学生団体の代表の役割|代表権と業務執行の線を法律から引き直す

学生団体の代表の役割|代表権と業務執行の線を法律から引き直す

代表になった週に、仕事の輪郭が見えない

引き継ぎの場で渡されるのは、たいてい連絡用のアカウントと、前年度の資料が入ったフォルダである。やることの一覧は入っていない。何をどこまで自分が決めてよいのか分からないまま、最初の企画会議が来る。

困るのは仕事量ではなく、境界である。全部を自分が決めるべきなのか、合議で決めるべきなのか。この線がはっきりしないと、動いた後に不満が出るか、誰も動かないかのどちらかになる。

手がかりは、法人の制度の側にある。法人格を取るかどうかとは別に、法律が代表者に何を持たせているかを読むと、役割の分け方の型が手に入る。団体の形そのものをどう選ぶかは学生団体の作り方|任意団体のまま進むか法人格を取るかで決めるで整理した。

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法律が渡しているのは、代表権という一つの権限だけ

NPO法人を例に取ると、見通しがよくなる。特定非営利活動促進法の第16条は、理事はすべて特定非営利活動法人の業務について法人を代表すると定め、ただし定款をもって代表権を制限することができるとしている。つまり代表権は、外に向かって法人の意思を示す権限である。

一方、同じ法律の第17条は、法人の業務は定款に特別の定めのないときは理事の過半数をもって決すると定めている。何をやるかを決めるのは合議で、決まったことを外に示すのが代表という組み立てになる。二つは別の役割で、同じ人が両方を独占する形は法律の既定ではない。

第17条の2は、理事は定款または社員総会の決議によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができるとも定める。代表の仕事は、原則として分けられる前提で設計されているということである。学生団体でこれを読み替えると、企画の採否は合議、外への署名は代表、個別の実務は委任、という三層になる。

会則に書いていなくても、代表者は税の側から決まる

法人格がないなら代表者も曖昧でよい、とはならない。国税庁の第3条関係 人格のない社団等に対するこの法律の適用という通達は、法人でない社団または財団で代表者または管理人の定めがあるとはどういう場合かを示している。

そこでは、定款、寄付行為、規約等によって代表者または管理人が定められている場合のほか、当該社団または財団の業務に係る契約を締結し、その金銭、物品等を管理するなどの業務を主宰する者が事実上いることをいうものとする、と書かれている。書面に名前がなくても、契約を結んでお金を管理している人がいれば、その人が代表者として扱われる。

同じ通達は、法人でない社団または財団で収益事業を行うものには、代表者または管理人についての定めのないものは通常あり得ないことに留意する、とも続けている。物販やイベントの参加費で収入が立つ団体なら、代表者がいない状態は想定されていない。会則に代表を書かないという選択は、責任の所在を消すのではなく、誰が負うのかを不明にするだけである。

この通達は、法人でない社団の範囲についても、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので、単なる個人の集合体でなく、団体として組織を有して統一された意思の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいうと定義している。団体として扱われるかどうかは、意思決定の形が外から見えるかどうかで分かれる。

役割を四つに割って、どこを手放すかを決める

ここまでの条文を、実際の持ち場に並べ替える。下の表の三列目は、法人ならどの機関が担うかを根拠つきで示したものである。

役割 中身 法人なら誰が担うか 任意団体で手放せるか
対外的に名義を出す 協賛の申込、会場の使用契約、委託の受注に署名する 理事が全て法人を代表する。ただし定款で代表権を制限できる(第16条) 手放しにくい。名義は結局ひとりに集まる
やることを決める 企画を進めるか、やめるか、予算を割り振るか 定款に特別の定めがないときは理事の過半数で決する(第17条) 手放せる。多数決の形を会則に書けばよい
会議を開く 総会を招集し、議題を示して通知する 少なくとも毎年1回の通常社員総会を開く(第14条の2) 手放せる。招集の担当を別に置ける
執行と会計を点検する 決定どおり動いているか、お金が合っているか 監事が業務執行の状況と財産の状況を監査する(第18条) 手放すべき。代表が兼ねると点検が消える

