働き始めても、生活費の担い手は半分しか入れ替わらない
初任給が振り込まれた月から家計が自分のものになる、という筋書きは、調査の数字では半分しか当たらない。国立社会保障・人口問題研究所の「2022年 生活と支え合いに関する調査」は、学校を出て最初の仕事に就いたときの生活費用を誰が担っていたかを尋ねている。回答した15,174人のうち「自分」と答えたのは54.4%で、男性65.2%、女性44.5%だった。
同じ時点で「父親」を挙げた人は男性35.4%、女性51.8%、「母親」は男性15.4%、女性22.3%である。複数回答なので合計は100%を超えるが、女性では父親の割合が自分より高い。一方で「祖父母」1.3%、「きょうだい」2.8%、「配偶者」3.2%、「公的支援」0.1%はいずれも小さく、就職の時期に家計を支えているのは実質的に本人と両親の3者に絞られる。
15歳の頃に「自分」と答えた人は7.1%しかいない。そこから初職時の54.4%へ跳ね、親と初めて別居した時点で60.2%、現在では66.0%になる。就職はこの階段のうち最も段差が大きい一段だが、一段で登り切る出来事ではない。卒業者の人数と就職者の割合そのものは新卒就活の動向で扱った。
最初に就いた職の種類で、親が降りる早さが変わる
同じ「就職」でも、入った先によって家計の様子はかなり違う。同調査は初職の仕事内容別に生活費用の担い手を集計している。全体で54.4%だった「自分」は、保安の職業では75.3%、管理的職業では71.4%まで上がり、農林漁業の職業では38.5%まで下がる。農林漁業では代わりに「父親」が50.9%と最も高く、「配偶者」も8.3%を占めた。家業を含む働き方では、家計と仕事が初めから重なっている。
| 初職の仕事内容 | 「自分」が担い手 | 「父親」が担い手 |
|---|---|---|
| 保安の職業 | 75.3% | 16.4% |
| 管理的職業 | 71.4% | 32.0% |
| 輸送・機械運転の職業 | 67.7% | 34.9% |
| 専門的・技術的職業 | 65.7% | 38.6% |
| 建設・採掘の職業 | 58.2% | 40.4% |
| 運搬・清掃・包装等の職業 | 49.1% | 47.3% |
| 農林漁業の職業 | 38.5% | 50.9% |
表に入らなかった職種では、販売の職業58.6%、サービスの職業57.0%、事務的職業43.5%という並びになる。事務的職業は「自分」の割合が低く、かつ父親を挙げる割合がとくに高いと報告されている。雇われ方でも差は出る。正規の職員・従業員では「自分」59.3%、「父親」45.1%、「母親」18.5%だが、パートでは「自分」38.9%、「父親」47.2%、「母親」23.2%、さらに「配偶者」15.1%となる。
つまり就職という一語の中に、収入で親を降りさせる入口と、親の支えを前提に続く入口が同時に入っている。初職の形が後の家計の形をある程度決めるため、就職先の選び方は家族関係の設計にも関わってくる。地方で働く場合の家族との距離については地方就職と家族の関係でも整理した。
就職しても、7割は親と同じ家にいる
家計が親から離れていく一方で、住まいは離れていない。同研究所が2026年9月に公表した「第17回出生動向基本調査」によると、18〜34歳の未婚者で両親または父母のいずれかと同居している割合は男性66.6%、女性68.3%だった。男性は前回調査から横ばい、女性は2015年以降下がり続けており、男女の差は縮んでいる。
分かれ目は働き方である。従業上の地位別に見ると、正規の職員と派遣・嘱託等では男女とも同居割合が低下した。パート・アルバイトや自営業主等、学生、無職・家事では、小幅な変動はあるものの同居割合の高い状態が続いている。家賃を自分の収入で払えるかどうかが、そのまま同居か別居かに出ている。
その前提となる雇用の側も動いている。25〜34歳の未婚者のうち学校を出た時点で正規の職員だった割合は、2010年調査の男性57.2%・女性56.2%を底に上がり、今回は男性64.3%・女性68.1%になった。女性は前回から6.6ポイント増え、パート・アルバイトは5.6ポイント減っている。就職の質が上がれば親元を出る人は増えるはずだが、同居割合の下がり方はそれより緩やかである。
