地域のラジオ局は342者|コミュニティFMの制度と関わる入口

周波数表に並ぶ342の名前

車のラジオの周波数を下から送っていくと、県域の局の合間に聞いたことのない名前が挟まっていることがある。総務省のコミュニティ放送政策ポータルサイトは、こうした局を、市区町村内の一部の地域に地域に密着した情報を提供するため平成4年1月に制度化された超短波放送局だと説明している。第一号は北海道函館市の「FMいるか」で、同省が公開する事業者一覧では免許日と開局日がどちらも1992年12月24日になっている。

令和8年1月31日現在の資料によれば、放送中の事業者は342者で、47都道府県のすべてに1者以上が置かれている。一覧の最後尾にあるのは東京都福生市のradio234で、2025年11月5日に電波を出し始めたばかりだ。30年あまりで空白県がなくなったという意味では、全国に行き渡った制度と言える。

総務省の令和7年版情報通信白書は別の数え方をしている。2024年度末時点でFM放送を行う地上系民間基幹放送事業者は396社あり、そのうち原則として一の市町村の一部の区域を放送対象地域とする事業者が346社だという。白書の346と一覧の342が食い違うのは集計の時点が1年近くずれているためで、どちらかが誤っているわけではない。同じ白書でAM放送が47社、短波放送が1社とされていることと並べると、事業者の数のうえではラジオ放送の大半がこの小さな局で構成されていることがわかる。

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20ワットという上限が決めている射程

電波の強さには天井がある。総務省の説明では、空中線電力は20W以下で必要な放送エリアをカバーできる必要最小限のものを指定することとされ、総務大臣の免許を受けて運用される民間の放送局という位置づけになる。使える周波数は76.1MHzから98.9MHzまでで、開局を希望する者が自分で空き周波数を見つけ、先に申請した者を先に審査する先願主義が採られている。市販のラジオでそのまま聞けるのは、この帯域を使っているからだ。

上限は最初から20Wだったわけではない。コミュニティ放送の現状は、制度化の時点では1Wだったものが、阪神・淡路大震災を受けて急増した開局需要とエリア拡大の要望を勘案して10Wへ、その後は市町村合併の流れを踏まえて原則20W以下へと緩和された経緯を示している。災害と市町村合併という二つの出来事が、聞こえる範囲を押し広げてきたことになる。

段階 空中線電力の上限 緩和のきっかけ
制度化の時点 1W 平成4年1月に制度化
第2段階 10W 阪神・淡路大震災を受けた開局需要とエリア拡大の要望
現在 原則20W 市町村合併の流れ
総務省「コミュニティ放送の現状(令和8年1月31日時点)」の記載をもとに作成

放送できる区域にも細かい線が引かれている。原則は一の市町村の一部だが、隣接する他の市町村の一部の区域は併せられ、住民のコミュニティとしての一体性が認められる場合には隣々接する市町村の一部まで含めることができる。市境でぶつ切りにならないよう、生活圏の形に寄せる余地が残されている。

数の偏りと運営の形

全国に行き渡っているとはいえ、密度は一様ではない。事業者一覧を都道府県ごとに数え直すと、北海道が29者で最も多く、神奈川県18者、東京都17者、沖縄県17者が続く。埼玉県と鹿児島県がそれぞれ13者で、少ない県は1者から2者にとどまる。大きな災害を経験した地域と、島が点在して県域放送では細かい情報を届けにくい地域に厚みがあるという見方ができる。

運営の形も三つに分かれている。同じ資料が経営形態別の内訳を示しており、全国342者の構成は次のようになる。

区分 事業者数 総務省の定義
営利法人 185 株式会社など(第3セクターに該当するものを除く)
非営利法人 38 NPO法人や一般社団法人など
第3セクター 119 地方公共団体の議決権割合が1%を超える営利法人
合計 342 令和8年1月31日時点
出典:総務省「コミュニティ放送の現状(令和8年1月31日時点)」

目を引くのは第3セクターの119である。3者に1者以上で地方公共団体が議決権を持っており、広告収入だけで回る商売としては設計されていないことがうかがえる。行政情報の発信を担う前提があるぶん、公費が入る形が選ばれやすい。民間企業というより、自治会・町内会29万団体と並ぶ地域の運営組織として見たほうが実像に近い。

