20代で地方に関わりたいと思っても、まわりに二拠点で暮らしている同世代はほとんど見当たらない。関心を持つ人の数と、実際に続けている人の数は、同じ年齢層でも大きく離れている。その段差の幅をまず数字で押さえておくと、どこから手を付けるかが決めやすくなる。
20歳代の関心は、全年齢の平均より10ポイント以上高い
内閣府が東京圏の在住者に聞いた調査では、地方移住に関心があると答えた人の合計は2019年12月の25.1%から、2021年9月から10月には34.0%へ上がった。この時点で20歳代だけを取り出すと東京圏で44.9%、東京都23区では49.1%に達している。国土交通省の資料も、20歳代の関心が全年齢平均を上回る状態が続いていると整理している。
関心の中身は、自然環境への魅力、テレワークで同じように働けること、仕事重視から生活重視への変更が上位に並ぶ。どれも「いまの勤め先を辞めること」を前提にしていない点が共通している。働く場所の選択肢が増えたことが、そのまま地方への関心として表に出た形だ。
背景にある人の流れは逆向きだった。東京圏への人口集中は15歳から29歳までの若年層の流入が大きな要因で、進学や就職の時期にまとまって動く。その世代が同時に地方への関心も持っているので、関心と居場所が食い違ったまま並んでいることになる。
この傾向は一時的なものではなかった。同じ内閣府の調査を2023年3月に1万56人から回収した回でも、20歳代の関心は全年齢の平均を上回り、45%前後の水準が保たれている。流行の収束とともに下がる性質のものではなく、働き方の変化として残った部分があると読める。
それでも、実施しているのは18歳以上の6.7%にとどまる
国土交通省が約12万人に聞いた二地域居住のアンケートでは、主な生活拠点以外に滞在する地域があり、そこで1泊以上の滞在を年に2回以上している人は、18歳以上人口の6.7%、およそ701万人と推計された。関心の45%前後という水準とは、ひと桁違う。
行っていない人に意向を聞いた結果は、次のように分かれている。関心層は全体で27.9%だった。
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| ぜひ行いたい、または今後行う予定 | 1.7% |
| 条件が許せば行いたいと思う | 24.9% |
| 過去に行ったことがあり、また行いたい | 1.3% |
| 過去に行ったが、また行いたいとは思わない | 14.4% |
| 行いたいとは思わない | 57.7% |
「ぜひ行いたい」と答えた人は1.7%しかおらず、関心層の大半は「条件が許せば」の24.9%が占める。つまり多くの人は、気持ちの問題ではなく条件が整うかどうかの段階で止まっている。若い世代ほど、条件のうち動かせるものが何かを早く見極められる余地がある。
条件を読み違えないために、定義の幅も押さえておきたい。国土交通省は二地域居住を、主な生活拠点とは別の地域に生活拠点を設ける暮らし方と捉えており、この拠点にはホテルなどの宿泊施設も含まれる。三か所以上に拠点がある形も同じ枠で扱われるので、家を借りることが出発点ではない。
移住の窓口に来ているのは、40代以下が7割を占める
東京での移住相談の件数は2010年代を通じて増え、2020年にいったん減った後、2021年から再び増えている。相談に来る層の内訳を見ると、40代以下の若い世代が7割程度を占め、女性の相談が増えているという特徴もある。窓口の側から見れば、若い世代は少数派ではない。
希望する就労形態としては、テレワークを挙げる人が増えてきた。勤務先を変えずに住む場所を変える道筋が、相談の現場でも標準的な選択肢になったということだ。高校生や大学生への調査でも、地方や地方都市での就職を志向する割合が高まっている。
相談の入口に立つなら、聞くことを絞っておくと時間が無駄にならない。滞在に使える住まいの有無、交通手段と所要時間、地域で関われる活動の3つは、どの自治体の窓口でも答えが返ってくる。移動の実額を含めた積み上げは二地域居住の費用を家賃・税金・移動で積み上げるにまとめている。
若い世代の入口は、暮らしより先に体験の側にある
20代で最初から住まいを借りる必要はない。国土交通省は、農林漁業の体験や就業体験などを通じて地域に触れる取り組みを若者の地方体験交流事業として位置づけており、大学生が地域づくりの現場に関わる入口になっている。短い滞在を重ねるところから始められる。
二地域居住として数えられる条件は、1泊以上の滞在を年に2回以上という線だ。年に2回の訪問であれば、学生でも社会人の1年目でも届く範囲にある。滞在の理由は仕事に限られておらず、趣味、地域の活動、友人や親族との行き来も対象に含まれる。
体験の段階で地域の人と関係ができていると、次の滞在のときに住まいや移動の相談先ができる。地域の活動に関わる側の視点はFLASPOでも扱っていて、受け入れる地域が何を求めているかを知っておくと、滞在の組み立ても変わってくる。
一度やめた人が14.4%いる事実から逆に考える
同じ調査で見落としやすいのは、過去に二地域居住をしたが、また行いたいとは思わないと答えた人が14.4%いることだ。関心層の27.9%とほぼ同じ規模の人が、経験した後に続けない判断をしている。始め方を考えるときは、この層が何でつまずいたかを先に見ておくほうが堅い。
やめる理由は、金銭の負担、移動の体力、時間の余裕に寄っていた。若い世代の場合は収入の水準が低い分、家賃と交通費の二重負担が早い段階で重くのしかかる。非実施者が挙げた条件の順位は二地域居住と仕事の収入の壁に整理した。
対策は単純で、最初の1年は頻度を落として固定費を持たないことだ。宿を都度借りれば空室の月の家賃は出ないし、往復の回数を季節ごとに決めておけば交通費の上限も読める。住まいの持ち方の分かれ目は二地域居住の住まいの選び方で比べられる。
頻度を落とす代わりに、1回の滞在を長くする組み立ても取れる。年に2回でも1週間ずつ滞在すれば、地域の行事や繁忙期に合わせられるので、顔を覚えてもらうまでの時間は短くなる。回数を増やすのは、移動の負担と費用の見通しが立ってからで間に合う。
よくある質問
質問 学生でも二地域居住に数えられますか。
回答 数えられます。調査の対象は18歳以上で、居住地や通学先以外の地域に1泊以上の滞在を年2回以上していれば実施者として扱われています。就業の有無は条件に入っていません。
質問 20代のうちに始めるほうが有利な点はありますか。
回答 身軽さと時間の融通が利く点です。家族の事情や住宅ローンのような固定の制約が少ないため、頻度や滞在先を試しながら変えられます。一方で原資は限られるので、最初から通年の家賃を持つ組み立ては避けたほうが無難です。
質問 住民票は移す必要がありますか。
回答 主な生活の拠点が変わらないなら移しません。生活の中心が滞在先に移った場合は手続きが必要になります。制度ごとの扱いは若い世代の二地域居住の設計で確かめてください。
質問 就職先を選ぶときに見ておく条件はありますか。
回答 就業規則にテレワークの根拠があるか、年次有給休暇を半日や時間の単位で取れるか、副業の届出の経路があるかの3点です。入社後に変えられない条件ではありませんが、採用の面談で確認できる範囲なら先に聞いておくと、滞在の頻度を上げる段階で手間が減ります。
出典
国土交通省「二地域居住等の推進に関する資料」/国土交通省「地方移住・二地域居住に関する資料」
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