同じ呼び名の下に、性格の違う三つの取引が同居している
活動資金を集めたいと考えてページを開くと、どのサイトも似た見た目をしている。金額の目標があり、支援の口が並び、達成率が棒で伸びていく。だから一つの方法のように見える。
ところが法律から見ると、同じ画面の裏側で別の取引が走っている。お礼の品を渡すなら売買であり、見返りを渡さないなら贈与であり、株式や分配を約束するなら有価証券の募集になる。適用される法律も、受け取ったあとに残る税も、そこで入れ替わる。
この区別を先に押さえておかないと、集まった額の使い道を決める段階で手が止まる。リターンの原価を数えていなかった、贈与税の話を知らなかった、プラットフォームの審査に通らなかったという詰まり方は、どれも型の取り違えから来ている。
ここでは三つの型の違い、購入型で守る表示のルール、投資型が置かれている登録の世界、そして受け取った側に残るものという順に見ていく。
支援者との関係が、型の名前を決めている
分け方の軸は一つで、支援者が何を受け取るかである。何も受け取らないか、品物や体験を受け取るか、将来の金銭的な見返りを受け取るか。この三択がそのまま法律上の関係の名前になる。
| 型 | 支援者が受け取るもの | 法律上の関係 | 主に関わる法律 |
|---|---|---|---|
| 寄付型 | 受け取らない(活動報告のみ) | 贈与 | 相続税法・所得税法 |
| 購入型 | 品物・体験・掲載などのリターン | 売買または役務の提供 | 特定商取引法・消費税法 |
| 投資型 | 株式・分配金・利息 | 有価証券の取得または貸付け | 金融商品取引法 |
学生の企画で現実に選ばれるのは、ほぼ寄付型と購入型の二つである。投資型は、集める側が株式会社であることや事業計画の開示が前提になるため、サークルや実行委員会の形では入口に届かない。
寄付型と購入型のどちらにするかは、心意気ではなく手間で決まるところが大きい。購入型はリターンの原価と送料と発送の人手が要り、集まった額のうち手元に残る割合が下がる。寄付型は残る割合が高いかわりに、支援の動機を活動の内容そのものに置くしかない。
混ぜる形も取れる。1,000円の口はお礼のメールだけ、3,000円の口は現地の報告会への招待、5,000円の口は品物を送る。口ごとに性格が変わるので、原価の計算も口ごとに分けて行う。
購入型は通信販売なので、書く項目が決まっている
リターンを約束して支援を募る形は、画面越しに申し込みを受けて品物や役務を渡す取引である。つまり通信販売の形をしている。
特定商取引法第11条は、販売業者または役務提供事業者が通信販売をする場合の販売条件や提供条件について広告をするときに、広告に表示しなければならない事項を列挙している。販売価格または役務の対価(販売価格に送料が含まれない場合は販売価格および送料)、代金または対価の支払の時期および方法、商品の引渡時期または役務の提供時期、申込みの期間に関する定めがあるときはその旨および内容、申込みの撤回または解除に関する事項、そのほか主務省令で定める事項である。
同法第12条は誇大広告等を禁じており、商品の性能や役務の内容、申込みの撤回または解除に関する事項などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良または有利であると人を誤認させる表示をしてはならないと定めている。達成後の見通しを強く書きたくなる場面で、ここが線になる。
学生の単発の企画が条文上の販売業者に当たるかどうかは、継続性と営利性の見方で分かれる。ただし当たらない場合でも、この項目の並びは支援者が知りたいことの一覧としてそのまま使える。とくに引渡時期は、書かないまま募集を始めると後から必ず問い合わせになる。
埋められない欄があるなら、募集を始める時期が早い。発送の月が決まらないうちに口を開けると、集まった後に相手を待たせる構図になる。
投資型は登録が要る世界で、集められる額にも上限がある
将来の金銭的な見返りを約束する形になると、扱える事業者の範囲が法律で絞られる。金融商品取引法第29条の4の2は、第一種少額電子募集取扱業務のみを行う者についての登録の特例を置いている。同条第9項は第一種少額電子募集取扱業務を、上場されていない有価証券の募集の取扱いまたは私募の取扱いのうち、発行価額の総額と取得者が払い込む額が少額であるものとして政令で定める要件を満たすものと定義している。
