移住してきた人が地域に馴染むかどうかは、受け入れた側の努力次第だと言われがちである。ところが制度を通って入った人の追跡調査を見ると、残る割合は地域によって2割以上ちがう。同じ国の同じ制度を使っていても差が出る。その差がどこから来ているのかを、公的な数字をたどって確かめていく。
相談の窓口は、いま順番待ちの状態にある
認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが2026年2月24日に公表した集計によれば、2025年の移住相談件数は73,003件だった。前年の61,720件から18.3パーセント増えている。セミナーや相談会の開催は658回で、内訳は対面が288回、オンラインが245回、両方を組み合わせたハイブリッドが125回である。
窓口相談で人気の高かった都道府県は、1位が群馬県で2年連続、2位が栃木県、3位が長野県だった。セミナー参加者数では群馬県が3年連続の1位で、長野県と和歌山県が続いている。北関東が上位を占める形は、東京へ出られる距離と生活費の兼ね合いを測っている人が多いことを示している。
つまり入口の需要は不足していない。移住を検討する人の数だけを見れば、地域にとっては追い風である。問題は、来た人が何年後にもそこに住んでいるかどうかで、そこから先は窓口の外側の話になる。
任期を終えた人の7割が、その地域に残っている
追跡できる数字が残っているのは地域おこし協力隊である。総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の調査は、令和2年4月1日から令和7年3月31日までの直近5年間に任期を終えた隊員を対象に、令和7年5月1日時点の状況を集めている。
この5年間に任期終了した隊員は8,762人で、そのうち6,163人が同じ地域に定住した。割合はおよそ70.3パーセントである。内訳を見ると、活動していた市町村の中に住み続けた人が5,038人、近隣の市町村に移った人が1,125人という構成になる。他の地域へ出た人は2,013人だが、うち228人は活動地と関わりのある地域協力活動等に従事しており、離れても縁が切れていない人が一定数いる。
| 任期終了後の行き先 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 活動地と同一市町村内に定住 | 5,038人 | 57.5パーセント |
| 活動地の近隣市町村内に定住 | 1,125人 | 12.8パーセント |
| 他の地域に転出 | 2,013人 | 23.0パーセント |
| その他 | 75人 | 0.9パーセント |
| 不明 | 511人 | 5.8パーセント |
| 合計 | 8,762人 | 100.0パーセント |
制度が始まってからの累計では、令和7年3月31日までに任期を終えた隊員は15,045人に達している。前回の集計から2,363人増えた。10年単位で見ると、1万人を超える人が地方で数年を過ごし、その7割前後がそのまま住民になったという規模になる。
残った人は、雇われるより自分で始めている
同じ市町村に定住した5,038人が何をしているかは、さらに細かく集計されている。起業した人が2,296人でおよそ46パーセント、どこかに就業した人が1,753人でおよそ35パーセント、就農・就林が583人でおよそ12パーセントである。事業承継が70人、その他が181人、不明が155人と続く。半数近くが自分で事業を起こしている点は、一般的な移住像とかなり違う。
起業の分野で最も多いのは飲食サービス業の308名で、古民家カフェや農家レストランが例に挙がっている。次が美術家やデザイナー、写真家、映像撮影者の217名、宿泊業が181名、小売業が174名、観光業が130名である。猪や鹿の食肉加工・販売のような6次産業が101名、ライターや広報物の制作を含む出版・広告業が80名、集落支援や地域ブランドづくりを支えるまちづくり支援業が80名と並ぶ。
就業した人の行き先は傾向が違う。最も多いのは自治体職員や議員、集落支援員といった行政関係の480名である。旅行業・宿泊業などの観光業が176名、農業法人や森林組合などの農林漁業が138名と続く。就農・就林の中身は農業が477名、林業が54名、畜産業が20名、漁業・水産業が12名だった。事業承継の70名には、伝統工芸や民宿、飲食業の引き継ぎが含まれる。空いた店や宿を誰が継ぐかという問題に、外から来た人が答えている形である。
同じ制度でも、県によって2割以上の差がつく
全国平均は70.3パーセントだが、都道府県別に並べると幅が大きい。任期終了者が100人を超える県のなかで高いのは、広島県の79.6パーセント、北海道の78.3パーセント、長野県の78.0パーセントである。低いほうは宮崎県の55.6パーセント、秋田県の55.9パーセント、島根県の60.3パーセントと続く。上下で24ポイント近く開いている。
| 都道府県 | 任期終了者 | 同じ地域に定住 | 定住率 |
|---|---|---|---|
| 広島県 | 108人 | 86人 | 79.6パーセント |
| 北海道 | 1,225人 | 959人 | 78.3パーセント |
| 長野県 | 656人 | 512人 | 78.0パーセント |
