空き家を買う前に通る四つの確認|旧耐震7割超という前提

売りに出てくる空き家は一部にすぎない

地方で物件を探し始めると、同じ町に空き家がいくつもあるのに売買の情報が出てこないという壁にすぐ当たる。この違和感には裏づけがある。国土交通省が令和7年8月29日に公表した令和6年空き家所有者実態調査によれば、使用目的のない空き家を持つ世帯のうち、今後の利用意向として空き家として所有しておくと答えたのは40.6%だった。除却するが19.2%、売却するが18.3%で、売る意思を示した層は5軒に1軒に届かない。

直近1年の動きも緩やかだ。令和5年10月1日から令和6年12月1日までの間に、使用目的のない空き家が空き家でなくなったのは14.8%で、残る85.2%は空き家のままだった。空き家でなくなった理由の一位は除却した22.7%で、貸した15.5%、所有者や親族が居住した15.5%が続く。つまり解消の多くは市場への供給ではなく、建物を壊すか身内で使うかという形で起きている。

この調査は昭和55年から概ね5年ごとに統計法に基づいて実施されている一般統計で、今回が10回目になる。総務省の令和5年住宅・土地統計調査で空き家を所有していると答えた世帯から、全国で約1万3千世帯を無作為に抽出して尋ねたものだ。買う側から見れば、この数字が示しているのは探す順番である。流通している物件を眺めるだけでは、地域にある空き家の大半に手が届かない。

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築年と傷みという避けられない前提

では売りに出た空き家はどういう建物なのか。同じ調査は、空き家の取得方法のうち相続が57.9%を占めることを示している。新築・建て替えが17.1%、既存住宅を購入が14.2%、新築住宅を購入が4.6%、贈与が2.3%で、6割近くが相続によって手元に来た家である。そして相続された空き家の建築時期は、次のように古い側へ大きく偏っている。

建築の時期 割合 耐震基準との関係
1950年以前 20.4% 旧耐震基準
1951〜1970年 26.4% 旧耐震基準
1971〜1980年 26.4% 旧耐震基準
1981〜2000年 17.5% 新耐震基準
2001年以降 4.5% 新耐震基準
不明 4.9% –
出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」(相続空き家の建築の時期)

1980年以前が合わせて73.2%で、7割超が昭和56年6月の新耐震基準の前に建てられている。傷みの程度も同様で、室内外に部分的な腐朽・破損ありが47.1%、構造上の不具合ありが21.2%、室内外に全体的な腐朽・破損ありが3.5%となり、何らかの腐朽・破損を抱える建物が7割を超える。腐朽・破損なしは28.2%にとどまる。

この二つの数字が意味するのは、見積りの立て方である。物件価格が安いという話と、耐震改修と修繕を含めた総額が安いという話は別に扱う必要がある。工事の中身と金額の目安については古民家の耐震・断熱・腐食と改修費用のほうが具体的だ。

売主の事情を先に読む

交渉の相手が何に困っているかを知ると、話の進み方が変わる。調査では、相続空き家が空き家になった原因の58.3%が所有者の死亡で、転居が26.9%、老人ホームなどの施設への入居が11.3%だった。約6割は、持ち主が亡くなったことをきっかけに誰も住まなくなった家ということになる。

備えのあるなしで、その後の扱いははっきり分かれる。相続前に何らかの対策を実施していた世帯は23.0%で、残る77.0%は何もしていなかった。対策の内容は被相続人との話し合いが16.7%で最も多く、遺言の作成支援1.8%、後見制度や家族信託の活用1.3%は少ない。そして相続前に対策をしていなかった空き家は、していた空き家に比べて、何もせずそのまま空き家として所有され続けている割合が約1.5倍になる。具体的には、対策なしで空き家のまま所有が45.1%、対策ありでは29.4%だった。

買う側にとっては、相続人が複数いて話がまとまっていない物件ほど時間がかかるという読みになる。価格の折り合いではなく、誰が決めるのかが決まっていないことが遅れの理由になりやすい。そもそも空き家が増える構造的な背景は空き家が増える5つの原因で整理している。

