軽井沢は別荘16,512戸に世帯9,548|働く滞在の枠を季節で読む

仕事を持ったまま数日どこかに滞在したい、と考えたときに軽井沢が候補に挙がる理由は、たいてい「涼しい」と「新幹線で近い」の二つで説明される。ところが町が毎年出している統計を開くと、その二つでは説明しきれない数字が並んでいる。住民より別荘の方が多く、観光客は年間800万人で頭打ちになり、泊まれる場所は減り続けている。働きながら滞在する側にとって重要なのは、混んでいる時期と空いている時期のどちらに自分が入るのかという一点なので、まずはその配分を数字で押さえておきたい。

夏に7割が来ていた町が、4割の町になった

昭和35年度の軽井沢町の観光客延数は229万9千人で、そのうち158万2千人が6月から8月に集中していた。全体の68.8パーセントが夏に来ていたことになる。避暑地という言葉がそのまま統計に出ていた時代である。

令和7年度はどうか。総数は800万1千人で、季節の内訳は春(3〜5月)127万7千人、夏(6〜8月)356万9千人、秋(9〜11月)206万4千人、冬(12〜2月)109万1千人だった。夏の比率は44.6パーセントまで下がっている(この比率は町の公表値から筆者が算出した)。残り55.4パーセントは夏以外に動いている。

年度 総数 春 夏 秋 冬
昭和35年度 229.9万人 12.5万人 158.2万人 30.8万人 28.4万人
平成22年度 777.7万人 102.4万人 401.2万人 194.9万人 79.2万人
令和2年度 485.2万人 27.0万人 218.0万人 177.7万人 62.5万人
令和6年度 800.5万人 120.8万人 343.3万人 215.2万人 121.2万人
令和7年度 800.1万人 127.7万人 356.9万人 206.4万人 109.1万人
軽井沢町「令和7年度 軽井沢町の統計」125表(観光客数の状況・推計値)から作成

注目したいのは冬である。昭和35年度の28万4千人から令和7年度の109万1千人へ、3.8倍に増えた。春も12万5千人から127万7千人で10倍を超えている。夏の人数そのものは昭和35年度の2.3倍にとどまるので、増えた800万人の内訳は「夏以外が追いついた」という形になっている。平日と端境期に仕事を持ち込む滞在は、この追いついた側の枠に入る。

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世帯9,548に対して、別荘は16,512戸ある

町の人口は令和7年で20,031人、世帯数は9,548世帯、一世帯当たりの人口は2.10人である。人口密度は1平方キロメートルあたり128.38人で、平成22年の121.90人から緩やかに上がっている。

同じ統計書の税務課資料には、別荘と寮の戸数が載っている。令和7年1月現在で総数16,838戸、うち別荘が16,512戸、会社寮が239戸、学校寮が87戸だ。世帯数の1.7倍を超える別荘が、住民の暮らす家とは別に建っている。

この戸数は止まっていない。平成28年の別荘15,611戸から令和7年の16,512戸まで9年で901戸増えた。令和5年の16,210戸、令和6年の16,405戸と、直近も年に150戸から200戸のペースで伸びている。建築確認申請の内訳を見ると、令和7年の総数438件のうち別荘が303件を占める。住宅は84件なので、町で新しく建つ建物の多くは、普段そこに住まない人のための家である。

ワーケーションや二地域居住を考える立場からすると、この構造は二つの意味を持つ。一つは、短期滞在を受け入れる器が宿泊施設の外に大量にあるということ。もう一つは、その器の持ち主が住民登録をしていないため、町の人口統計には現れないということである。別荘を人口に数える国もあり、そのやり方は別荘495,145戸を人口に足す国|関係人口の海外版はどう数えるかで扱った。

泊まれる場所は、この40年で半分近くまで減った

観光客が800万人で、別荘が1万6千戸ある町なら、宿も増えているはずだと思うかもしれない。実際は逆方向に動いている。

軽井沢観光協会の集計では、昭和60年1月1日時点の宿泊施設は239軒・収容14,584人だった。令和8年1月1日時点は122軒・収容11,482人である。軒数で半分近く、収容人員で2割強減った。

減り方には偏りがある。ホテルは昭和60年の21軒から令和8年の62軒へ増えたが、旅館は36軒から10軒、ペンションは88軒から37軒、民宿は94軒から13軒まで落ちた。令和4年から令和8年の4年間だけでも、ペンションは50軒から37軒、旅館は12軒から10軒へ減っている。小さく安く泊まれる宿が消え、収容規模の大きいホテルに置き換わったという構図だ。

