「人がいなかった」という説明を数字で確かめる
計画どおりに進まなかった地域の事業を振り返ると、原因の説明はたいてい人に行き着く。担当が1年で替わった、専門の知識を持つ職員がいなかった、外から来た事業者に任せきりだった。こうした話は現場では共有されているのに、検証の資料には残りにくい。残らない理由のひとつは、人材が足りないという主張を裏づける数字が、意外と使われていないことである。
地方公務員の数は毎年の定員管理調査で全国から集められている。令和7年4月1日現在の総職員数は280万9,298人で、前年から2,451人の減少。最も多かった平成6年の328万2,492人からは47万3,194人、14.4パーセント減っている。報道でよく引かれるのはこの全体の数字だが、地域の事業の成否に効くのはもっと細かい区分のほうである。
団体区分で分けると、都道府県が142万8,860人で50.9パーセント、市町村等が138万438人で49.1パーセント。市町村等は前年から783人増えている。全体が減っているのに市町村の職員は微増という形で、人員の総量だけを見ると「足りない」という説明はむしろ通りにくい。
平成6年を100としたとき、企画開発は101.9
同じ調査には、部門別の職員数を平成6年を100とした指数で並べた資料がある。ここが人材不足の正体を切り分ける材料になる。
| 分野 | 平成6年を100とした令和7年の指数 |
|---|---|
| 防災 | 374.9 |
| 児童相談所等 | 334.2 |
| 福祉事務所 | 180.0 |
| 観光 | 175.5 |
| 企画開発 | 101.9 |
| 総務一般 | 88.6 |
| 清掃 | 43.6 |
防災は3.7倍、児童相談所等は3.3倍、福祉事務所と観光は1.8倍に増えた。一方、地域の計画づくりや事業の立ち上げを担う企画開発は101.9で、30年あまりで1.9パーセントしか増えていない。総務一般は88.6まで減っている。
どこが担うのかも区分で分かれている。市町村等では職員71万1,463人が一般行政部門に属し、全体の51.5パーセントを占める。対して都道府県の一般行政部門は23万9,165人で16.7パーセントにすぎず、残りは教育と警察と消防と福祉である。地域の事業を実際に動かす人は市町村の側に集まっており、企画開発の横ばいが効くのもこちらになる。
部門別に平成6年と比べると、教育は128万1,001人から106万7,557人へ16.7パーセント減、公営企業等会計部門は42万7,448人から33万8,306人へ20.9パーセント減。逆に警察は12.8パーセント、消防は14.2パーセント増えている。減った部門と増えた部門がはっきり分かれており、総量の減少はおもに教育と公営企業の縮小で説明がつく。
一般行政部門の全体は平成6年の117万4,514人から令和7年の95万628人へ、19.1パーセント減った。ただし平成27年以降は11年連続で増加しており、減少は集中改革プランの時期までの話である。増えた分は防災と児童福祉と観光に向かい、企画の部署は横ばいのまま置かれた。地方創生の計画を書き、交付金を申請し、効果を検証する仕事は、この横ばいの人数で引き受けられてきた。
足りない分は国が人を送って埋めている
企画の人数が増えないまま仕事が増えた分を、国は人を送ることで埋めてきた。地方創生人材支援制度は平成27年度に始まり、国家公務員や民間企業の社員を副市町村長や幹部職員、アドバイザーとして市町村に派遣する枠組みである。令和9年度派遣に向けて公表された全体概要によると、延べ915名が送られている。
年度ごとの人数は、平成27年度69名、平成28年度58名、平成29年度55名、平成30年度42名、令和元年度34名と減り続け、そこから令和2年度57名、令和3年度88名、令和4年度106名、令和5年度91名、令和6年度118名、令和7年度103名、令和8年度94名と増えた。全国に1,700を超える市町村があることを考えると、年100名前後という規模は特定の団体に行き渡る量ではない。