登記の期限と税の線引き

権利関係にも期限が入った。法務省によれば、相続登記の申請義務化は令和6年4月1日から始まっており、相続したことを知った日から3年以内に登記する必要がある。正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料が科される可能性がある。令和6年4月1日より前の相続も対象で、それ以前に相続したことを知った不動産は令和9年3月31日までに登記しなければならない。登記簿上の名義が古いままの空き家は、売買の前にこの手続きを通す必要があると考えておくとよい。

税の側には売主を動かす仕掛けがある。国税庁の被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、相続または遺贈で取得した被相続人居住用家屋等を平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売り、一定の要件に当てはまるときに、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できるとしている。令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は2,000万円が上限になる。

要件には昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物登記がされている建物でないこと、相続の開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったことが並ぶ。先に見た築年の偏りを思い出すと、この特例の射程に入る空き家は少なくない。令和9年12月31日という期限があるため、売主側には動く理由が生まれる。

自治体がどこまで手を入れているか

同じ町の空き家でも、行政の関与の度合いで買いやすさは変わる。国土交通省と総務省が1,741市区町村を対象にまとめた空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況では、令和7年3月31日時点で空家等対策計画を策定済みの市区町村が1,541で88%に達し、法定協議会を設置済みの団体が1,052で61%だった。計画と窓口がある自治体では、空き家バンクや補助の案内が一本化されていることが多い。計画や支援法人の仕組みそのものは空き家に入る順番を制度から見た記事で詳しく扱っている。

改正法で加わった枠はまだ広がりの途上にある。同じ調査で、空家等活用促進区域を指定済みの市区町村は4にとどまり、指定予定が36ある段階だった。区域が指定されると接道や用途の規制について特例が講じられるため、古い家を住宅以外に使いたい場合は、この区域の有無が計画を左右する。

税の特例が実際に使われた量も確かめられる。空き家の譲渡所得3,000万円控除に係る確認書の交付実績は、令和6年度が16,755件で、平成28年度からの累計は93,897件だった。交付件数は年々増えており、売る側が制度を使って手放す流れは広がっている。固定資産税の扱いが変わる条件については住宅用地特例が外れる仕組みを併せて見ておきたい。地域に関わる入口を探す段階で情報の集め方に迷うなら、FLASPOのような窓口から当たるのも一つの手になる。

よくある質問

空き家バンクに載っていない家でも買えるのか。所有者と合意できれば売買自体は可能である。ただし調査では使用目的のない空き家の40.6%が今後も空き家として所有しておくという意向で、売却意向は18.3%にとどまる。交渉の前に、その家が売る前提で管理されているのかを自治体や仲介業者を通じて確かめるほうが早い。

旧耐震の家を買うと必ず耐震改修が必要になるのか。法令として買主に改修を義務づける規定はない。一方で相続空き家の7割超が1980年以前の建築であり、腐朽・破損を抱える建物も7割を超える。住宅ローンや保険の審査、改修の自己負担を含めて総額で判断することになる。

相続登記が済んでいない物件はどうなるのか。登記名義が被相続人のままだと、そのままでは買主へ所有権移転登記ができない。相続登記は令和6年4月1日から申請が義務化され、知った日から3年以内という期限と10万円以下の過料が定められている。売主側に登記を済ませてもらう段取りが前提になる。

3,000万円の特別控除は買う側にも関係があるのか。控除を受けるのは売った側だが、適用期限が令和9年12月31日までであるため、期限内に売りたいという売主の動機として働く。家屋が昭和56年5月31日以前の建築であることなどの要件があり、該当するかどうかで交渉の温度が変わる。

別荘として使われていた家は事情が違うのか。二次的住宅・別荘用の空き家は、今後の利用意向の一位が別荘やセカンドハウスとして利用の47.2%で、空き家として所有しておくが22.2%、売却するが11.5%だった。使用目的のない空き家より売却意向は低く、所有者が使い続ける前提で持っている割合が高い。


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