この偏りは、長期で滞在する側に直接ひびく。1泊の単価が上がりやすく、1週間や1か月の滞在に合う価格帯の宿が選びにくくなる。期間ごとの組み立て方はワーケーションの人気エリアを数字で絞る|宿泊者数と客室稼働率の整理が役に立つ。なお夏期の出張店は令和6年で265店あり、季節に合わせて店が増える仕組みは残っている。

県の事業としての「リゾートテレワーク」はどこまで用意されているか

軽井沢で働きながら滞在する枠は、町だけで用意されているわけではない。長野県が「信州リゾートテレワーク」という名称で予算を付けている。

県の資料によれば、リゾートテレワーク推進事業の予算額は令和7年が15,346千円、令和6年が21,311千円である。事業の中身はモデル地域12地区での環境整備、100を超える受入施設の整備、都市圏の企業に向けたプロモーションの三つで、令和5年度の実施者数は5,752人と記されている。県が掲げるねらいは「県内に滞在して仕事をする人・企業」と「関係人口(企業)の創出・拡大」で、移住や企業誘致はその先に置かれている。

推進の体制は令和3年4月に設置された「信州リゾートテレワーク推進チーム」である。構成は参加市町村39、コーディネート団体16、事務局の県1、オブザーバー2で、軽井沢町は参加市町村に、軽井沢リゾートテレワーク協会はコーディネート団体に名前が入っている。県の資料に受入施設として挙がっている軽井沢の例は緑友荘と232work&hotelの二つで、ほかに佐久市のワークテラス佐久、茅野市のワークラボ八ヶ岳、信濃町ノマドワークセンターなどが並ぶ。

つまり軽井沢は、県の12のモデル地域のうちの一つという位置づけである。町単独の制度を探すより、県の枠組みから受入施設を引く方が早い。学生が同じ枠に入れるかどうかは制度ごとに違い、そこは学生が地域に滞在して働くには|ワーケーション制度の外にある3つの枠で条件を並べた。地域と関わる仕事の作り方はFLASPOでも扱っている。

行き帰りの数字が、滞在の長さを決めている

新幹線で近いという話は、乗車人員の形で統計に出ている。軽井沢駅の一日平均乗車人員は、平成27年度の3,602人から令和元年度の4,042人まで伸び、令和2年度に1,911人へ半減したあと、令和6年度は4,691人まで戻った。令和元年度を16パーセント上回っており、往来の量は感染症の前より多い。

一日平均という数え方には注意がいる。夏と冬の差が大きい町なので、平均の裏側には混雑する日と空いている日が同じだけ含まれている。観光客の季節配分を見ると、冬の109万1千人は夏の356万9千人の3割程度にとどまる。宿も交通も空いているのは、人が少ない季節の平日ということになる。

滞在の長さを決める条件をもう一つ挙げると、別荘の増え方である。令和3年の建築確認申請は609件で、うち別荘436件だった。令和7年は438件・別荘303件で落ち着いたが、4年続けて別荘が年300件以上申請されている。工事が入る季節は限られるため、春と秋の町には工事関係の往来も重なる。静けさを求める滞在なら、そこまで含めて時期を選びたい。

よくある質問

軽井沢で一番空いている時期はいつですか。

観光客数で見ると12月から2月である。令和7年度の冬は109万1千人で、夏の356万9千人に対して3割弱にとどまる。ただし冬は昭和35年度の28万4千人から3.8倍に増えており、「誰もいない季節」ではなくなっている。

町にワーケーション専用の制度はありますか。

町単独の制度としてではなく、長野県の信州リゾートテレワークのモデル地域12地区の一つとして枠が用意されている。推進チームには参加市町村として軽井沢町、コーディネート団体として軽井沢リゾートテレワーク協会が入っている。

宿が減っているなら、長期滞在はしにくいのでしょうか。

軒数は昭和60年の239軒から令和8年の122軒まで減ったが、収容人員は14,584人から11,482人で、減り幅は小さい。ペンション37軒・民宿13軒・旅館10軒という内訳なので、価格帯の選択肢が狭くなったと考えるのが実態に近い。

別荘が1万6千戸あるのは、滞在する側にとって意味がありますか。

貸し出される部屋の母数が宿泊施設の外にあるという意味を持つ。ただし別荘は税務課の推計値で、貸しているかどうかは統計に出ていない。借りられる前提で計画を立てるのは避けたい。

数字はどこで確かめられますか。

観光客数・宿泊施設・別荘戸数・新幹線乗車人員はいずれも軽井沢町の統計に、季節別の観光客数は軽井沢町の観光統計に載っている。県の事業の予算と実施者数は長野県「信州ITバレー構想の実現に向けて」の資料で確認できる。


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