入金は、事業が終わってから
補助金の話で最初につまずくのは、お金が入ってくる時期である。採択の通知が届いた時点では一円も振り込まれない。経費を自分で払い、事業が終わってから報告し、金額が確定してようやく入金される。精算払いと呼ばれるこの順番を知らずに資金計画を立てると、採択されたのに事業が回らないという事態になる。
国の補助金の手続きは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律が土台になっている。昭和30年に作られた法律で、申請から交付の決定、実績報告、返還までの一連の流れがここに定められている。自治体が独自に出す補助金はそれぞれの交付規則に従うが、組み立て方はこの法律を踏まえているものが多い。
段取りは次のように進む。どこで何が確定するのかを先に押さえておくと、途中で判断に迷わなくなる。
| 段階 | やること | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 公募 | 公募要領を読み、対象経費と上限を確かめる | 締切と受付開始日の両方を見る |
| 申請 | 事業計画と見積を出す | 電子申請はアカウントの準備が先 |
| 採択 | 採択通知を受け取る | この時点では権利が確定していない |
| 交付決定 | 交付申請を出し、決定の通知を受ける | 条件が付く場合がある |
| 事業の実施 | 発注と支払いを行う | 決定より前の発注は対象外 |
| 実績報告 | 完了後に報告書と証拠書類を出す | 期限は交付決定の通知に書かれている |
| 額の確定と入金 | 調査を経て額が確定し、振り込まれる | 使わなかった分は減額される |
準備にもっとも時間がかかるのはアカウント
締切の一週間前に慌てる人が多いのが、電子申請の入口である。国の補助金はデジタル庁が運営するJグランツからの申請が主流になっており、ここを使うには事業者向けの共通認証であるGビズIDのプライムが要る。無審査で作れるエントリーでは補助金の申請に進めない。
プライムの取得には審査がある。マイナンバーカードを読み取るオンライン申請なら審査は24時間体制で動くが、書面を郵送する方式だと最大1か月かかる。従業員に作業を分担させたい場合は、プライムの管理者がメンバーのアカウントを発行する形になる。見落としやすいのは有効期間で、プライムとメンバーは発行から2年3か月で切れる。前回の応募から間が空いていると、締切直前に失効に気づくことになる。
アカウントが整えば、印鑑証明書の提出や押印は不要になり、交付後の手続きも同じ画面で進む。詳しい区分はGビズIDの公式サイトで確かめられる。どこで何を探すかという前段の話は補助金と助成金はどこが違うのかで整理している。
交付決定より前の発注は、原則として対象外
採択と交付決定を同じものだと思っていると、ここで事故が起きる。法律では、申請があったときに書類の審査と必要に応じた現地調査を行い、法令や予算に違反しないか、事業の目的と内容が適正か、金額の算定に誤りがないかを調べたうえで交付の決定をすると定められている。決定には条件が付くこともあり、通知を受けて内容に不服があれば、定められた期日までに申請を取り下げることもできる。申請が届いてから決定までに通常かかる標準的な期間を定めて公表する努力義務も置かれているため、公募要領や所管省庁のサイトに審査期間の目安が載っていることがある。そこを読んでおけば、決定を待つ間にどこまで準備を進められるかの判断がつく。
補助の対象になる経費は、この決定を受けた後に発注し、支払ったものに限られるのが原則だ。設備の見積を取っただけなら問題はないが、注文書を出した日付が決定日より前だと、その経費は丸ごと自己負担に変わる。創業型の制度では開業日そのものが線になることもあり、地域起業の補助金では枠ごとに開業日の前後関係が決められている。
個人が受け取る制度にも似た線引きがある。移住支援金は転入後の一定期間内に申請する決まりがあり、奨学金の返還支援は就業と定住の年数を満たしてから交付が始まる。先に動いてしまうと要件に当てはまらなくなる点は、事業者向けと変わらない。
採択された後の報告が、金額を決める
事業が終わったら、成果を記した実績報告書に指定の書類を添えて提出する。年度をまたぐ事業では、国の会計年度が終わった時点でも同じ報告が必要になる。提出を受けた側は、書類の審査と必要に応じた現地調査によって、報告された成果が交付決定の内容と条件に適合しているかを調べ、適合すると認めたときに交付すべき額を確定して通知する。
つまり、申請時の金額は上限にすぎない。見積より安く調達できた分や、計画のうち実施しなかった部分は差し引かれる。逆に計画を超えて使っても上限は動かない。報告の内容が決定の条件に適合しないと判断された場合は、適合させるための措置を命じられることもある。
証拠書類は、見積書と発注書、納品書、請求書、振込の記録が揃って一組になる。現金払いや個人名義の口座からの支払いは、後から説明が難しくなるので避けたい。報告の期限は交付決定の通知に書かれているので、事業が終わる前に日付を確認しておく。手続きの全体像はe-Gov法令検索の条文で追える。
返すことになる場合と、その重さ
受け取った後も制度との関係は続く。補助事業者は、法令と交付決定の内容と条件に従い、善良な管理者の注意をもって事業を行う義務を負い、補助金を他の用途に使うことは禁じられている。これに違反したときは交付決定の全部または一部が取り消され、すでに交付されている分は期限を定めて返還を命じられる。
重いのは利息に相当する部分だ。取消によって返還を命じられた場合、受領の日から納付の日までの日数に応じて年10.95%の加算金を納めなければならない。納期日までに納付しなければ、未納付額について同じ年10.95%の延滞金が加わる。納付しない場合は、国税滞納処分の例により徴収される。
補助事業で取得した機械や建物など政令で定める財産は、承認を受けずに交付の目的に反して使ったり、譲渡や貸付、担保に供することができない。偽りその他不正の手段で交付を受けた者には5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、他の用途への使用には3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が定められている。制度を使って地域で事業を始める人にとって、ここは知らなかったで済む領域ではない。地域との関わり方から考えたい場合は、FLASPOのような接点を先に持つ選択もある。
よくある質問(FAQ)
Q. 採択されたら必ず満額もらえますか。
A. もらえない。交付される額は実績報告の後に確定するため、実際に支払った対象経費が少なければその分だけ減る。補助率が2分の1の制度で100万円使った場合、受け取るのは50万円という計算になる。
Q. 交付決定の内容に納得できないときは。
A. 決定の内容や付された条件に不服があれば、定められた期日までに申請を取り下げられる。取下げがあった場合、その申請に係る交付の決定はなかったものとみなされる。
Q. 事業の途中で計画を変えたくなったらどうしますか。
A. 自分の判断で変えてはいけない。交付決定には条件が付いており、内容の変更には承認が必要になる。事業を中止する場合も廃止の承認を受けてから実績報告を出す流れになる。
Q. 補助金で買った設備は自由に処分できますか。
A. できない。政令で定める財産については、承認を受けずに交付の目的に反して使ったり譲渡したりすることが禁じられている。耐用年数の途中で売却したい場合は、先に所管の窓口へ相談する必要がある。
Q. 自治体の補助金でも同じ手続きですか。
A. 根拠は各自治体の交付規則になるが、交付決定の前の着手を認めない点や、実績報告を経て額を確定する点は共通している。募集要項に書かれた手順を個別に確かめるのが確実だ。
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