NPOで活動するメリット|人材不足65.6%という需要側から数える

NPOで活動するメリット|人材不足65.6%という需要側から数える

自分の側から数えると、答えが出ない

「NPOで活動すると何が得られますか」と聞かれて、視野が広がる、社会課題に詳しくなる、仲間ができる、と並べたところで手応えは薄い。どれも否定しにくいが、確かめる方法がない。向きを変えて、受け入れる側が何に困っているかを数えてみると、話が具体的になる。足りていないものが自分の持ち物と重なるなら、それが入った意味になる。

内閣府は3年に一度、全国のNPO法人に実態調査をかけている。2023年度の調査は6,591法人を対象に行われ、2,937法人が回答した。回収率は44.6パーセントである。その中で、安定的な経営を行ううえで抱えている当面の課題を3つまで選ばせた質問がある。結果はきれいに上から詰まっていた。

抱えている課題(3つまでの複数回答) 認証法人(n=2,139) 認定・特例認定法人(n=701)
人材の確保や教育 65.6% 70.6%
後継者の不足 44.5% 45.9%
収入源の多様化 39.8% 54.8%
法人の事業運営力の向上 29.8% 33.5%
事業規模の拡充 17.5% 13.4%
一般向け広報の充実 15.3% 25.4%
外部の人脈・ネットワークの拡大 12.6% 14.8%

三分の二の法人が人手と育成に困っていて、四割強が後継者を見つけられていない。事業を広げたいという回答は2割以下である。拡大よりも、いまの活動を続ける人が見つからないという悩みが上に来ている。

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代表者の三分の二が60歳代以上という構成

後継者の不足が4割を超える背景は、代表者の年代を見ると一目でわかる。同じ調査で認証法人の代表者は、70歳代以上が38.9パーセント、60歳代が28.9パーセントで、合わせて67.8パーセントになる。認定・特例認定法人ではさらに高く72.5パーセントだ。n=2,208とn=718の分布である。

では若い代表者はどれだけいるのか。認証法人で20歳代は0.5パーセント、10歳代は0.0パーセント。30歳代まで広げても3.2パーセントにとどまる。認定・特例認定法人も20歳代0.8パーセント、30歳代1.5パーセントと同じ形をしている。学生の年齢で意思決定の側に立っている人は、統計上ほとんど存在しない。

この希少性は、入ったときの扱いに直接響く。珍しい世代が来たという扱いを受けるので、雑用だけで終わるか意見を聞かれるかは、最初の数回で決まることが多い。やってみたい役割を先に言葉にしておくほうが、間違いなく話が早い。

法律は、学生が意思決定に入ることを妨げていない

役割の話をすると、学生だから正式な立場には就けないと思い込んでいる人がいる。条文を読むと、そうではない。特定非営利活動促進法第20条は役員になれない者を列挙しているが、内容は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられて2年を経過しない者、暴力団の構成員等といったもので、年齢による制限は置かれていない。

同法第15条は役員として理事3人以上と監事1人以上を置くことを求め、第17条は「特定非営利活動法人の業務は、定款に特別の定めのないときは、理事の過半数をもって決する」と定める。理事になれば、頭数として意思決定に入る。第24条により役員の任期は2年以内で定款に定めることになっているので、在学中の期間に収まる長さだ。

社員の立場でも力はある。第14条の7は各社員の表決権を平等とし、第14条の3第2項は総社員の5分の1以上から請求があれば理事は臨時社員総会を招集しなければならないと定めている。年次が下だから一票が軽い、という仕組みにはなっていない。機関のつくりを自分の団体に当てて考えるなら、学生団体の組織図の整理が下敷きになる。

外の人を入れざるを得ない事情も条文に書かれている。第21条は、各役員について配偶者または三親等以内の親族が1人を超えて含まれてはならず、当該役員と親族を合わせた数が役員総数の3分の1を超えてもならないと定める。身内で席を埋める選択肢が封じられているわけだ。さらに第22条は、理事または監事のうち定数の3分の1を超える者が欠けたときは遅滞なく補充しなければならないと命じている。後継者の不足が4割を超えるという数字は、この補充義務と隣り合わせで動いている。