| 高知県 | 362人 | 267人 | 73.8パーセント |
| 熊本県 | 325人 | 228人 | 70.2パーセント |
| 島根県 | 388人 | 234人 | 60.3パーセント |
| 宮崎県 | 223人 | 124人 | 55.6パーセント |
| 全国 | 8,762人 | 6,163人 | 70.3パーセント |
注意したいのは母数である。神奈川県は3人中3人で100パーセント、大阪府は5人中3人で60パーセントと、人数が一桁の県は率が大きく揺れる。比べるなら任期終了者が100人を超える県どうしにしたほうがよい。その条件で見ても、島根県は388人という多くの隊員を受け入れながら定住率が全国平均を10ポイント下回っており、受け入れ数の多さと残りやすさは別の話だとわかる。
この差の原因は調査からは直接読めない。ただ、定住した人の半数近くが起業しているという事実と重ねると、仕事を自分で作れるかどうかが分かれ目になっている可能性は高い。住まいと仕事の両方が用意されていない地域では、任期が終わると同時に選択肢がなくなる。地方移住の補助金の制度設計も、任期後の数年を支えられるかどうかで効き方が変わってくる。
受け入れ側が用意できるのは、入る前の段である
制度そのものは拡大している。令和7年度の地域おこし協力隊の隊員数は前年度から286名増えて8,196人となり、取組自治体は11団体増えて1,187団体になった。受入可能な自治体1,461団体の約81パーセントにあたる。隊員の40.3パーセントが女性で、年齢は20代が33.6パーセント、30代が30.1パーセントと、20代と30代で6割を超える。
注目したいのは、その手前に置かれた短期の仕組みである。令和7年度の「おためし地域おこし協力隊」の参加者は1,450人、インターンの参加者は1,414人だった。インターンは令和3年度には106人しかいなかったので、4年で13倍を超えている。数日から数週間だけ関わる段が用意されたことで、いきなり住民票を移す前に相性を確かめられるようになった。
一方で、受け入れ側の体制はまだ薄い。総務省の令和6年度調査では、地域運営組織が行っている活動のうち「移住支援」を挙げた団体は5.7パーセントにとどまる。祭りや運動会の運営が70.6パーセント、交流事業が69.6パーセントであることと比べると、移住者を迎える機能が地域側にほとんど組み込まれていないことがわかる。同じ資料は、地域おこし協力隊などの移住者や関係人口を巻き込むことで活動の持続可能性が高まると位置づけており、方針と実態のあいだに開きがある。企画単位で若い世代と地域を結ぶFLASPOのような外部の担い手が入るのは、この空白を埋める動きにあたる。
よくある質問
定住率70.3パーセントという数字は高いのでしょうか。比較対象を決めないと評価できません。ただ、条件不利地域に数年住んだ人の7割がそのまま残るという水準は、一般的な転職や転居の定着率と比べれば低くはありません。国の側もこの数字を制度の成果指標として扱っており、隊員数を増やす方向の根拠になっています。
任期の途中で辞める人はこの数字に入っていますか。入っていません。集計の対象は任期を終えた隊員で、途中で退任した人は分母から外れています。したがって、着任した人のうち何割が残るかという数字より高く出る性質があります。募集する側も応募する側も、そこは差し引いて読む必要があります。
自治会に入ることは移住の条件になりますか。制度上の条件ではありません。ただ地域運営組織の構成団体として自治会・町内会が参加している割合は78.5パーセントで、地域の話し合いの場に加わる経路が自治会経由になっていることは多いです。加入するかどうかとは別に、誰が集まる場を持っているかは先に確かめておくと動きやすくなります。
移住してすぐ役員を引き受けるべきでしょうか。急ぐ必要はありません。先に地域の行事に参加する側で1年を過ごし、そのあとに自分の希望を伝えて相談する順番のほうが無理がありません。定住した人の半数近くが起業しているという内訳を見ても、最初の数年は自分の生計を立てる時期として使われています。
受け入れる地域の側は何から手をつければよいですか。短期で関われる段を作ることです。おためしやインターンの参加者が急増しているのは、地域が数日単位の受け入れを用意し始めた結果でもあります。地域おこし協力隊の募集を出す前に、来た人が数日過ごせる形を整えておくと、着任後のずれが小さくなります。
出典
総務省地域力創造グループ地域自立応援課「令和7年度 地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」(令和8年4月24日)/同「令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」(令和8年4月24日)/認定NPO法人ふるさと回帰支援センター「2025年移住希望地ランキング」(2026年2月24日)/総務省地域力創造グループ地域振興室「令和6年度 地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書」(令和7年3月)/総務省「令和7年度「地域運営組織」全国セミナー in 鹿児島 資料」
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。


