地域コミュニティの作り方|8,193団体が選んだ設計をたどる | FLASPO MAGAZINE

地域コミュニティの作り方|8,193団体が選んだ設計をたどる

新しく地域の組織を立ち上げる話になると、まず規約と役員をどうするかから始まることが多い。全国で8,193団体が動いている地域運営組織の実態調査を開くと、最初に決まっているのは別のことだった。どの組織を土台にするか、どこまでを範囲とするか、金をどこから引くか。この三つがほぼ先に来ている。実際の分布を順に見ていく。

土台をゼロから作った団体は1割強しかない

総務省の令和6年度調査によれば、地域運営組織は全国で8,193団体が確認された。令和5年度の7,710団体から483団体、6.3パーセント増えており、平成28年度の3,071団体と比べると約2.7倍である。形成されている市区町村は893で、回答した1,741市区町村の51.3パーセントにあたる。半分の自治体には、まだひとつもない。

では既にある8,193団体はどこから生まれたのか。母体となった既存組織を聞いた結果は、自治会・町内会が34.6パーセント、自治会・町内会の連合組織が29.6パーセントで、この二つで6割を超える。公民館運営組織が9.7パーセント、地区の社会福祉協議会が2.0パーセント、農林地保全組織等が0.8パーセントと続き、母体となった既存組織はないと答えた団体は12.0パーセントにとどまった。

母体となった既存組織 割合
自治会・町内会 34.6パーセント
自治会・町内会の連合組織 29.6パーセント
公民館運営組織 9.7パーセント
地区の社会福祉協議会 2.0パーセント
農林地保全組織等 0.8パーセント
その他 10.6パーセント
母体となった既存組織はない 12.0パーセント

作り方の現実は、白紙からの創設より既存組織の組み替えに寄っている。声をかける相手も、集まる場所も、名簿も、すでにどこかにある。ここを無視して並行組織を立てると、同じ人が二つの会議に出ることになって早い段階で息切れする。

範囲はほとんど小学校区で切られている

次に決まるのが区域である。学校が置かれている区域との対応を聞くと、小学校区とおおむね一致する団体が43.1パーセントで最も多い。旧小学校区とおおむね一致するものが16.6パーセント、旧小学校区より狭いものが13.4パーセント、中学校区とおおむね一致するものが11.7パーセントで、市区町村全体とおおむね一致するものは4.5パーセントしかない。

小学校区が選ばれる理由は単純である。歩いて集まれる距離で、住民同士が顔と名前を知っている単位がそこだからだ。統廃合で小学校そのものが消えた地域でも、旧小学校区という言い方が残って範囲の基準になっている。校舎が閉じても、区域の記憶は生き続ける。

自治体の大きさによって形成状況は変わる。人口30万人以上50万人未満の市区町村では74.0パーセントに地域運営組織があるのに対し、5,000人以上1万人未満では33.9パーセント、5,000人未満では27.5パーセントである。都市分類で見ると中核市が85.5パーセント、町村は36.3パーセント、特別区は30.4パーセントとなっている。地域ブロック別では中国地方が80.4パーセントで最も高く、北海道地方は22.3パーセントで最も低い。小さい自治体ほど必要そうに見えて、実際には作られていない。

呼ぶ相手は、名簿ではなく機能で選ばれている

構成団体として参加している組織の分布を見ると、地域の機能をひととおり集めようとしていることがわかる。自治会・町内会が78.5パーセントで最も多く、地域の福祉活動に関わる団体や民生委員・児童委員が57.8パーセント、消防団などの防犯・防災・交通安全に関わる団体が47.9パーセントと続く。老人クラブなどの高齢者団体が43.3パーセント、子ども・青少年育成に関わる団体が42.0パーセント、生涯学習・文化・スポーツに関わる団体が40.6パーセント、PTAが38.3パーセントである。

構成団体ではないが活動に協力している組織も集計されている。こちらは行政関係機関が48.5パーセントで首位、小学校・中学校・高等学校が29.5パーセント、社会福祉協議会や福祉サービス事業所が28.5パーセントという順になる。保育所・幼稚園・認定こども園が19.7パーセント、専門学校や大学が8.4パーセントである。正式なメンバーにしなくても動いてもらう相手を分けているのが実務の形である。

位置づけの説明で総務省が強調しているのは、1戸1票制ではないという点だ。女性も含めた参加者一人一人が当事者意識を持って活動する団体として設計されている。世帯の代表が出てくる従来の寄り合いと、ここが決定的に違う。自治会の仕組みをそのまま持ち込むと、この違いが消えてしまう。

金は2種類か3種類から始まる

収入の話は、規模を決める前に確かめたほうがよい。収入源の上位5項目を挙げてもらった結果では、回答のあった項目数は2種類が29.3パーセント、3種類が27.4パーセントで多数を占める。1種類だけが18.3パーセント、4種類が13.2パーセント、5種類が9.6パーセント、収入項目なしが1.7パーセントだった。最初から多角化している組織はほとんどない。