停電のあとに何が残るか

豪雨のさなか、屋外スピーカーの声は雨音に消される。総務省の資料はこの弱点を率直に挙げ、防災行政無線の戸別受信機も電池方式でなければ停電の影響を受けると書いている。同省が引く関東管区行政評価局の調査報告書では、防災行政無線の予備電源の稼働目安は72時間程度、携帯電話基地局の予備電源は県庁や市役所の周辺でも24時間程度で、これを越えると順次停波し、応急復旧には最低でも1週間程度かかるとされる。能登半島地震では2週間を超え、令和元年台風19号では電力網の復旧に2週間から1か月を要した。

この条件下で地元に絞った情報を流す枠として、臨時災害放送局が用意されている。暴風や豪雨、洪水、地震、大規模な火事などが起きたとき、被害の軽減に役立つよう被災地の地方公共団体等が開設する臨時かつ一時の目的のためのFM放送局である。電波法に基づく申請が必要なものの、災害時には臨機の措置として電話等の迅速な方法で申請し、免許を受けることができる。送信機、送信アンテナ、ミキサー、マイクを含む設備一式は全国11か所の総合通信局等に1式ずつ配備され、開設する自治体は無償で貸付を受けられる。平時の訓練や調査に使うことも認められている。

運用の下支えも進んだ。総務省は令和6年9月26日に一般社団法人日本コミュニティ放送協会と臨時災害放送局の開設等の協力に関する協定を締結し、平時に自治体が行う開設や運用の訓練への協力までを取り決めた。ふだん地域で放送している事業者が、非常時には自治体の開設を手伝う前提が整ったことになる。

関わる側から見た入口

小さい局だからといって規律が緩いわけではない。総務省は、放送法と電波法上の規律が適用される例として放送番組審議機関の設置、災害放送の実施、技術基準への適合を挙げている。番組の中身にも目安があり、放送法関係審査基準には、地域に密着した各種の情報に関する番組等、当該地域の住民の要望に応える放送ができる限り1週間の放送時間の50%以上を占めることという努力義務が置かれている。放送時間の半分以上を地元の話で埋めなければならないので、素材を出す人が局の外から必要になる。

同省が挙げる番組の例は、道路交通情報や病院案内といった生活情報、迷い人情報や災害情報、市町村広報などの行政情報、観光施設やイベントの案内、地域のニュース、音楽、コマーシャルと幅がある。制度の説明図では、学校や地域との連携、市町村役場との連携、他のメディアとの連携が局を囲む形で描かれている。放送局の側から見れば、学校の部活動やゼミが持っている地元の記録は、埋めるべき枠に対する供給そのものである。

最初に確かめるべきことは単純だ。過疎地域の指定を市町村単位で引くのと同じ要領で、自分の住む市区町村に局があるかを一覧で探し、あとは番組表のどの枠が地元の話で埋まっているかを見ればよい。学生の活動と地域をつなぐ経路を広く見ておきたい人は、FLASPOのような窓口も併せて当たっておくと接点が増える。移住の前段として地域との関係を作る道筋という点では、協力隊の定住率から見た関わり方と地続きの話になる。

よくある質問

自分の市区町村に局があるかを調べる方法はあるか。総務省のコミュニティ放送政策ポータルサイトに、コミュニティ放送事業者一覧が表形式で掲載されている。令和8年1月31日現在の版には342者の都道府県名、市区町村名、事業者名、免許日、開局日が並ぶので、市区町村名で探すのが確実である。

どのくらいの範囲まで聞こえるのか。総務省は空中線電力を20W以下の必要最小限と定めているだけで、到達距離そのものを数値で示しているわけではない。地形や送信所の高さで変わるため、受信できるかどうかは各局が公表するエリア図で確かめる必要がある。

新しく開局したい場合はどこに相談するのか。同省は、計画の段階から総合通信局に相談するよう案内している。周波数は申請者が自分で空きを見つける先願主義のため、東京23区およびその周辺、大阪市およびその周辺といった地域では割り当てが困難な場合があると明記されている。

臨時災害放送局とコミュニティ放送局は同じものか。別の免許である。臨時災害放送局は災害時に地方公共団体等が臨時かつ一時の目的で開設するもので、設備は総務省から無償で貸し付けられる。ふだん営業している局とは制度上区別されるが、令和6年の協定によって、開設や訓練の場面で両者が協力する形が取られている。

番組づくりに素人が加わる余地はあるのか。制度の上では、地域に密着した放送を1週間の放送時間の50%以上にする努力義務が置かれ、学校や地域との連携が前提として図示されている。素材の持ち込みや出演を受け入れるかどうかは各局の判断になるため、番組表で地元の枠を確かめた上で、局の問い合わせ先に当たるのが順番として早い。


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