「自分」が担い手にならないまま残る層がある
就職の効果は、男女で違う形のまま定着する。2022年調査で現在の生活費用の担い手を聞くと、回答者15,929人のうち「自分」は66.0%だが、男性82.3%に対して女性51.4%である。「配偶者」は男性20.1%、女性50.4%で、ここが入れ替わっている。「父親」9.2%、「母親」6.6%、「子ども」4.9%、「公的支援」2.8%という順で、親はまだ完全には消えない。
年齢で追うと動きがはっきりする。男性は20〜24歳の40.6%から25〜29歳の78.8%へ一気に上がり、65〜69歳の90.5%までほぼ単調に伸びる。女性も20〜24歳の40.5%から25〜29歳の59.4%へ上がるが、ピークは30〜34歳の63.6%で、40代以降は50%前後で横ばいになる。就職直後は男女ともよく似た位置にいて、そこから先で道が分かれる。
この分かれ方は、就職の成否というより、結婚と出産をはさんだ働き方の変化を映している。何かあったときに相談できる相手として家族を挙げる人が多いことは人間関係と若者で見たとおりで、家計の面でも同じ関係が長く続く。
家族の世話が、働き続ける条件を狭める
就職をめぐる家族の役割は、支える側だけではない。総務省の「令和4年就業構造基本調査」によると、ふだん家族の介護をしている人は628.8万人で、そのうち有業者は364.6万人だった。介護をしている人に占める有業者の割合は58.0%で、5年前より2.8ポイント上がっている。男性67.0%、女性52.7%という差があり、50〜54歳では男性88.5%、女性71.8%まで届く。
若い層も無縁ではない。30歳未満で介護をしている人は20.5万人、そのうち有業者は13.1万人である。30代では28.9万人のうち21.8万人が働いている。進路や就職先を決める時期に家族の世話が重なる人が、この規模で存在している。
仕事を手放す側の数も押さえておきたい。介護・看護のために調査年の直近1年間に前の職を離れた人は10.6万人で、2017年の9.9万人から0.7万人増えた。うち女性が8.0万人を占め、離職後に無業のままの人が8.3万人いる。2007年から2017年までは減り続けていた数が、増加に転じている。就職の入口を広げる話と、いちど就いた仕事を手放さずにすむ条件を整える話は、同じ家族関係の両側にある。働き方と住む場所を一緒に考える支援はFLASPOでも扱っている。
よくある質問
就職したら親からの援助はすぐ止まるのか。初めて職に就いた時点で「父親」を生活費用の担い手に挙げた人は男性35.4%、女性51.8%である。止まる人も続く人も相当数いて、どちらが普通とは言いにくい。援助の有無で焦る必要はないが、いつまで続けるかを早めに話しておくほうが後の摩擦は少ない。
親元に住んだまま働くのは不利なのか。18〜34歳の未婚者では男性66.6%、女性68.3%が親と同居しており、多数派である。ただし正規の職員と派遣・嘱託等では同居割合が下がっているため、同居が続く層には非正規や無職が相対的に多く含まれる。住まいの選択そのものより、その背景にある雇用の形に目を向けたほうがよい。
介護をしながら就職活動はできるのか。30歳未満で介護をしている20.5万人のうち、13.1万人が有業者である。働きながら介護をしている人の割合はこの年齢層で63.6%にあたる。介護休業や短時間勤務の制度は入社後に使うものなので、選考の段階では勤務地と勤務時間の融通を先に確かめるのが実務的である。
家業を継ぐ場合はどう数に出るのか。初職が農林漁業だった人は「自分」が38.5%、「父親」が50.9%、「配偶者」が8.3%という複数回答の結果になる。雇われて働く職種とは担い手の構成がまったく違い、家計と事業が分離していない状態がそのまま現れる。収入の実額だけでなく、生活費がどこから出ているかを見ないと実情はつかめない。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