主な収入源(第1位から第5位までの複数回答) 割合
市区町村からの助成金・交付金等 85.2パーセント
構成員からの会費 42.0パーセント
寄附金 20.9パーセント
利用者からの利用料 20.1パーセント
収益事業の収益 16.7パーセント
市区町村からの受託事業収入 14.1パーセント
公的施設の指定管理料 13.7パーセント
民間団体からの助成金 10.5パーセント
国・都道府県等からの助成金・交付金等 5.8パーセント

現実的な立ち上げ方は、市区町村の助成と構成員の会費の二本を先に確保し、動き出してから利用料や収益事業を足す順番になる。国や都道府県の助成を挙げた団体が5.8パーセントしかないのは、窓口が市区町村に集約されているためで、相談先を間違えると時間を失う。

立ち上げ費用そのものにも枠がある。地方財政措置では、事務局の人件費や事務所賃貸料、光熱水費、備品消耗品費、旅費、事務局職員の研修費といった運営支援が普通交付税の対象になり、形成支援としてワークショップの開催費、ファシリテーターの旅費及び謝金、事務所開設のための施設改修費が特別交付税の対象になる。措置率は2分の1で財政力補正がかかり、施設改修費は1組織1回限りである。令和7年度からは、ワークショップ開催のための臨時職員経費の上限が200万円から220万円に引き上げられた。

法人にするかどうかは、あとから決めてよい

組織形態の分布は明快である。法人格を持たない任意団体が90.9パーセントを占め、NPO法人が3.4パーセント、認可地縁団体が2.0パーセント、一般社団法人が1.1パーセントにすぎない。任意団体のままで一部の事業だけ法人化している団体も1.2パーセントある。契約や不動産の保有が必要になるまでは、任意団体で動かしているのが実情だ。

場所については、活動拠点を持つ団体が97.1パーセントで、そのうち64.2パーセントが公共施設を使っている。新しく建てるより、空いた施設を借りるか譲り受ける形が主流である。空き家バンクに出るような民間の物件が拠点になる例もあるが、まず自治体が持っている施設の状況を確かめる順番になる。

人の手当てには集落支援員という制度がある。令和6年度の配置状況は専任が2,645人、自治会長などとの兼務である兼任が3,022人で、特別交付税の措置額は専任1人あたり上限500万円、兼任は40万円である。専任のおよそ5割が50代以下、およそ5割が元会社員や元公務員、元教員で、およそ9割がそれまで暮らしていた自治体で活動している。加えて総務省は、立ち上げや運営を外から支える中間支援者の把握を進めており、令和6年度の研究会では特定非営利活動法人や一般社団法人、大学の研究者が確認された。若い世代を企画単位で地域に呼び込むFLASPOのような外部の担い手も、この支え手の列に並ぶ。

よくある質問

立ち上げの相談はどこに持っていけばよいですか。市区町村の地域振興を担当する部署が起点になります。形成支援の特別交付税措置は自治体が使う仕組みなので、住民側だけで進めると費用の枠に手が届きません。総務省のサイトには立ち上げや運営の課題を4つに分類して解決のヒントを載せたテキストと、自治体職員向けに話し合いの進め方をまとめた資料が置かれています。

人が集まらない状態で作っても続きますか。続きにくいのは数字にも出ています。継続的に活動していく上での課題として、活動の担い手となる人材の不足を挙げた団体が79.2パーセント、団体の役員・スタッフの高齢化が62.1パーセント、次のリーダーとなる人材の不足が61.8パーセントでした。人の問題は立ち上げ後に必ず来るので、最初から交代の想定を入れておくほうが安全です。

既にある自治会と衝突しませんか。関係と役割分担を課題に挙げた団体は22.9パーセントで、無視できる大きさではありません。母体が自治会や連合組織である団体が6割を超えることを踏まえると、対立する新組織を作るのではなく、既存の枠に事業を足す形が衝突を避けやすい選び方になります。

認可地縁団体にする意味はありますか。不動産を団体名義で持つ必要が出たときに意味があります。集会所や土地を個人名義で預かっている状態は、相続が起きた時点で問題になります。逆にそうした資産を持たない段階では、任意団体のままで運営したほうが手続きの負担が軽くなります。

最初の1年は何を成果にすればよいですか。事業の本数より、住民の意見が形になった計画が1本あることのほうが後で効きます。話し合いの記録を計画に落とし、部会の単位に割っておくと、翌年の担い手が引き継げます。過疎化対策の交付金を使う段階でも、その計画が申請の土台になります。

出典

総務省地域力創造グループ地域振興室「令和6年度 地域運営組織の形成及び持続的な運営に関する調査研究事業 報告書」(令和7年3月)/総務省「令和7年度「地域運営組織」全国セミナー in 鹿児島 資料」(令和7年12月19日)/総務省「地域運営組織について」/総務省「地域運営組織の立ち上げ・運営の課題と解決のヒント」/総務省「地域運営組織の活動・組織運営を見直すためのテキスト」


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