その少額の中身は金融商品取引法施行令第15条の10の3にある。発行価額の総額として内閣府令で定める方法により算定される額が5億円未満であること、取得する者(特定投資家を除く)が払い込む額として算定される額が200万円を超えない範囲内において当該者の財産の状況に応じ内閣府令で定める額以下であることの二つである。
規模の実感も公表されている。日本証券業協会の株式投資型クラウドファンディングの統計情報によれば、2025年の取扱件数は80件で、うち成立したのは60件だった。扱った会員等の数は3社で、成立案件の目標募集額の合計は583,559,566円、発行価額の総額は1,875,475,764円である。2026年は8月末現在で31件のうち21件が成立している。
年に60件、会社の数で3社という世界である。購入型のサイトで日々並ぶ件数とは桁が違う。投資型を検討するかどうかの前に、この厚みの差を知っておいたほうがよい。
受け取った側に残るのは、手取りと申告の二つ
集まった額がそのまま使えるわけではない。プラットフォームの手数料と決済の手数料が引かれ、購入型ならリターンの原価と送料が出ていく。残った分に、型ごとの税の扱いが乗る。
寄付型で個人から受け取る場合は贈与の扱いになる。相続税法第21条の5は贈与税の課税価格から60万円を控除すると定めているが、租税特別措置法第70条の2の4第1項が特例として、平成13年1月1日以後に贈与により財産を取得した者については課税価格から110万円を控除すると定めている。実務で基礎控除110万円と言われるのはこの特例のことである。
法人から受け取る場合は贈与税ではなく所得税の側に移る。所得税法第34条第1項は一時所得を、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務または資産の譲渡の対価としての性質を有しないものと定義している。同条第3項は一時所得の特別控除額を50万円としている。
購入型は品物や役務の対価なので、一時所得ではなく事業や雑の所得として扱われ、原価や送料を費用として引ける。どの型でも、集めた額と使った額の記録が無ければ申告の形が作れない。入金の明細、手数料の明細、リターンの購入の領収書を同じ場所にまとめておく。
催しの収入源として他の手段と並べて比べる視点は学園祭の収入源を並べる|模擬店・協賛・助成と税の線引きに、集まった後の帳簿の付け方はサークルの会計|収益事業34業種の線引きと部費を守る帳簿の作り方にまとめてある。主催の形態と責任の所在から整理する話は学生イベントとは何か|主催の形態と責任の所在から整理するが近い。
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よくある質問
目標額に届かなかったらどうなりますか。方式によって変わります。達成したときだけ入金される形と、集まった分だけ受け取る形があり、前者は不成立なら支援者に返金されます。どちらの方式で募るかを、企画の最低必要額と照らして先に選んでください。
手数料はどのくらい引かれますか。サイトによって幅がありますが、決済手数料を含めて二割前後が引かれる想定で計算しておくと見込みが外れにくくなります。目標額は、必要額を0.8で割った金額から考え始めてください。
学生でも使えますか。多くのサイトは成人であることや本人確認を条件にしており、未成年は親権者の同意を求められます。団体の口座で受け取れるかどうかも審査の対象になるので、口座の名義を先に確認しておくほうが早いです。
リターンを送らなかった場合はどうなりますか。約束した品物や役務を渡さないことは契約の不履行なので、返金を求められます。送る自信のない口は最初から作らないでください。達成が目的化すると、ここでつまずきます。
活動報告はどこまで出すべきですか。使い道の内訳と、できなかったことを書いてください。良い報告だけを並べると次の募集で信用が効かなくなります。使い切れなかった額が出た場合も、残した理由と次の使途を書いて公開するほうが後が楽になります。
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