でなくても一次産業に入れますか
入れます。令和7年の新規雇用就農者1万250人と新規参入者3,360人は、家族経営に入る形とは別に数えられています。雇用は農地も資金も要らない状態から始められ、49歳以下が68.6パーセントを占めます。参入は土地と設備を自分で用意する形で、49歳以下が68.5パーセントです。
若いうちに戻って農業を継ぐ人は増えていますか
減っています。新規自営農業就農者のうち49歳以下は令和3年の7,190人から令和7年の5,080人まで落ち、構成比も17.4パーセントです。全体の82.7パーセントは50歳以上で、定年前後に引き継ぐ形が主流になっています。
独立して始めるならどの部門が選ばれていますか
露地野菜作が1,050人で最も多く、果樹作810人、稲作540人、施設野菜作480人と続きます。畜産は酪農30人、肉用牛40人と桁が小さく、新規参入の入口としてはほとんど使われていません。
林業や漁業の求人はどのくらいありますか
新規就業者の人数で見ると林業が令和6年度に3,039人、漁業が令和5年度に1,733人です。農業の4万2,850人と比べると10分の1以下の規模なので、地域を絞って探すと候補が数件まで減ることがあります。
Uターンで一次産業に入った人の数は分かりますか
直接は分かりません。新規就農者調査は就農の形態と年齢、男女、部門を集計しますが、出身地と就業地の関係は調べていません。Uターン就職の人数自体も国として公表されていないため、転入超過や移住相談の統計を組み合わせて推計する形になります。
出典:農林水産省「令和7年新規就農者調査結果」令和8年8月25日公表(PDF)、農林水産省「林業に関する統計」(新規林業就業者は林野庁業務資料)、水産庁「水産白書 水産業の就業者をめぐる動向」
あわせて読みたい:実家に戻って就農するまでの順番|認定新規就農者10,954経営体の地域差/Uターン就職の人数は公表されていない|転入超過7都府県と関係人口/農業体験は就農につながるのか|現地就労型109万人と新規参入3,360人
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
