「何をやる団体ですか」に一行で答えられない
立ち上げの相談で最も多く詰まるのは、やりたいことの中身である。地域を元気にしたい、教育の格差をなくしたい、環境をよくしたい。どれも本心なのだが、そのまま募集文に載せると誰も動かない。読んだ側は、来週の土曜に自分が何をするのかを知りたいからである。
抽象から具体へ降りるとき、手がかりなしに考えると発想が狭くなる。先輩の団体でやっていたことか、交流サイトで見た企画のどちらかに寄ってしまう。そこで、すでに整理されている分類を二つ借りてくる。国の統計が使っている区分と、法律が並べている分野である。
分類はテーマを選ぶためだけのものではない。自分たちが手を付けていない領域を見つける道具にもなる。順に見ていく。
国の調査は、この種の活動を11種類に分けている
総務省統計局の令和3年社会生活基本調査は、ボランティア活動を対象や目的によって11種類に分類して調査している。用語の解説には、それぞれにどんな行為が含まれるのかが例示されている。この例示が、企画を考えるときにそのまま使える。
| 調査が置く11の種類 | 調査が挙げている例 | 学生団体での形 |
|---|---|---|
| 健康や医療サービスに関係した活動 | 献血、入院患者の話し相手、安全な食品を広めること | 学内の献血を呼びかける、食の安全を調べて発信する |
| 高齢者を対象とした活動 | 日常生活の手助け、高齢者とのレクリエーション | 団地の集会所で月一回の集まりを開く |
| 障害者を対象とした活動 | 手話、点訳、朗読、社会参加の協力 | 講義資料の点訳、学内行事に手話通訳を付ける |
| 子供を対象とした活動 | 子供会の世話、子育て支援、学校行事の手伝い | 学習支援の教室、放課後の居場所づくり |
| スポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動 | スポーツを教える、文化を広める、美術館ガイド、講演会の開催 | 地元の中学で教室を開く、公開シンポジウムを主催する |
| まちづくりのための活動 | 道路や公園等の清掃、花いっぱい運動、まちおこし | 商店街の空き店舗を使った企画、清掃の定例化 |
| 安全な生活のための活動 | 防災活動、防犯活動、交通安全運動 | 学生向けの避難訓練、自転車事故の実態調査 |
| 自然や環境を守るための活動 | 野鳥の観察と保護、森林や緑を守る、リサイクル運動 | 学内の分別率を測って改善案を出す |
| 災害に関係した活動 | 被災した人に食べものや着るものを送る、炊き出し | 被災地での作業、平時の備蓄の呼びかけ |
| 国際協力に関係した活動 | 海外支援協力、難民支援、日本にいる外国人への支援 | 留学生との交流、日本語学習の場を作る |
| その他 | 人権を守るための活動、平和のための活動 | 学内の相談窓口の周知、企画展の開催 |
同じ調査によれば、一年間にこれらのいずれかを行った人の割合は17.8%で、2016年より8.2ポイント下がっている。やっている人が減っているということは、同じ領域に団体が少ないという意味でもある。重なりを避けたいなら、行動者率の低い領域を選ぶほうが埋める余地が大きい。
法律の側の区切りは、20の分野で並んでいる
もうひとつの分類は特定非営利活動促進法の別表にある。保健、医療又は福祉の増進を図る活動から始まり、社会教育、まちづくり、観光、農山漁村又は中山間地域の振興、学術・文化・芸術・スポーツ、環境の保全、災害救援、地域安全、人権の擁護又は平和の推進、国際協力、男女共同参画、子どもの健全育成、情報化社会、科学技術、経済活動の活性化、職業能力の開発又は雇用機会の拡充、消費者の保護まで並び、最後の二号に中間支援と条例で定める活動が置かれている。合わせて20分野である。
統計の11種類と見比べると、違いがはっきりする。調査の側は誰を相手に何をしたかという行為で分け、法律の側は何のための公益かという目的で分けている。観光の振興、情報化社会の発展、職業能力の開発といった分野は、統計の11種類には現れない。産業や経済に寄った企画を考えるときは、法律の側の一覧を見たほうが取りこぼしが少ない。
この20分野は、将来NPO法人になるつもりがなくても使える。助成金の募集要項が分野名でくくられていることが多く、申請のときに自分たちの活動がどの分野に当たるのかを言えるかどうかで通りやすさが変わる。法人の資格としてのNPOと活動の性格としてのNPOの違いは学生団体とNPOの違い|社員10人と20分野という法律上の線で分けて書いた。
