「毎年何人が地元に戻っているのか」に答えがない
地元の企業を受けるかどうか迷っている段階で、同じ選択をした人が何人いるのかを知りたくなる。進路の資料を探し、自治体のページを開き、統計の名前で検索しても、戻った人の人数には行き着かない。見つかるのは転入と転出の差だけで、そのなかに自分と同じ経路の人が何人混ざっているのかは書かれていない。
これは資料の探し方が悪いわけではない。国の統計には、Uターンという区分そのものが置かれていない。移動を記録する仕組みが住民票の異動を数える形になっているため、その人がどこで生まれ育ったかという情報を持たないのである。
だから進路を考えるときに使える数字は、別の形で探すことになる。どこへ人が動いているのかという全体の向き、どの年代でその動きが起きているのか、そして自治体が関係人口の施策で何を数えているのか。この三つを順に見ていけば、戻るという選択がどのくらい一般的なのかの輪郭はつかめる。
以下では、総務省と文部科学省が公表している最新の数値を並べる。そこから読み取れることと、読み取れないことを分けて置いておく。
記録されているのは転入と転出の差である
総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告は、住民票を移した人を集計する調査である。2025年の国内の市区町村間移動者数は519万548人、都道府県をまたいだ移動者数は251万5731人で、いずれも前年より0.3%減った。国外からの転入者数は78万2165人、国外への転出者数は40万9592人である。
この調査が持っているのは、移動した年の住所と移動前の住所だけである。東京の大学に通っていた人が実家のある県に住民票を移せば、それは東京都からその県への転入として一件記録される。生まれた場所も、通っていた学校も、就職先が地元企業かどうかも、集計表には現れない。
そのため、年代別の数字を見ても「戻った人」と「初めてその県に移った人」は区別できない。地方の県で二十代後半の転入が増えていたとしても、内訳がUターンなのか他県からの新規の移住なのかは、この統計の外にある。自治体が独自に移住相談の経路を集計している場合はそこで分かるが、全国を同じ基準で足した数値は存在しない。
出典は総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告2025年結果の要約である。人数を知りたいという問いに対しては、まずこの前提を置いてから次の数値に進むほうがよい。
2025年の人の動きはどこへ向かっていたか
向きだけなら、はっきり出ている。2025年に転入超過となったのは東京都、神奈川県、埼玉県など7都府県にとどまる。最も多いのは東京都の6万5219人で、拡大の幅が最も大きかったのは神奈川県の1089人だった。滋賀県は前年の転出超過から転入超過に転じ、山梨県は逆に転入超過から転出超過に変わっている。
国外との出入りを含めた社会増減で見ると、増加は23都道府県に広がる。東京都12万5457人、大阪府5万8524人、千葉県4万2629人という順で、増加幅が最も拡大したのは愛知県の9298人である。国内の移動だけを見るのと、国外からの転入を足すのとで、県の顔ぶれが変わる点は押さえておきたい。
| 圏域 | 2025年の転入超過数 | 前年との差 | 日本人移動者のみ |
|---|---|---|---|
| 東京圏 | 12万3534人の転入超過 | 1万2309人の縮小 | 11万2738人(30年連続) |
| 名古屋圏 | 1万2695人の転出超過 | 6161人の縮小 | 9561人の転出超過(13年連続) |
| 大阪圏 | 8742人の転入超過 | 6063人の拡大 | 7503人の転入超過(3年連続) |
| 3大都市圏の計 | 11万9581人の転入超過 | 85人の縮小 | 11万680人 |
東京圏への集中は縮んではいるが、向きは変わっていない。前年より1万2309人縮小した一方で、日本人の移動者で見ると30年続けて転入が転出を上回る。名古屋圏の転出超過が13年、大阪圏の転入超過が3年続いているのと合わせて、圏域ごとの傾向は年単位では動きにくいと読める。
出ていく側の数字は高校の卒業時点に出ている
戻る人数が分からない代わりに、出ていく時点の規模は分かる。文部科学省の学校基本調査の確定値によれば、令和7年3月に高校を卒業したのは955,335人で、そのうち大学と短期大学へ進んだのは586,639人、全体の61.4%にあたる。就職した人は131,522人で13.8%、これは過去最低の割合である。
進学率を過年度卒業者まで含めて見ると、高等教育機関への進学率は85.4%、大学の学部への進学率は58.6%になる。高校を出てすぐ働く人の割合が一割台まで下がった以上、地元で働き始める時期は多くの人にとって大学の卒業時へ移っている。
ここから先が統計に残らない部分である。進学先の所在地は学校の調査で分かるが、その人が四年後にどこで就職したかを追う全国調査はない。大学の就職状況の調査は就職率を測るもので、就職先の所在地と出身地を突き合わせた集計にはなっていない。
確定値は令和7年度学校基本統計の公表資料にある。自分の学年がどのくらいの規模で地元を離れたのかは、この進学者数から見積もるのが最も近い。
関係人口の調査が数えているのは自治体の取組である
地元と関わり続ける人という意味での関係人口も、人数の調査としては読み替えが必要になる。総務省は関係人口を、移住した定住人口でも観光に来た交流人口でもなく、地域や地域の人々と多様に関わる人々と位置づけている。この定義には、就職するかどうかは含まれていない。
内閣府が毎年行っている調査は、関係人口に取り組む自治体の側を数えたものである。令和7年度の調査は全1,788団体を対象に実施され、1,738団体から回答を得た。地方版総合戦略に関係人口の記載がある団体は1,328団体で、前年より37団体増えている。
つまり、関係人口の統計は受け皿の広がりを示す数値であって、関わった人がその後どこに住むかを追う設計ではない。学生が在学中に地域と関わった結果として地元で就職したとしても、その経路は国の集計には現れず、自治体の個別の記録に残るだけである。
定義は総務省の報道資料、調査結果は内閣府の令和7年度関係人口の創出・拡大に向けた取組状況調査にある。戻る前に地域と関わる段階では、FLASPOのような窓口を通して受け入れ側の担当者と話しておくと、記録が自分の手元に残る。
よくある質問
Uターン就職の人数を示した資料は本当に一つもないか。全国を同じ基準でまとめたものは見当たらない。民間の就職支援会社が利用者を対象に行う調査はあるが、母集団がその会社の登録者に限られるため、全国の規模としては読めない。
転入超過の数字から戻った人の数を推計できるか。できない。転入超過は転入と転出の差であり、同じ年に同じ県へ移った人が別の理由で来た場合も同じ一件に数えられる。差の内訳を分解する情報が元データにないため、推計の土台が置けない。
地元の就職状況を知りたい場合は何を見ればよいか。都道府県や市町村が出している人口ビジョンと総合戦略が最も近い。転入転出の内訳や年代別の増減を独自に集計している自治体があり、移住相談の件数を載せている例もある。国の統計より粒度が細かい。
関係人口として地域に関わった経験は、就職の場面で説明できるか。説明できる。ただし関係人口という言葉だけでは中身が伝わらないので、関わった期間、相手先の名前、自分が担った作業と結果を数字で書く。統計に出ない経路だからこそ、自分の記録が唯一の資料になる。
移動の統計はいつ更新されるか。住民基本台帳人口移動報告は月ごとの結果と年間の結果が公表され、前年の年間結果は翌年の初めに出る。進路の判断に使うなら、どの年のどの集計を見たのかを控えておくと、後から説明しやすい。
関連して、戻る前に確かめる順番はUターンで戻る前に確かめる移住の順番、過疎地域と若者の動きは過疎化と若者のUターン、関係人口の類型ごとの規模は関係人口のうちテレワーク型は182万人にまとめてある。
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