新歓の二週間前になって、どのSNSを使うかを決めようとする。毎年どこかの団体で起きている順番の入れ替わりである。本来先に決まるのは誰に何を届けたいかで、道具はその後から決まる。順番を戻すだけで、候補は三つくらいまで落ちる。
どれを使うかの前に、誰に届くかを見る
総務省情報通信政策研究所が2025年6月に公表した令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査には、年代別の利用率が載っている。10代と20代だけを抜き出すと、順位は世間一般の印象と違う形になる。
LINEは10代で93.6%、20代で97.7%。YouTubeは95.7%と97.2%で、ここまでは両年代でほぼ全員が使っている。続くのがInstagramの75.0%と78.0%、TikTokの65.7%と58.7%、X(旧Twitter)の62.1%と78.0%である。Facebookは10代で13.6%、20代で22.9%にとどまる。
全年代の平均と並べると差がはっきりする。全年代ではInstagramが52.6%、Xが43.3%、TikTokが33.2%、Facebookが26.8%。学生に向けた告知では一般の感覚よりInstagramとXが効き、Facebookはほとんど効かない。逆に、保護者や協賛先の担当者にも届けたいときは、この順位がそのまま逆向きに働く。
| サービス | 10代の利用率 | 20代の利用率 | 全年代 | 学生団体での向き |
|---|---|---|---|---|
| LINE | 93.6% | 97.7% | 91.1% | 内部連絡と参加者への個別案内 |
| YouTube | 95.7% | 97.2% | 80.8% | 活動記録の置き場、長い説明 |
| 75.0% | 78.0% | 52.6% | 新歓とイベント告知の主軸 | |
| TikTok | 65.7% | 58.7% | 33.2% | 面識のない層への間口 |
| X(旧Twitter) | 62.1% | 78.0% | 43.3% | 当日の実況、他団体との接続 |
| 13.6% | 22.9% | 26.8% | 協賛先や卒業生向けの窓口 |
数字は同調査の概要資料に出ている全年代・年代別の集計である。標本は全年代で1,800人、10代は140人、20代は218人なので、10代の数字は幅を持って読むほうがよい。
連絡の道具と告知の道具を混ぜない
利用率がいちばん高いのはLINEだが、これは「連絡が確実に届く」という意味であって、「知らない人に見つけてもらえる」という意味ではない。閉じた経路は漏れが少ない代わりに、外から入ってくる人がいない。ここを一緒にすると、告知をしているつもりで既存メンバーにだけ話している状態になる。
役割で三つに分けると整理しやすい。外から見つけてもらう経路、関心を持った人が中身を確かめる経路、参加が決まった人とやり取りする経路である。一つ目は検索や推薦で表示されるサービス、二つ目は過去の投稿が残って読めるところ、三つ目は個別に連絡が取れるところが向く。
同じ調査では、趣味や娯楽の情報を得るために最も使うメディアとして、全年代の71.1%がインターネットを挙げている。世の中の動きをいち早く知る目的でも54.4%。関心の入口はほぼネット側にあるという前提で、三つの経路をつなぐ形を考えることになる。
一つに絞るか、二つで回すか
広報に割ける人数が二人までなら、告知の主軸は一つにしたほうがよい。更新が止まったアカウントが三つ並んでいる状態は、何もない状態より印象が悪い。見た人は活動が続いているかどうかを更新日で判断する。
主軸を一つ決めたうえで、二つ目は転載だけにする手がある。写真と文章を作るのは一か所で、もう一方には同じ素材を形を変えて置く。作る手間は増えず、届く相手の幅だけが広がる。TikTokとInstagramのように縦の動画を共有できる組み合わせだと、この形が組みやすい。
投稿一本にかかる手間を数えておくと、無理のない本数が先に見える。写真を選ぶ、文章を書く、誰かに見てもらう、投稿する。慣れても三十分は要る作業で、週三本なら月に六時間になる。試験期間と重なる月を差し引いて、年間で何本出せるかを先に出しておくと、途中で止まらない。
三つ以上を同時に立ち上げるのは、広報に四人以上いて、担当を分けられるときに限る。分けるときは曜日ではなく媒体で割る。曜日で割ると、投稿の調子が日によって変わって誰が書いているか分かってしまい、一貫した見え方にならない。使い分けの考え方そのものは動画編集とSNSの記事でも媒体別に整理している。
載せるものによって、使える道具が変わる
音楽を付けた動画を出す予定があるなら、選択の基準が一つ増える。日本音楽著作権協会は、利用許諾契約を結んでいるUGCサービスの一覧を公開しており、そこに入っているサービスでは投稿者が個別に手続きをしなくても管理楽曲を使える。
その一覧にはInstagram、Facebook、Threads、YouTube、TikTok、ニコニコ動画が並んでいる。一方でXは入っていない。同じ音源を使った同じ動画が、載せる場所によって個別許諾の要否が変わるということである。音を使う企画を軸にするなら、ここは先に見ておきたい。
ただし一覧に入っていても、市販のCDや配信音源をそのまま流す場合は別の話になる。協会が扱うのは作詞者と作曲者の権利で、音源そのものには著作隣接権があり、こちらはレコード会社に確認する必要がある。編曲や替え歌も作詞者と作曲者の意向を確かめる扱いなので、サービス側の包括契約では片づかない。
選んだ後に残るのは、引き継ぎの問題
どれを選んでも、二年後に効いてくるのは同じ一点である。アカウントが団体に属しているか、担当者個人に属しているかだ。登録に個人のアドレスを使った時点で、卒業と同時に鍵が消える道が確定する。選定の段階で団体名義のアドレスを一つ作っておけば、後から直す作業が消える。
媒体を決めるときに、同時に決めておくと楽なものが三つある。投稿を出す前に誰が見るか、何を出さないか、代が替わったときに何を渡すか。この三つは媒体ごとに違う内容になるので、選定と一緒に書いたほうが早い。団体としての枠組みの作り方は学生団体の作り方の記事にまとめた。
企画の中身が決まっていないまま媒体を選ぶと、結局なんとなく毎日投稿することになって続かない。先に活動の型を決めて、その型が人に伝わりやすい場所を選ぶ順番が早い。企画の立て方は学生団体の活動内容例の記事で分類から追っている。学生の活動と社会をつなぐ取り組みはFLASPOでも扱っている。
よくある質問
新歓だけのために始めるなら、どれがよいか。期間が一か月なら、過去の投稿が残って一覧で見える場所が向く。初めて見た人が三分で活動の全体像をつかめるかどうかが基準になる。日々の更新が前提の場所は、助走の時間が足りない。
フォロワーが増えないと意味がないか。新歓の目的は入会で、数ではない。説明会に来た人が事前に見ていたかどうかを聞けば、効いているかは分かる。数十人規模の団体なら、届く相手の顔が見える範囲で十分に機能する。
やめるときはどうするか。消すより、最後の投稿で活動の終わりと連絡先を書いて残すほうがよい。過去の活動を参照したい人が後から出てくるし、再開する代が現れたときに履歴が資産になる。アカウントを削除すると同じ名前が第三者に取られる可能性も残る。
途中で乗り換えてよいか。主軸を移すのは問題ないが、古い側を無言で放置しないほうがよい。最後の投稿に移転先を書いて固定しておけば、検索から古い側に着いた人も追える。二つを並行させる期間は一か月あれば足りる。
大学から指定された媒体がある場合は。公認団体で広報の経路が決まっているなら、それを一つ目として数える。そのうえで、学外の人に届く経路が別に必要かどうかを考える。学内だけで完結する活動なら、二つ目は作らなくてよい。
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