地域起業のリモート前提は半分で止まる|導入率50.1%の内側

地方に住んで都市の仕事を受けるという前提を確かめる

地域で小さく事業を始めるとき、収入の一部を地域外から取ってくる計画を立てる人は多い。設計や編集、開発、相談業務のように、場所を選ばない仕事を遠隔で受ける前提である。この前提が成り立つかどうかは、自分の側の技能ではなく、発注してくる相手の働き方で決まる。

相手側の状況は総務省の通信利用動向調査で毎年把握されている。令和7年調査では、テレワークを導入している企業の割合は50.1パーセントで、前年の47.3パーセントから2.8ポイント上がった。導入していないが今後導入予定があるという回答を足すと53.1パーセントになる。

半分という水準は、遠隔での受注を考える側にとって悪い数字ではない。ただし残りの46.9パーセントは導入していないし具体的な導入予定もないと答えている。相手を選ばずに営業すれば、だいたい二社に一社は社内に遠隔で仕事を回す仕組みを持っていないことになる。

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この50.1パーセントは常用雇用者100人以上の企業の数字である

数字を使う前に調査の範囲を見ておきたい。通信利用動向調査の企業編は、公務を除く産業に属する常用雇用者100人以上の企業を母集団としている。令和7年調査の抽出数は6,040企業、有効回答は2,489企業で、有効回収率は55.3パーセント。調査時点は令和7年8月末である。

有効回答の従業者規模別の内訳は、100人から299人が1,691企業、300人から999人が572企業、1,000人から1,999人が122企業、2,000人以上が104企業。つまりこの調査に映っているのは、少なくとも100人を雇っている組織だけだ。地域で起業した当人の側、従業者が数人の事業者はこの統計に一度も登場しない。

ここを読み違えると計画が狂う。半数が導入済みというのは、ある程度の規模を持つ発注元の話である。地域の同業者や小規模な取引先がどれだけ遠隔のやり取りに慣れているかは、この調査からは分からない。相手の規模が小さいほど、対面での打ち合わせを前提に見積もる必要が出てくる。

在宅勤務は89.8パーセント、サテライトオフィス勤務は14.9パーセント

導入済みの企業がどの形で運用しているかを見ると、地域側の受け皿がどこまで使われているかが分かる。回答は複数回答で、比重調整後の導入企業数は1,247である。

テレワークの形態 導入企業に占める割合 前年
在宅勤務 89.8% 90.9%
モバイルワーク 32.5% 32.4%
サテライトオフィス勤務 14.9% 15.7%
ワーケーション 2.4% 0.9%

圧倒的に在宅である。サテライトオフィス勤務は14.9パーセントで、前年の15.7パーセントからむしろ下がった。総務省が令和4年10月に公表した調査では、自治体が誘致または関与して開設したサテライトオフィスは令和3年度末で全国1,348箇所、前年度末の916箇所から432箇所増えていた。箱は増えても、利用する企業側の形態としては7社に1社の水準で止まっている。

ワーケーションは0.9パーセントから2.4パーセントへ増えた。伸び率だけ見れば最も大きいが、絶対水準は低い。地域に人を呼び込む事業を組むとき、滞在型の需要をこの2.4パーセントの上に乗せるのは分母が小さい。短期の受け入れを収益の柱にするより、副次的な流入として数えるほうが実態に近い。

導入しない側の理由は、ほぼ一つに集まっている

導入しておらず予定もない企業に理由を聞くと、分布は極端に偏る。テレワークに適した仕事がないからが79.0パーセントで、二番目の業務の進行が難しいからが33.7パーセント。情報漏えいが心配だから16.8パーセント、社内のコミュニケーションに支障があるから16.3パーセント、顧客など外部への対応に支障があるから14.0パーセントと続く。

この並びが示しているのは、制度や設備の問題ではなく業務の性質で決まっているということだ。製造、建設、対面の小売や介護のように現場に人が必要な仕事では、どれだけ機器を整えても割合は上がらない。産業別に見ると導入率は情報通信業が92.8パーセントで最も高く、金融・保険業が81.9パーセントで続く。

逆に言えば、遠隔で受ける仕事を探すなら、相手の業種がそのまま確率になる。普及のために必要な要素としては、テレワーク導入企業などに対する補助・助成が45.2パーセントで最も高く挙げられている。補助があれば増えるという回答と、適した仕事がないという回答が同じ調査に並んでいることになる。

導入していても、使っている従業者はごく一部にとどまる

もう一段細かく見ると、導入済みという回答の中身も薄い。テレワークを利用している従業者の割合が5パーセント未満という企業が40.2パーセントで最も多く、80パーセント以上は10.0パーセントしかない。前年の12.0パーセントから2.0ポイント下がった。

従業者規模 令和7年の導入率
100人から299人 44.3%
500人から999人 65.1%
1,000人から1,999人 73.4%
2,000人以上 81.2%
全体 50.1%

規模による差は37ポイント近い。2,000人以上では81.2パーセントが導入しているのに対し、100人から299人では44.3パーセント。遠隔で受注する相手として確率が高いのは大企業で、取引の難易度はそこで上がる。地域で始めた小さな事業が最初に当たる壁は、技能よりこの構造にある。

導入目的の上位は感染症への対応が61.6パーセント、勤務者のワークライフバランスの向上が53.8パーセント、業務の効率性の向上が45.0パーセント。オフィスコストの削減は10.3パーセントにとどまる。発注側は費用を削るために遠隔化したのではないので、遠隔だから安く受けるという提案は相手の動機とかみ合わない。地域での起業を検討する学生が実務の肌感を確かめたいなら、FLASPOのような地域の企画に参加して、受け手と発注元の双方に話を聞いてみるのが手早い。

よくある質問

地域で起業するなら、リモート前提で計画してよいのですか

相手の業種と規模で分けて見積もるのが安全です。テレワーク導入率は全体で50.1パーセントですが、情報通信業は92.8パーセント、従業者2,000人以上は81.2パーセント、100人から299人では44.3パーセントです。遠隔での受注を主な収入に置くなら、顧客の想定をこの高い側に寄せる必要があります。

サテライトオフィスを使う会社は増えているのですか

導入企業に占めるサテライトオフィス勤務の割合は14.9パーセントで、前年の15.7パーセントから下がりました。一方で自治体が誘致または関与した開設数は令和3年度末で1,348箇所まで増えていました。箱の数と使われ方が同じ向きに動いていないため、拠点の稼働は個別に確かめたほうがよいです。

統計に小規模な事業者は含まれていますか

含まれていません。通信利用動向調査の企業編は常用雇用者100人以上の企業を対象とし、令和7年の有効回答2,489企業のうち1,691企業が100人から299人の層です。地域で起業した数人規模の事業者の実態は、この調査では把握できません。

遠隔での受注を断られる主な理由は何ですか

導入しない企業の理由では、テレワークに適した仕事がないからが79.0パーセントで突出しています。次が業務の進行が難しいからの33.7パーセントです。設備や費用ではなく業務の性質が理由なので、提案の仕方を変えても結果が変わりにくい相手だと判断できます。

ワーケーションの受け入れは事業として成り立ちますか

単独の柱にするには分母が小さいです。導入企業に占める割合は2.4パーセントで、前年の0.9パーセントからは増えましたが水準としては低いままです。宿泊や交流の事業に組み込む場合は、地域内の需要や移住検討者の滞在と合わせて数えるほうが現実的です。

出典:総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」(PDF)、総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(報道資料)、総務省「地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設状況調査」

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