年齢で線を引く制度と、経歴で線を引く制度
20代や30代で使える公的なお金を探すと、名前に「若者」と入った制度はほとんど出てこない。年齢の若さそのものを支給の条件にしている制度は少なく、実際には婚姻や移住といった出来事に紐づいて、結果として若い世代が対象になる設計が多い。
線の引き方は二通りある。こども家庭庁の地域少子化対策重点推進交付金を使う結婚新生活支援事業は、婚姻日における年齢が夫婦とも39歳以下、さらに上限額の区分では29歳以下という形で、年齢を直接の要件にしている。
これに対して内閣府の地方創生移住支援事業には年齢の条件がない。代わりに、移住直前の10年間で通算5年以上、直近1年以上は東京23区に在住または通勤していたという経歴が求められる。通算5年の勤務歴を積むには時間がかかるため、20代前半では要件に届かないことがある。年齢を書いていない制度のほうが、かえって若い人を外すことがある。
移住支援金は、世帯の形で金額が変わる
金額の設計を見ると、制度の狙いが読める。移住支援金の上限は世帯で最大100万円、単身で最大60万円である。これに加えて、18歳未満の子を帯同して移住する場合は、子ども一人あたり最大100万円が加算される。
| 制度 | 上限額 | 主な要件 | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 移住支援金(地方創生移住支援事業) | 世帯100万円/単身60万円+18歳未満の子1人あたり100万円 | 東京23区に通算5年以上の在住・通勤歴。転入後1年以内に申請 | 移住先の市町村 |
| 結婚新生活支援事業 | 60万円(夫婦とも29歳以下)/30万円(それ以外) | 夫婦とも婚姻日に39歳以下、夫婦の合計所得500万円未満 | 実施している市区町村 |
| 地方就職学生支援事業 | 交通費・移転費の支援(額は実施団体による) | 東京都内に本部を置く大学・大学院の学生で、地方へ就職する者 | 実施している地方公共団体 |
移住先での要件は四つのうちどれかを満たせばよい。道府県のマッチングサイトに掲載された求人への就業、テレワークで移住前の業務を続けること、市町村が関係人口として認める独自要件、そして地方創生起業支援事業の交付決定を1年以内に受けていることである。働き方を変えずに場所だけ変える道が残されている点が、この制度の特徴になる。
学生向けには、令和6年度に新設された地方就職学生支援事業がある。東京都内に本部を置く大学や大学院の学生が、地方の企業の就職活動に参加するための交通費を支援し、令和7年度の拡充で実際に移住する際の移転費も対象になった。在学中にしか使えない枠であり、卒業で線が切れる。
結婚新生活支援事業は、住んでいる市区町村で有無が決まる
婚姻にあわせた支援は、国が全国一律で配るのではなく、市区町村が実施したうえで国が費用の一部を交付金で負担する形をとる。国の基準では、夫婦の合計所得が500万円未満で、夫婦ともに婚姻日の年齢が39歳以下の新規に婚姻した世帯が対象になる。
上限は1世帯あたり、夫婦ともに29歳以下で60万円、それ以外は30万円である。対象となる費用は、住宅の取得費、リフォーム費用、住宅の賃借費用(家賃・敷金・礼金など)、引越費用に限られる。家具や家電は入らない。
国の補助率は、一般コースが2分の1、都道府県主導型市町村連携コースが3分の2と分かれている。つまり同じ県内でも、実施している市町村と実施していない市町村が並ぶ。住む場所を決める前に確かめる項目であり、婚姻届を出す時期がまたぐと年度の扱いが変わることもある。自治体が独自の要件や上乗せを加えている例もあるため、金額は国の基準と一致しない。
「補助金」と名のつくものには、落ちる可能性がある
同じ公的な資金でも、支給のされ方が違う制度が混ざっている。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の第2条は、補助金等を「補助金」「負担金」「利子補給金」「その他相当の反対給付を受けない給付金であつて政令で定めるもの」と定義している。返さなくてよい点は共通だが、配り方は制度ごとに設計される。
投資を促す補助金では、公募と審査という形がとられる。中小企業庁が2026年3月17日に公表した小規模事業者持続化補助金の第18回公募の採択結果では、申請17,318件に対し、外部有識者による審査を経て8,330件が採択された。半分近くが採択されない計算になる。
移住支援金や結婚新生活支援事業は、要件を満たしているかどうかで判定されるため、計画の優劣を競う審査は入らない。ただし予算の範囲内で支給されるので、受付が年度途中で終わることがある。落ちる可能性があるのか、早く動く必要があるのか、どちらの性格かを先に見分けておきたい。補助金と助成金の違いを整理した記事とあわせて読むと、系統ごとの違いがつかみやすい。
使われている量と、後から返す条件
制度が実際にどれだけ動いているかも判断材料になる。内閣府の交付実績では、令和元年度から令和7年度までの移住支援件数は14,378件、移住人数は30,557人である(令和8年3月末時点)。令和6年度は3,626件・7,829人、令和7年度は3,170件・6,771人で、年間3,000件台に落ち着いている。
7年で3万人という規模は、制度として定着している一方、全国の移動量から見れば限られた枠であることも示す。都道府県ごとの差も大きく、群馬県の累計1,152件に対し、大分県は52件にとどまる。住む先の自治体が実施していなければ、そもそも申請先がない。
見落としやすいのは返す側の条件である。移住支援金には返還制度があり、申請から5年以内に移住先から転出した場合や、虚偽の申請をした場合が対象になる。申請の時点で、5年以上継続して住む意思が求められている。地方移住の補助金をまとめた記事でも触れたとおり、受け取った額と移動の自由はここで交換されている。地域での仕事づくりに関心があるなら、FLASPOのような場で先に地域と関わってから制度を使う順序も選べる。
よくある質問(FAQ)
Q. 20代前半でも移住支援金は使えますか。
A. 年齢の条件はないが、経歴の条件がある。移住直前の10年間で通算5年以上、直近1年以上は東京23区に在住または通勤していることが必要なため、就職してすぐでは届かない。ただし東京圏に住みながら23区内の大学等へ通学し、23区内の企業に就職した場合は、通学期間も移住元としての対象期間に加算できる。
Q. 結婚新生活支援事業は誰に申請しますか。
A. 住んでいる市区町村である。国は交付金で費用の一部を負担する立場で、実施するかどうかを決めるのは市区町村になる。実施していない自治体では受け取れないため、婚姻前に窓口の有無と受付期間を確かめる必要がある。
Q. 複数の制度を同時に使えますか。
A. 制度の目的が違えば併用できる場合がある。移住支援金の就業等の要件には、地方創生起業支援事業の交付決定を1年以内に受けていることという選択肢が含まれており、起業支援と移住支援を組み合わせる形が制度側で想定されている。ただし同じ経費を二重に申請することはできない。地域起業の補助金の公募要領で、対象経費の範囲を先に確かめておきたい。
Q. 金額は毎年同じですか。
A. 変わる。移住支援金の子育て世帯加算は、令和5年4月1日より前の転入では子ども一人あたり30万円だったものが、以降は最大100万円に引き上げられている。制度の詳細や支給額は地方公共団体によって異なるとも案内されているため、前年の記事や解説をそのまま信じず、申請先の自治体の要綱で確かめるのが確実である。
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