対象の条件も狭い。国家公務員の派遣は原則として人口10万人未満の市町村、民間専門人材は指定都市を除く市町村が対象で、デジタルとグリーンの専門人材だけが都道府県や指定都市、特別区にも開かれている。期間は国家公務員が原則2年、民間専門人材が原則半年から2年で、3者の合意があるときに限って1年の延長ができる。給与は国家公務員の場合は受け入れる市町村の負担になる。
派遣の中身は入れ替わり、大学研究者は消えた
915名の累計を区分で割ると、制度の性格が変わってきたことがわかる。国家公務員316名、デジタル専門人材375名、各種専門人材143名、グリーン専門人材47名、大学研究者34名である。最大の区分はデジタル専門人材で、令和2年度に追加されてから6年で375名に達した。
対照的に縮んだのが国家公務員と大学研究者である。国家公務員は平成27年度と平成28年度の42名から、令和8年度は16名まで減った。大学研究者は制度の初年度に15名が送られたあと一桁に落ち、令和7年度は0名、令和8年度は人数欄に記載がない。地域の調査や分析を担える研究者を行政の内側に置く経路は、実質的に閉じている。
この入れ替わりは、地域で起きる失敗の形を変える。デジタルの専門人材が増えればシステムの導入や基盤整備は進むが、事業の設計そのものや効果の検証を誰が担うのかという問いは残る。検査報告に失敗が記録されない構造は地方創生の失敗はどこに記録されるか|検査報告が示した759団体の未公表で扱った。検証を書く人がいないことと、検証が公表されないことは、同じ場所でつながっている。
人材を原因に置くときに切り分けること
ここまでの数字を踏まえると、人材不足という説明は3つに分けて考える必要がある。1つ目は量の不足で、市町村等の職員は微増しており全体の量としては成り立ちにくい。2つ目は配置の偏りで、増員は防災と児童福祉と観光に向かい、企画開発は30年で1.9パーセント増にとどまる。3つ目は期間の短さで、派遣される人材の在任は原則2年、延長しても3年である。
このうち地域の事業に直接響くのは2つ目と3つ目である。計画を5年で組みながら担い手が2年で替われば、引き継ぎのたびに前提が流れる。交付金のKPIが運用されない理由をたどった補助金頼みの地方創生はなぜ続かないのか|交付金KPIが示す境目や、1,519団体の回答から計画の実態を見た国の戦略を写した10年|1,519団体の回答に出た計画と交付金の重さと並べると、計画と人の任期の長さが合っていないことが見えてくる。
外から関わる側にとっても、ここは実務に直結する。担当者が替わる前提で引き継ぎ資料を残す、庁内の企画部署ではなく事業の所管課と直接話す、成果を単年度で区切って記録する。地域と人をつなぐFLASPOの立場から見ても、相手の人数と任期を先に測っておくほうが、同じ失敗を繰り返さずに済む。
よくある質問
自治体の職員は減っているのではないのですか。全国の総職員数は平成6年から14.4パーセント減っているが、市町村等に限ると令和7年は前年比で783人の増加だった。一般行政部門も平成27年以降は11年連続で増えている。減少が続いたのは集中改革プランの時期までで、現在の局面は横ばいに近い。
企画開発の指数101.9は何を意味しますか。平成6年の職員数を100としたときの令和7年の水準で、職員数がほぼ変わっていないことを示す。防災の374.9や観光の175.5と比べると、増員の対象から外れてきた部門だと読める。
地方創生人材支援制度はどこに申請するのですか。市区町村は都道府県を経由して申請する形で、締切は都道府県ごとに設定される。例年9月初旬に募集が始まり、10月中旬に申請、2月末までにマッチング協議という流れで、3月中下旬の壮行会を経て4月から派遣が始まる。
総務省の地域活性化起業人とは併用できますか。民間専門人材が地域活性化起業人の要件を満たす場合に限り、併用が可能だと制度の概要に明記されている。制度ごとの対象団体や任期の条件が異なるため、組み合わせる前に両方の要綱を確かめる必要がある。
出典:総務省「令和7年地方公共団体定員管理調査結果の概要」(令和7年12月、令和7年4月1日現在)、内閣官房・内閣府「地方創生人材支援制度」および同ページ掲載の全体概要。
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