表の四列目が、代表になった人が最初に決めるべき部分である。手放しにくいのは一行目で、協賛の申込書や会場の使用契約に名前を書くのは、結局ひとりになる。だからこそ、二行目から四行目は積極的に分ける。やることの採否を代表の独断にせず、会議の招集を別の担当に置き、会計の点検を代表以外に任せる。

四行目を飛ばす団体が多い。会計を担当した人がそのまま報告もするため、誤りが見つからない。NPO法の第18条は監事の職務として、理事の業務執行の状況を監査すること、財産の状況を監査すること、不正の行為や法令もしくは定款に違反する重大な事実を発見した場合に社員総会または所轄庁に報告することなどを並べている。学生団体でも、点検役をひとり置くだけで同じ働きをする。制度全体の枠組みはNPO法人の認証制度についてに説明がある。

任期と引き継ぎは、会議の規定から逆算する

代表の役割が切れ目なく続くには、交代の手続きが要る。NPO法では、第14条の2が理事は少なくとも毎年一回通常社員総会を開かなければならないと定め、第14条の4が社員総会の招集の通知はその日より少なくとも五日前に、目的である事項を示して定款で定めた方法に従ってしなければならないと定めている。

学生団体に移すと、年に一度の総会を会則に書き、代表の交代をその議題にするという形になる。議題を事前に示すという一点が効く。当日に突然人事を出すと、欠席した人の意思が反映されない。第14条の7は各社員の表決権は平等とし、社員総会に出席しない社員は書面で、または代理人によって表決をすることができると定めている。欠席者の一票を拾う仕組みが先にあるという設計である。

臨時の会議にも型がある。第14条の3は、総社員の五分の一以上から目的である事項を示して請求があったときは、理事は臨時社員総会を招集しなければならないとし、この割合は定款で異なる定めができるとしている。代表が開きたがらない議題でも、一定数が求めれば場が立つ。代表に権限を集めないための装置が、ここにある。

交代のときに実際に詰まるのは、名義の移し替えである。口座、各種の契約、連絡用のアカウント。これらは総会の決議だけでは動かず、窓口ごとの手続きが必要になる。学外の組織と継続的に関わる団体なら、FLASPOのように地域と学生をつなぐ事業者の窓口を通しておくと、担当が替わっても関係が切れにくい。法人格を取る場合の選択肢は学生団体とNPOの違い|社員10人と20分野という法律上の線で比べた。

よくある質問

代表は何人まで置けるか。任意団体なら制限はないが、外に出す名義は一人に絞るほうが実務が楽になる。共同代表にする場合、契約の署名を誰がするかを会則に書き分けておく。書いていないと、相手方が確認のたびに止まる。

副代表は必要か。必要になるのは、代表が動けない期間がある団体である。就職活動や留学で数か月抜けるなら、その間の決定権をどう渡すかを先に決めておく。肩書を置くこと自体に意味はなく、権限の移り方を書くことに意味がある。

代表が個人として責任を負う場面はあるか。任意団体のまま契約すると、相手方は代表個人を当事者として見ることがある。金額の大きい契約や、期間の長い約束を結ぶ段階に来たら、法人格を取る判断に入る合図だと考えたほうがよい。

大学の公認サークルの代表とは何が違うか。公認団体の代表は大学の規程に沿って置かれ、学生団体の代表は自分たちの会則に沿って置かれる。根拠が別なので、交代の手続きも別に用意する必要がある。両者の線は学生団体とサークルの違い|大学の公認という線はどこで効くかで扱った。

代表の仕事を減らしたいが、誰も引き受けない場合はどうするか。役職ではなく、作業の単位で渡す。会議の招集、議事録、会計の記録というように、終わりが見える仕事に切り分けると引き受け手が出る。表の二列目のような粒度まで割ってから声をかけるほうが早い。

就職活動で代表の経験をどう話せばよいか。肩書そのものより、何を自分で決め、何を合議に回したかを話すほうが伝わる。権限の分け方を説明できる人は、組織の中で動いた経験があると受け取られる。実績の数字を並べる前に、決め方の設計を語れるようにしておく。


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