同じテーマでも、企画の型は四つしかない
テーマが決まっても、まだ活動内容にはならない。子供の学習支援をやると決めた団体が、週一回の教室を開くのか、年一回の合宿をやるのか、実態調査をして報告書を出すのか、自治体の委託を受けるのかで、必要な人数も予算も法的な注意点も全部変わる。
型は大きく四つに分かれる。第一が定例活動で、同じことを決まった頻度で繰り返す形。人は少なくて済むが、担い手が抜けると止まる。第二が単発イベントで、一回に向けて人と予算を集める形。新しく入った人に役割を渡しやすい反面、終わると組織が緩む。第三が調査と発信で、集めた事実を冊子や記事にして出す形。成果が残り、就職活動でも説明しやすい。第四が受託と協働で、企業や自治体の仕事を引き受ける形。収入が立つが、契約と責任の所在をはっきりさせる必要がある。
多くの団体は、第二の型から始めて第一の型に移り、三年目あたりで第三か第四に手を伸ばす。この移り方には理由がある。単発のイベントは準備期間が短く失敗の損が小さい。定例化は人が足りてから。受託は、お金を受け取る受け皿と決定の手続きが整ってから、という順になるからである。
第四の型に進む段では、団体の形を見直す必要が出てくる。口座の名義、契約の当事者、余った資金の扱いをどうするかという話で、学生団体の作り方|任意団体のまま進むか法人格を取るかで決めるに判断の材料を置いた。決定の手続きそのものは学生団体の組織図|NPO法の機関設計を任意団体に当てて描くで扱っている。
災害に関係した活動は、3.8%から0.8%へ下がった
活動の内容を選ぶとき、関心の波を読み違えると続かなくなる。同じ調査の数字がそれを示している。災害に関係した活動の行動者率は、東日本大震災が起きた2011年には3.8%という高い水準にあった。それが2021年には0.8%まで下がっている。2001年は1.4%、2006年は1.2%、熊本地震のあった2016年は1.5%だった。
都道府県別に見ると、2021年でも熊本県が2.5%と最も高く、次いで佐賀県が1.8%、長野県が1.4%と続く。いずれも大きな災害を経験した土地である。関心は、出来事の記憶が残っている範囲でしか保たれないという読み方ができる。
学生団体の寿命は、構成員が入れ替わる四年で区切られる。発足のきっかけになった出来事を知らない代が来たとき、活動の意味を説明できるかどうかが分かれ目になる。対策は難しくない。なぜこの活動を始めたのかを文書に残し、年に一度は数字で現状を測り直す。災害に限らず、関心が落ちやすいテーマを選ぶときにはこの二つを仕組みに入れておく。
逆に、まちづくりや子供を対象とした活動のように相手が目の前にいる領域は、関心の波に左右されにくい。どちらを選ぶかは好みの問題だが、波の大きいテーマを選ぶなら引き継ぎの設計を先に済ませておく必要がある。
よくある質問
Q. 活動内容は一つに絞るべきでしょうか。
A. 立ち上げから二年目までは一つに絞ったほうが続きます。複数のテーマを並べると、担い手が分散して定例活動が維持できなくなります。分野を増やすのは、片方が人の手で回り始めてからです。
Q. 他の団体と同じ活動をしても意味がありますか。
A. 相手にする地域や対象が違えば重複にはなりません。学習支援のように需要が供給を上回っている領域では、同じ形の団体がいくつあっても足りていないのが普通です。気にするなら、相手と連絡を取って対象を分けるほうが建設的です。
Q. 収益を伴う活動をしても大丈夫ですか。
A. 任意団体でも物販や受託はできます。ただし利益の帰属先と税の扱いが問題になるため、会計の担当を置き、余った資金を個人で分けない決まりを会則に書いてから始めてください。
Q. 活動内容を途中で変えるのは良くないことでしょうか。
A. 変えてかまいません。むしろ、代が替わっても最初の企画をそのまま続けている団体のほうが、形だけ残って中身が抜けやすい。変えるときは、何を残して何をやめるのかを総会で決め、記録を残すことだけは守ってください。
Q. 活動の内容を就職活動でどう説明すればよいですか。
A. 分野名ではなく、自分が担った役割と出した成果で説明するほうが伝わります。調査と発信の型は成果物が残るので説明しやすく、定例活動は継続した期間と頻度が材料になります。働き方との結び付け方はFLASPOでも扱っています。
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