箱を並べる前に、そこが何を決める場所かを書く
新歓の資料を作る段で、組織図を描くことになる。代表の下に広報と企画と会計を並べ、線でつなぐ。見た目は整うが、半年たつと誰も見返さない。図に書かれているのが担当の名前だけで、決定の経路が入っていないからである。
使われる組織図には共通点がある。箱の中に、そこで決めてよいことが書かれている。広報という箱なら、投稿の文面は自分たちで決めてよいが、協賛先への連絡は上に戻す、というように範囲が入っている。この範囲が書かれていれば、迷ったときに図を見る理由が生まれる。
範囲の切り方を白紙から考えると時間がかかる。法人の制度に型があるので、それを借りるほうが早い。団体の形そのものの選び方は学生団体の作り方|任意団体のまま進むか法人格を取るかで決めるで扱った。
法人の機関は、結局三つしかない
NPO法人の設計を見ると、意思決定の場は三つに収まる。特定非営利活動促進法の第14条の5は、法人の業務は定款で理事その他の役員に委任したものを除き、すべて社員総会の決議によって行うと定めている。原則は全員の会議にあり、理事に渡っているのは委任された分だけだという構造である。
次に執行の層が来る。第15条は、役員として理事三人以上および監事一人以上を置かなければならないと定める。理事が複数であることが前提で、第17条により業務は定款に特別の定めのないときは理事の過半数をもって決する。ひとりが決める形は、法律の既定ではない。
三つ目が点検の層である。第18条は監事の職務として、理事の業務執行の状況を監査すること、法人の財産の状況を監査すること、監査の結果として不正の行為や重大な違反の事実を発見した場合にこれを社員総会または所轄庁に報告すること、その報告のために必要があるときは社員総会を招集すること、理事に意見を述べることを並べている。執行する人と点検する人を分けるという考え方が、ここにはっきり出ている。制度の全体像はNPO法人の認証制度についてにまとまっている。
三つの層を、学生団体に当てて描く
この三層を手元の団体に写すと、次の表になる。二列目は条文の位置づけ、三列目は学生団体でそれに当たるもの、四列目はその箱で決めてよいことである。
| 機関 | 法令上の位置づけ | 学生団体での対応物 | そこで決めること |
|---|---|---|---|
| 社員総会 | 定款で理事その他の役員に委任したものを除き、業務はすべて社員総会の決議によって行う(第14条の5) | 全体会、総会 | 年間の方針、予算、役職の交代、会則の変更 |
| 理事 | 理事三人以上を置く。全員が業務について法人を代表し、業務は定款に特別の定めがなければ過半数で決する(第15条・第16条・第17条) | 代表と、複数人の運営メンバー | 企画の採否、予算の割り振り、対外的な名義 |
| 監事 | 監事一人以上を置き、業務執行の状況と財産の状況を監査する(第15条・第18条) | 会計監査、点検役 | 帳簿と決定の突き合わせ、総会での報告 |
| 委任を受けた者 | 理事は定款または社員総会の決議で禁止されていない限り、特定の行為の代理を他人に委任できる(第17条の2) | 広報班、会計班、企画班 | 任された範囲の実務。範囲外は持ち帰る |
図に落とすときは、四列目を箱の中に書き込む。広報班という箱の中に、投稿の文面は班で決める、協賛先への連絡は運営会議に戻す、と二行入れておけば、それだけで判断の基準になる。線は所属ではなく、決定が戻る方向を示すものだと考えると引きやすい。
よく抜けるのが三行目である。学生団体では会計を担当する人が報告まで行うため、点検の層が存在しないことが多い。金額が小さいうちは問題が出ないが、協賛金や助成金が入る段になると、記録と現物が合っているかを別の目で見る必要が生まれる。点検役は作業量が少ないので、忙しい代表以外の誰かに置ける。
部や班を増やす基準は、委任できるかどうか
人が増えると箱を増やしたくなるが、箱の数が多い図は使われない。増やす基準を一つ決めておく。その箱に渡せる決定があるかどうか、である。渡せる決定がなければ、それは箱ではなく作業の名前にすぎない。
条文の側も同じ考え方を取る。第17条の2は、理事は定款または社員総会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができると定めている。委任できるのは特定の行為であって、包括的な権限ではない。学生団体に置き換えると、広報全般を任せるのではなく、投稿の文面と公開の時刻を任せる、という粒度になる。
この粒度まで割ると、引き継ぎが楽になる。任された範囲が一行で書けるなら、後任に渡せる。範囲が書けない箱は、前任者の頭の中にしか存在しなかったということなので、図から外して運営会議に戻す。組織図は体制の宣言ではなく、委任の記録として扱うほうが長持ちする。
外部と組む企画が増えると、箱の外にも線が伸びる。受け入れ先の担当者と団体のどの箱がつながっているかを図に書いておくと、担当が替わっても関係が切れない。FLASPOのように地域と学生の間に窓口を置く事業者を通す場合も、どの箱が窓口と話すかを決めておくと連絡の往復が減る。
規模ごとに、図の形は変えたほうがよい
十人に満たない段では、箱を三つにする。全体会、運営、点検。これだけで足りる。企画ごとに担当を決め、図には書かない。人数より企画の数が多い時期に箱を増やすと、空いた箱を埋めるために人を配置することになり、実務が遅くなる。
三十人を超えると、全体会で細かい話ができなくなる。ここで初めて班を立て、班ごとに決めてよい範囲を書く。年に一度の総会で方針と予算を決め、月ごとの運営会議で企画の採否を決め、班が実務を回すという三段になる。会議の間隔を図の脇に書いておくと、いつ何が決まるのかが新しいメンバーにも伝わる。
法人格を取る段では、図をそのまま定款に寄せる。社員総会、理事、監事という呼び名に置き換え、人数の要件を満たすかを確認する。理事三人以上、監事一人以上という定数に届かない団体は、先に人を集める段階にある。定款の書き方についての疑問は定款に関するQ&Aに実例が並んでいる。法人化の判断材料は学生団体とNPOの違い|社員10人と20分野という法律上の線でも比べた。
よくある質問
組織図は会則に入れるべきか。入れないほうがよい。会則に図を載せると、班を一つ増やすたびに会則の変更が必要になる。会則には会議と役職の規定だけを置き、図は運営の内部文書として毎年作り直す形にする。
副代表や幹事長といった肩書は要るか。決定が渡っているなら要るし、渡っていないなら要らない。肩書を先に作ると、権限のない役職が残って引き受け手が減る。先に範囲を書き、それに名前を付ける順番にする。
顧問の先生は図のどこに入るか。決定の経路には入れず、脇に置く。助言を受ける相手と、決定を戻す相手は別である。公認サークルの場合は大学の規程で位置づけが決まっていることがあり、その違いは学生団体とサークルの違い|大学の公認という線はどこで効くかで触れた。
兼任はどこまで許されるか。執行と点検の兼任だけは避ける。会計を担当する人が監査も行うと、点検が形だけになる。それ以外の兼任は人数が少ないうちは避けられないので、記録を残すことで補う。
班の数が増えすぎたときはどう直すか。それぞれの箱に渡っている決定を書き出し、一行で書けない箱を統合する。作業の名前しか出てこない箱は、実際には運営会議が決めていたということなので、図から消しても運営は変わらない。
引き継ぎのときに何を渡せばよいか。図と、各箱の範囲を書いた一覧と、会議の間隔である。この三つが揃っていれば、前任者に聞かなくても動ける。アカウントと資料だけを渡す引き継ぎは、毎年同じ混乱を繰り返す。
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