全国平均6.7人に対して、この町は24人
協力隊の人数を市町村ごとに眺めていると、規模の割に突き出た町が見つかる。茨城県の南西端にある境町がそれで、総務省の集計では令和6年度に24人の隊員が活動していた。全国の隊員7,910人を取組自治体1,176団体で割ると1団体あたり6.7人なので、平均の3倍を超える受け入れになる。
町の人口は令和8年7月1日時点で23,851人、世帯数は9,597世帯である。面積は46.59平方キロメートルと狭く、人口密度は1平方キロメートルあたり511.9人。人口2万人台の町が20人を超える外部人材を抱えている状態は、関東の平地にある自治体としては珍しい。
茨城県が公表している最新の一覧では、令和8年4月1日現在の県内の隊員は168人で、境町は22人。市町村としては県内で最も多い。担当課は総務課で、企画や観光の部署ではなく庁内の中枢が窓口になっている点も、この町の受け入れ方を示している。
30年で3千人減り、1年で204人減る町
なぜそれだけの人手を外から入れているのかは、人口の推移を追うと見えてくる。国勢調査の数字は昭和60年に26,297人、平成2年に26,922人と伸び、平成7年の27,237人が頂点だった。そこから平成12年に27,171人、平成17年に26,468人、平成22年に25,714人、平成27年に24,517人、令和2年に24,201人と下がり続け、ピークから3千人が消えた計算になる。
減り方の内訳はさらに厳しい。令和6年の出生数は116人、死亡数は320人で、自然減が204人である。年齢構成は令和7年10月1日時点で15歳未満が12.1%、15歳から64歳が57.9%、65歳以上が30.0%。働き手の世代が6割近くを保っているうちに手を打たなければ、次の10年で構成が崩れる位置にいる。
財政の体力も限られている。令和6年度の財政力指数は0.67で、自前の税収だけでは行政をまわせない。産業別の就業人口は令和2年の数字で第1次が7.45%、第2次が36.79%、第3次が55.75%。農業の町というより、工業と商業で食べている平地の町である。
経済の規模も押さえておきたい。製造品出荷額等は令和5年に1,206億円、年間商品販売額は令和2年に445億円。1人当たりの市町村民所得は令和5年度で3,562千円である。働く場がないわけではないが、町の外へ通う人を抱えたまま人口が減っている構図で、担い手を町の中に増やす必要がある。
99億円の寄付が人を雇う余地を作った
24人分の人件費はどこから出ているのか。隊員1人あたりの活動に要する経費には特別交付税措置があり、令和7年度の上限は550万円、うち報償費等が350万円、その他活動経費が200万円である。これに加えて募集等に1団体350万円、日々のサポートに1団体200万円までの枠がある。
ただし交付税措置は後から入る仕組みで、先に動くお金は町が用意する必要がある。境町の場合、その余地を作ったのがふるさと納税だった。総務省の現況調査によると令和5年度の受入額は9,938百万円、件数は659,070件で、全国で11番目に多い団体に並んでいる。歳入の規模は令和6年度決算で27,731百万円なので、寄付が町の財政の中で大きな位置を占めている。
自前の税収が弱くても、寄付と交付税措置を組み合わせれば外部人材を厚く置ける。これは制度の裏をかいた話ではなく、用意されている枠を上限まで使った結果である。人口11万人の唐津市に2人という配置と並べると、同じ制度でも自治体の財源の作り方で人数がまるで変わることがわかる。
県内の受け入れは、少数の自治体に寄っている
茨城県全体では令和6年度に177人、30団体が隊員を受け入れていた。県内44市町村のうち3分の2ほどは手を挙げていないことになる。令和8年4月1日現在の一覧を人数順に並べると、上位の数団体に偏っている形がはっきりする。
| 受入団体(令和8年4月1日現在) | 隊員数 |
|---|---|
| 茨城県(県北振興局) | 25人 |
| 境町 | 22人 |
| 下妻市 | 12人 |
| 城里町 | 11人 |
| 美浦村 | 11人 |
| 稲敷市 | 8人 |
| 筑西市 | 7人 |
| 石岡市 | 6人 |
| 潮来市 | 6人 |
| 河内町 | 6人 |
| 利根町 | 6人 |
