卒業後の進路は、大きく五つに分かれている
任期の終わりが見えてくると、先に卒業した人たちが何を選んだのかが急に気になりはじめる。この問いには、推測ではなく集計で答えられる。総務省は令和2年度から令和6年度までの5年間に任期を終えた8,762人を追跡し、令和7年5月1日時点の居住地となりわいを公表している(令和7年度における地域おこし協力隊の活動状況等・総務省)。
このうち活動した市町村にそのまま住み続けた5,038人について、何で生計を立てているかが分類されている。分け方は起業、就業、就農・就林、事業承継、その他の五つだ。さらに全体の23.0%にあたる2,013人は地域を離れており、これを加えると卒業後の行き先は実質的に五つの道に整理できる。割合を先に頭に入れておくと、自分がどの道の準備をしているのかが見えやすくなる。なお内訳には「その他」181人と「不明」155人が含まれており、進路が追えなかった人も一定数いる。割合はあくまで把握できた範囲のものとして見ておきたい。
| 同一市町村に定住した人のなりわい | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 起業 | 2,296人 | 45.6% |
| 就業 | 1,753人 | 34.8% |
| 就農・就林 | 583人 | 11.6% |
| 事業承継 | 70人 | 1.4% |
| その他 | 181人 | 3.6% |
| 不明 | 155人 | 3.1% |
| 合計 | 5,038人 | 100% |
いちばん人数が多いのは、起業という道
五つのなかで最多は起業で、2,296人、45.6%を占める。公的な制度を使って地域に入った人の半数近くが自分で商いを始めている、という数字は他の移住施策にはあまり見られない。背景には、活動そのものが仕事の下地になりやすいという事情がある。地場産品の開発や販路づくり、観光案内、空き家の活用といった活動は、委嘱が切れた後もそのまま事業の形に移しやすい。
分野にははっきりした偏りがある。飲食サービス業が308人で最も多く、美術家やデザイナー、写真家、映像撮影者が217人、宿泊業が181人と続く。小売業174人、観光業130人、生産から加工・販売までを手がける6次産業101人も目立つ。出版・広告業80人、集落支援や地域ブランドづくりを請け負うまちづくり支援業80人も並ぶ。元手が小さく、地域の素材や空間をそのまま使える業種が多いことが分かる。数字には準備中の人も含まれているため、開業届を出した時点で数えられていると考えてよい。使える支援の枠や時期については地域おこし協力隊の起業支援とは?補助金と任期後の独立を整理に詳しい。
雇われて残る人の受け皿は、行政関係が最多
起業に次ぐのが就業で1,753人、34.8%にあたる。どこに雇われているかを見ると、最も多いのは自治体職員や議員、集落支援員といった行政関係の480人である。活動を通じて役場の仕事の流れを知っている人材は採用側にとっても扱いやすく、任期中の実績がそのまま評価につながりやすい。ただし採用の枠は通常の手続きで決まるため、空きがあるかどうかは運の要素も残る。会計年度任用職員のように一年ごとの契約で入る形もあり、就業と書かれていても雇用の安定度はひと通りではない。
| 就業した人の主な業種 | 人数 |
|---|---|
| 行政関係(自治体職員・議員・集落支援員等) | 480人 |
| 観光業(旅行業・宿泊業等) | 176人 |
| 農林漁業(農業法人・森林組合等) | 138人 |
| 地域づくり・まちづくり支援業 | 99人 |
| 教育業 | 78人 |
| 医療・福祉業 | 72人 |
| 製造業 | 58人 |
| 小売業 | 53人 |
観光業176人、農林漁業138人という並びからは、活動分野と就職先が地続きになっていることが読み取れる。教育業78人や医療・福祉業72人のように、資格を持ち込んだ人が地域で働き続ける例もある。どの分野で活動すると何につながるのかは地域おこし協力隊の仕事内容とは|活動分野・1日の流れ・実態と並べて読むと見通しが立つ。
担い手として引き継ぐ、就農・就林と事業承継
三番目に多いのが就農・就林の583人、11.6%である。内訳は農業477人、林業54人、畜産業20人、漁業・水産業12人で、準備中や研修中の人も含まれている。農地や機械を手当てするには時間がかかるため、任期の一年目から農家のもとで修行を始める人が多い。収入が安定するまでの数年をどう支えるかが、この道のいちばんの関門になる。畜産業20人や漁業・水産業12人が少ないのは、設備や漁業権の壁が高く、新しく入りにくいからだ。6次産業として加工と販売まで手がける人が一定数いるのは、作るだけでは値段が付きにくいという現実への答えでもある。
数としては小さいが、事業承継を選んだ人が70人いる。伝統工芸の技や民宿、飲食店を、辞めようとしていた人から引き継ぐ形だ。新しく始めるより設備や顧客が残っている一方、受け継ぐ相手との信頼ができていなければ話は動かない。任期中に通い続けた関係がそのまま事業の引き継ぎに変わるという点で、協力隊という立場が効きやすい進路でもある。空き家や空き店舗の改修に自治体の枠が使える場合もあるので、担当課に早めに当たっておきたい。
地域を離れた2,013人が教えてくれること
五つ目の道は、その土地を離れるという選択である。8,762人のうち2,013人、23.0%は他の地域へ転出した。この数字を失敗と読む必要はない。注目したいのは、転出した人のうち228人が、移った先からも活動地と関わりのある地域協力活動などに従事していたという点だ。住む場所を移しても関係が切れていない人が一定数いる。
離れる理由は家族の事情、医療や教育の条件、仕事の見通しなど生活側にあることが多い。定住率は都道府県でも差があり、広島県の79.6%や北海道の78.3%に対し、宮崎県は55.6%、秋田県は55.9%で、全国平均は70.3%だった。受け入れ側の体制や仕事の作りやすさが数字に出ていると考えられる。令和7年度の隊員数は8,196人、取組自治体は1,187団体まで広がり、令和7年3月末までに任期を終えた人は累計15,045人に達した。先に離れた人も残った人も、それぞれの判断の積み上がりである。地域との関わり方は住むか離れるかの二択ではないという前提で選べると、卒業後の選択は軽くなる。地域とつながる入口を広く探している人はFLASPOのような場も使える。
よくある質問
進路はいつまでに決めればよいですか。遅くとも最終年度の春には方向を出しておきたい。起業や事業承継を支える特別交付税措置は任期2年目から任期終了後3年以内が対象で、二年目から動ける制度になっている。三年目の冬に考え始めると、使える枠を取り逃がすことがある。
公表されている割合は、どの範囲の人を数えたものですか。なりわいの内訳は、活動地と同一市町村内に定住した5,038人を分母にしている。近隣市町村に移った1,125人や転出した人は含まれていないため、協力隊経験者全体の就業状況とは少し違う。読み替えるときは分母を確認しておきたい。
同じ地域に残る人はどれくらいいますか。直近5年に任期を終えた8,762人のうち6,163人、70.3%が同じ地域に定住している。内訳は同一市町村が5,038人、近隣市町村が1,125人だ。年数ごとの考え方は地域おこし協力隊の任期は何年?最長3年と5年特例・任期後の進路でも整理している。
未経験から起業する人も多いのですか。起業した2,296人の分野を見ると、飲食や宿泊、小売のように地域の素材と場所を使う業種が中心で、前職の延長とは限らない。任期中に小さく試して注文が入るかを確かめた人が、そのまま事業にしている例が目立つ。制度の全体像は地域おこし協力隊のメリットは?報酬・支援・定住率を公的データで確認も参考になる。
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