お金はどこから出て、どこへ入っているのか
地域で寄附先を選ぶという話をする前に、寄附が全体としてどう動いているかを押さえておきたい。総務省が令和8年7月31日に公表したふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)には、受け取った側と控除を受けた側の両方が都道府県別に載っている。
出し手の側は都市に集まっている。令和8年度課税の住民税控除額は全国で9,524億円だが、そのうち東京都が2,350億円で24.7%を占める。神奈川県の985億円、大阪府の749億円、愛知県の679億円、埼玉県の559億円を加えた上位5都府県で55.9%になる。東京都の控除適用者は211万人で、1人あたりの控除額は約11万1,100円と全国平均の約8万2,700円を大きく上回る。
受け手の側はもう少し散らばっている。受入額の上位10都道府県の合計は全体の48.3%で、上位5道県では31.6%にとどまる。出し手の集中と比べると、受け入れは広い範囲に分かれているということになる。地域の産業と寄附の関係は特産品と地方創生|ふるさと納税1兆3,314億円が地域に残すものでも扱っている。
都道府県別の受入額を並べてみる
令和7年度の受入額を都道府県でまとめると、次の表のようになる。1件あたりの額は受入額を受入件数で割って算出し、前年度比は令和6年度の受入額との比較である。
| 順位 | 都道府県 | 受入額 | 受入件数 | 1件あたり | 前年度比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 北海道 | 1,887.7億円 | 9,164,798件 | 約20,600円 | +4.9% |
| 2 | 宮崎県 | 624.7億円 | 3,103,043件 | 約20,100円 | +7.2% |
| 3 | 福岡県 | 602.1億円 | 3,428,050件 | 約17,600円 | +7.5% |
| 4 | 静岡県 | 584.3億円 | 3,169,271件 | 約18,400円 | +9.5% |
| 5 | 山梨県 | 514.1億円 | 2,196,237件 | 約23,400円 | +12.1% |
| 6 | 大阪府 | 472.7億円 | 2,002,406件 | 約23,600円 | +19.2% |
| 7 | 茨城県 | 449.9億円 | 2,150,075件 | 約20,900円 | +15.0% |
| 8 | 新潟県 | 440.1億円 | 1,224,383件 | 約35,900円 | -0.7% |
| 9 | 鹿児島県 | 439.9億円 | 2,319,586件 | 約19,000円 | +2.2% |
| 10 | 山形県 | 415.8億円 | 1,703,261件 | 約24,400円 | -7.5% |
北海道が2位の3倍という開きは、一つの大きな市が引っ張った結果ではない。海産物と乳製品、肉の産地が道内の各地に分かれて並び、それぞれが寄附を集めた合計として積み上がっている。11位以降には熊本県の407億円、愛知県の398億円、宮城県の377億円、佐賀県の364億円といった県が続く。
件数の側から見ると、集中はもう少し際立つ。北海道の916万件は全国5,963万件の15.4%にあたり、福岡県の343万件が5.7%、静岡県の317万件が5.3%、宮崎県の310万件が5.2%と続く。この4道県だけで全体の31.6%、寄附の3件に1件近くがここへ向かっている計算になる。額の順位と件数の順位がずれる地域は、品の価格帯が全国の平均から外れていると考えればよい。
1件あたりの額には2倍以上の開きがある
表の右の列を縦に追うと、地域ごとの性格が見えてくる。受入額が100億円を超える都道府県のなかで1件あたりが最も大きいのは東京都の約6万7,700円である。ただし件数は23万件と少なく、高額の品や体験型の返礼品に寄附が集まった結果だと読める。前年度から件数が55.1%増えており、動きの大きい地域でもある。
規模を保ちながら単価が高いのは新潟県の約3万5,900円で、米と酒という単価の取りやすい品目がそろっている。沖縄県の約3万6,600円、滋賀県の約3万5,300円、秋田県の約3万3,800円も同じ帯に入る。
反対に単価が低いのは高知県の約1万5,000円、和歌山県の約1万5,500円、愛媛県の約1万6,100円である。柑橘や野菜、魚介の小分けといった1万円前後の品で件数を積む構えになっている。控除上限が小さい人や、品数を増やしたい人にとってはこちらの地域のほうが選びやすい。地域によって並ぶ価格帯が違うというのは、寄附の予算から考えるときに効いてくる差である。
単年の増減を地域の実力と読まない
前年度比の列には大きな振れがある。令和7年度は大阪府が19.2%、茨城県が15.0%、愛知県が14.9%、山梨県が12.1%と伸び、上位の外では秋田県が36.0%、千葉県が33.4%の伸びを見せた。一方で山形県は7.5%、長野県は6.6%、鳥取県は10.4%それぞれ減り、石川県は28.2%の減少となっている。
この振れ幅は人気の盛衰だけで説明できない。災害が起きた年に支援の寄附が集まれば翌年は反動で下がり、大口の企業や個人からの寄附が入った年度は突出する。返礼品の基準の見直しで扱える品が変わった地域も影響を受ける。1年分の数字は順位表ではなく、その年度の記録として読むのが正しい。
地域を選ぶ材料にするなら、複数年度を並べて動きの小さい地域と大きい地域を見分けておきたい。北海道や宮崎県のように件数も額も安定している地域は、品切れが起きにくく発送の体制も整っている。逆に短期間で急に伸びた地域では、人気の品が早く締め切られることがある。
縁のある地域を選ぶという使い方
数字から離れた選び方もある。出身地、学生のときに住んだ町、旅行で通った土地といった縁をたどって寄附先を決める人は多い。現況調査には、そうした継続的な関わりを作ろうとする自治体の例も載っている。
新潟県南魚沼市は、1週間から2週間ほど家族で滞在しながら地域の保育園に通う体験型の返礼品を用意し、令和7年度に160万円を受け入れた。島根県海士町は寄附をきっかけに地域と関わり続ける仕組みとしてアンバサダー制度を設け、697万円を集めている。制度は令和5年11月に始まり、令和8年6月末時点で約500人が参加しているという。
目標額と期間を定めて特定の事業に寄附を募るクラウドファンディング型も広がっている。令和7年度は516団体が実施し、1,547の事業に333億円が集まった。秋田県はツキノワグマの大量出没を受けた対策に1,243万円を集め、目標の124%に達している。地域の金融機関が仲立ちをする例は地方銀行とふるさと納税の関係とは何か?取り組みを丁寧に徹底解説で紹介した。地域との関わり方を探す手がかりはFLASPOにもある。
よくある質問
自分の住む自治体に寄附できますか。寄附そのものはできるが、住んでいる自治体への寄附では返礼品を受け取れない。控除の扱いも通常の寄附金控除と同じになるため、ふるさと納税の仕組みを使う意味は薄い。
受入額の多い地域を選ぶほうが安心ですか。件数の多い地域は在庫や発送の体制が整っている傾向がある。ただし人気の品は早い時期に締め切られるため、額の大小よりも申込みの時期のほうが選択肢の幅を左右する。
控除額が多い都道府県は損をしているのですか。住民税の一部が他の地域に移るため、都市部の自治体では税収が減る。東京都では令和8年度課税で2,350億円が控除されており、この構図は制度をめぐる議論の中心になっている。
都道府県への寄附と市区町村への寄附は違いますか。どちらも対象になる。表の数値は都道府県分と市区町村分を合計したもので、都道府県は広域の事業、市区町村は地元の事業に使う形が多い。
地域の数字はどこで確認できますか。現況調査には全都道府県の受入額と受入件数、住民税控除額と控除適用者数が掲載されている。毎年7月末に更新されるため、年度をまたぐ比較もこの資料だけでできる。
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