| 桜川市 | 5人 |
上位の顔ぶれを見ると、県北の山間部と県西・県南の平地が混ざっている。境町や下妻市、美浦村、河内町、利根町は利根川沿いの平地で、条件不利地域という言葉から連想される山村とは違う。協力隊は過疎地だけの制度と思われがちだが、実際には平地の町が人数の上位に入っている。
受け入れ数が多い自治体ほど、庁内に受け皿を作る手間をかけている。境町が総務課を窓口にしているのは、特定の事業に紐づけず町全体の仕事として配分する形に近い。1人を観光課に置いて終わる体制と、20人を部署横断で動かす体制では、必要な調整の量が違う。
残るかどうかは、茨城では3人に2人
人数を増やしても、任期の後に出ていけば町に残るものは少ない。総務省が令和8年4月24日に公表した調査では、令和2年度から令和6年度までに任期を終えた隊員8,762人のうち、70.3%にあたる6,163人が同じ地域に定住していた。茨城県はこの5年間で150人が任期を終え、99人が残って66.0%である。
全国より4ポイントほど低いが、極端に悪い数字でもない。都市圏に近い県は任期後の選択肢が多く、通勤圏に出ても生活が成り立つため、定住率は下がりやすい。境町から東京都心までは高速バスで結ばれており、残るか出るかの判断が山間部とは違う条件で行われる。
定住した隊員の進み先は、全国の集計では起業が45.6%、就業が34.8%、就農・就林が11.6%となっている。平地で工業と商業の比重が大きい町では、就農より起業や就業の道が現実的に見える。任期後の進路の分かれ方を確かめてから応募先を選ぶほうが、着任後の見通しが立てやすい。
地域に関わる働き方を探している学生や社会人には、人数の多い自治体は選択肢が広い反面、競争も起きる場所になる。FLASPOでも地域の仕事を取り上げているが、何人の中の1人になるのかを先に数えておくと、任期の使い方を決めやすくなる。
よくある質問
境町の協力隊について、資料から答えられる範囲の質問を集めた。
24人と22人のどちらが正しいのかという疑問が出やすい。24人は総務省が令和6年度の活動実績として集計した数、22人は茨城県が令和8年4月1日現在の在籍として公表した数である。基準日が違うので矛盾ではなく、任期満了と新規着任で人数は年度をまたいで動く。
募集はどこで確認できるかという点では、町の担当課が総務課であることが手がかりになる。県の一覧にも担当課が載っているため、問い合わせ先を調べるには町の公式サイトと県のページの両方を見るのが早い。募集時期は団体ごとに異なり、通年で受け付ける自治体もある。
報酬がいくらになるかは町が決める。国の枠は報償費等で年350万円が上限だが、これは措置の上限で支給額ではない。任用形態が会計年度任用職員か業務委託かでも手取りの考え方が変わるので、募集要項の記載を確認する必要がある。
人数が多い自治体を選ぶ利点は、同期や先輩の隊員が庁内にいることである。孤立しにくく、前例をたどれる。一方で1人に任される裁量は小さくなりやすく、自分の企画を通したい人には窮屈に感じる場合もある。どちらが向くかは、任期中に何を作りたいかで変わる。
住民票を移す必要があるかという確認も欠かせない。協力隊は都市地域から条件不利地域等へ住民票を異動し、生活の拠点を移した人を自治体が委嘱する仕組みである。通いで関わる働き方を探しているなら、住民票を動かさずに済む地域活性化起業人の副業型など、別の制度を見るほうが条件に合う。
出典
県内の隊員数と担当課は茨城県「県内の地域おこし協力隊の状況について」、人口や財政の数値は茨城県「市町村のすがた(境町)」による。令和6年度の隊員数と市町村別の内訳は総務省「令和6年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」、定住率は総務省「地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」、財政措置は総務省「地域おこし協力隊について」から取った。ふるさと納税の実績は総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)」による。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
