観光と地方創生をつなぐ数字|26.8兆円と戻らない旅行者数

地方創生の話が訪日客に寄りすぎている

観光で地域を立て直すという話題になると、話はすぐ訪日外国人へ向かう。だが金額の主軸は別のところにある。観光庁が2026年4月30日に公表した旅行・観光消費動向調査の2025年年間値(確報)によれば、2025年の日本人国内旅行消費額は26兆7,845億円で、前年比6.5%増だった。一方、同庁が同年3月31日に公表したインバウンド消費動向調査の確報では、訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円である。

両者を割ると、国内旅行は訪日の約2.8倍になる。地域の宿や飲食、土産物屋の売上を考えるとき、まず当たるべき相手は日本国内に住んでいる旅行者だという計算になる。訪日の伸び率は前年比16.4%増で国内の6.5%増より大きいものの、規模の差を埋めるには時間がかかる。

国内旅行の内訳も押さえておきたい。26兆7,845億円のうち、宿泊旅行が21兆7,211億円で前年比6.8%増、日帰り旅行が5兆634億円で5.0%増だった。消費額の8割以上は泊まる旅行から生まれている。日帰り客をどれだけ集めても宿泊の単価には届かないという構造が、ここに表れている。地方部に落ちる訪日消費の規模については地方のインバウンド消費2兆1,338億円の内訳のほうが細かい。

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人数は戻らず、単価が上がった

消費額が過去の水準を超えたという話には続きがある。同じ調査の2025年の日本人国内延べ旅行者数は5億5,313万人で、前年比2.4%増だった。宿泊旅行が2億9,997万人、日帰り旅行が2億5,316万人という構成である。ところが感染症の影響を受ける前の2019年は5億8,710万人だった。人数では、まだ届いていない。

代わりに伸びたのが1人1回当たりの旅行支出である。2025年は48,424円で前年比3.9%増、宿泊旅行では72,412円、日帰り旅行では20,000円だった。2019年の数値と並べると、動き方の違いがはっきりする。

項目 2019年 2025年 2019年比
日本人国内旅行消費額 21兆9,312億円 26兆7,845億円 約22%増
延べ旅行者数 5億8,710万人 5億5,313万人 約6%減
旅行単価(全体) 37,355円 48,424円 約30%増
旅行単価(宿泊) 55,054円 72,412円 約32%増
旅行単価(日帰り) 17,334円 20,000円 約15%増
観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)および同調査の2019年確報値をもとに増減を計算

人が減って単価が上がったという形は、地域の打ち手を変える。来訪者の頭数を競う施策は、母数そのものが縮んでいる市場で争うことになる。逆に、泊数を1泊伸ばす、食事や体験に支払う額を増やすといった方向は、実際に起きている変化と同じ向きを向いている。2020年の消費額が9兆9,741億円まで落ちたことを思えば、戻り方の内実を見ておく意味は大きい。

訪日の9.5兆円は5か国で6割を占める

訪日客を当て込む場合は、どこから来る人かで事情が変わる。観光庁のインバウンド消費動向調査2025年暦年の確報では、国籍・地域別の消費額は中国が20,058億円で構成比21.2%、台湾12,033億円で12.7%、米国11,186億円で11.8%、韓国9,906億円で10.5%、香港5,614億円で5.9%の順に多く、この上位5か国・地域で全体の62.2%を占める。

1人当たり旅行支出は一般客で22万9千円、前年比0.9%増だった。国内旅行の単価48,424円と比べれば1人の重みは大きいが、構成が偏っているぶん、特定の国の渡航需要が変わると地域の売上も振れる。多言語対応や決済手段をどの国に合わせるかという判断も、この構成比の上に乗っている。

地方創生の文脈では、国内旅行の26兆7,845億円という土台に訪日の9兆4,549億円を重ねる順番が現実的である。制度としての地方創生の全体像は地方創生2.0までの流れで確かめておくとよい。

受け皿として置かれている法人

消費を地域に残すには、誰かが戦略を立てて調整する必要がある。その役回りに置かれているのが観光地域づくり法人である。観光庁の登録一覧によれば、令和8年9月1日現在で広域連携が10法人、都道府県が38法人、地域が274法人を登録しており、候補の段階にある地域の法人が21ある。北海道と沖縄県は広域連携と都道府県の両方を兼ねるため、三つの区分を単純に足すと2法人が重複して入る点には注意したい。

同庁はこの法人の基礎的な役割を五つ挙げている。各種データの継続的な収集および分析と、明確なコンセプトに基づく観光地経営戦略の策定および進捗管理。地域における役割分担に応じた着地整備の取組の遂行と、関係者の観光関連事業との整合性を確保する調整。多様な関係者との体制構築および合意形成。これらを達成するために必要な組織の確立と強化。そして財源の確保である。

注目したいのは、五つのうち二つが組織と財源の話であることだ。観光地としての魅力づくりの前に、続ける体力をどう用意するかが条件として並んでいる。受け入れ側の組織と自治体の関係については観光で人を受け入れる主体を数えた記事が参考になる。

地域側が最初に確かめること

数字を並べたうえで、手元の地域に引き戻すと確認事項は絞られる。第一に、自分の地域の客は宿泊なのか日帰りなのか。全国では消費額の8割以上が宿泊から生まれているため、日帰り中心の地域は単価20,000円の市場で商売していることになる。第二に、泊数と単価のどちらを動かせるのか。人数の母数が2019年を下回っている以上、頭数を増やす前提の計画は土台が崩れやすい。

第三に、観光地域づくり法人が置かれているかどうかである。登録されていれば戦略と進捗管理の文書が存在し、どの客層をねらっているかが読める。地域の数字を扱う役回りを担う人が決まっていない地域では、まず誰が集計するのかを決める段階から始まる。

学生がこの領域に関わる余地は、意外に手前にある。データの継続的な収集および分析は法人の第一の役割に挙げられているが、人手が足りないという話は各地で聞く。地域の催しの来場者を数える、地元の店の客層を聞き取るといった作業は、そのまま戦略の材料になる。地域との接点を探している段階なら、FLASPOのような窓口から地域側の相談に当たってみるのが早い。

よくある質問

国内旅行と訪日旅行はどちらが地域にとって大きいのか。2025年の金額では日本人国内旅行が26兆7,845億円、訪日外国人旅行が9兆4,549億円で、国内が約2.8倍である。ただし地域差があり、訪日客の消費がどこに落ちているかは別の統計で確かめる必要がある。

旅行者数が2019年に届いていないのはなぜか。観光庁の調査は人数と単価を分けて集計しているだけで、理由を説明するものではない。確報値として示されているのは、2025年の延べ旅行者数が5億5,313万人、2019年が5億8,710万人という事実である。

観光地域づくり法人はどこで調べられるのか。観光庁のサイトに登録一覧が掲載され、法人名から各法人の形成確立計画に移動できる。令和8年9月1日現在の登録は広域連携10、都道府県38、地域274で、候補の地域法人が21である。

宿泊と日帰りの単価の差はどのくらいか。2025年は宿泊旅行が72,412円、日帰り旅行が20,000円で、3.6倍ほどの開きがある。延べ旅行者数は宿泊2億9,997万人、日帰り2億5,316万人と近い水準なので、消費額の差はほぼ単価の差から生まれている。

訪日客の消費はどの国に偏っているのか。2025年の確報では中国21.2%、台湾12.7%、米国11.8%、韓国10.5%、香港5.9%で、上位5か国・地域が全体の62.2%を占める。1人当たり旅行支出は一般客で22万9千円だった。


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