足りていない技能が、学生の持ち物と重なっている

人手が足りないといっても、どの手でもよいわけではない。企業などとの連携で強化したい分野を尋ねた質問では、認証法人が宣伝・広報を42.6パーセント、ITを23.0パーセント、マーケティングを17.8パーセントで挙げた。認定・特例認定法人では宣伝・広報59.4パーセント、IT42.5パーセント、マーケティング26.3パーセントと、いずれも水準が上がる。法務や人事は1割前後である。

この偏りは、デジタルの使用状況と符合する。ホームページやブログで活動内容を発信している認証法人は58.5パーセント、SNSで発信している法人は33.7パーセントにとどまる。デジタルツールを何も使っていない認証法人が12.0パーセント残っている。認定・特例認定法人はそれぞれ92.7パーセント、63.3パーセント、1.0パーセントで、差は大きい。

言い換えると、認証法人の三分の二はSNSでの発信をしていない。日常的に使っている道具をそのまま持ち込める領域が、そこに空いている。企業等の社員によるプロボノ等の技術支援を連携方法として挙げた法人は認証法人で14.4パーセント、認定・特例認定法人で28.9パーセントあり、外から技能を借りる発想自体は定着しつつある。ここに学生が入ると、成果が数字で残る。活動歴として説明できる形に整える道筋はボランティアはガクチカになるで扱った。

金銭と時間の損得も、正直に数えておく

メリットだけを並べるのは誠実ではないので、支出の側も見る。ボランティア参加者に何らかの形で還元している法人は、認証法人で52.5パーセント、認定・特例認定法人で60.8パーセント。内訳では食費・交通費・滞在費のいずれかを現金で支給する法人が26.1パーセントと40.1パーセント、謝礼として現金を支給する法人が19.2パーセントと21.7パーセントだった。逆に、現金や謝礼を一切支給しない認証法人が43.9パーセントある。

時間の負担も軽くない。ボランティアの活動日数が年50日以上だった法人は、認証法人の29.1パーセント、認定・特例認定法人の50.0パーセントを占める。各区分の中間値で平均すると認証法人50.6日、認定・特例認定法人86.0日になる。週に一度通う前提で組まれている現場が珍しくない、ということだ。

謝礼を受け取る場合は、無償の活動と有給の仕事の境目も意識したい。線の引かれ方はボランティアと有給活動の違いで整理したとおりである。報酬の面では法人側にも制約があり、同法第2条第2項第1号ロが「役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること」と定めている。実際に報酬を受ける役員数の中央値は0.0人だった。地域の課題に関わる進路を広く見ておきたい人は、FLASPOのような場で地域側の動きにも触れておくと比較の軸が増える。

よくある質問

規模の大きい法人を選んだほうが学べることは多いのか。実態調査では、特定非営利活動に係る事業の経常収益の中央値が認証法人で600.4万円、認定・特例認定法人で2,674.5万円だった。有給職員数の中央値は2.0人と5.0人、常勤に限ると1.0人と2.0人である。人数が少ないほど一人に任される幅は広くなるので、学びの量と組織の大きさは比例しない。

活動が履歴書に書ける形になるのは、どのくらいの期間からか。期間そのものに決まりはないが、先の活動日数の分布が目安になる。年50日以上関わっている層が3割前後いるという事実は、その程度の継続が珍しくないことを示している。何をどれだけ変えたかを数で言えるなら、短くても説明は成り立つ。

法人の信用度はどこで確かめるのか。認定または特例認定を受けているかは公開情報で判断できる。内閣府の認証・認定数の遷移では2026年8月31日現在で認証48,754法人に対し認定1,282法人、特例認定33法人とされており、認定側は全体の3パーセントに届かない。調査の原典は特定非営利活動法人に関する実態調査、条文はe-Gov法令検索で読める。


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