20代の月収は、所定内給与という物差しで見える
同期と給与の話をしても、手取りなのか額面なのか、残業代が入っているのかで数字が噛み合わない。比べる土台がほしいなら、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査の所定内給与額が使いやすい。残業代と賞与を含まない、決まって支給される部分だけの金額だ。
男女計の所定内給与額は、20〜24歳が23万2,500円、25〜29歳が26万7,200円。全年齢計は33万400円で、20代は平均の7割から8割の水準にいる。20〜24歳を100とした年齢階級間の指数では、25〜29歳が114.9、30〜34歳が128.8になる。20代の5年で15%ほど、30代前半までの10年で3割ほど増える形だ。
| 年齢階級 | 男女計 | 男 | 女 | 指数(20〜24歳=100、男女計) |
|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 23万2,500円 | 23万4,200円 | 23万600円 | 100.0 |
| 25〜29歳 | 26万7,200円 | 27万4,700円 | 25万8,100円 | 114.9 |
| 30〜34歳 | 29万9,500円 | 31万6,300円 | 27万1,600円 | 128.8 |
| 年齢計 | 33万400円 | 36万3,100円 | 27万5,300円 | 142.1 |
注目したいのは男女差の小ささだ。20〜24歳では男23万4,200円に対して女23万600円で、差は3,600円しかない。それが30〜34歳で4万4,700円まで開く。20代は差が開く前の時期にあたる。
入口の差は学歴で3万円、5年後には4万円
同じ20代でも、出発点は学歴で分かれる。20〜24歳の所定内給与額は、高校卒21万7,300円、専門学校卒23万1,000円、高専・短大卒23万400円、大学卒25万800円、大学院卒28万6,200円。高校卒と大学卒の差は3万3,500円だ。
この差は25〜29歳で縮まらない。高校卒24万3,000円、大学卒28万3,900円で、開きは4万900円に広がる。年齢計まで見ると高校卒28万8,900円、大学卒38万5,800円、大学院卒49万7,000円となり、差は年齢とともに拡大していく。ただし20代前半の段階では3万円台であり、賞与や残業代を含めない物差しで見れば、埋められない溝というほどではない。
つまり20代のライフプランで効くのは、入口の差そのものよりも、その差を固定費に吸わせるか、積み上げに回すかという配分だ。新卒時点の初任給と、その後の平均給与までの距離感は新卒就活の年収の記事で詰めている。
5年で増える3万4,700円を、どこに置くか
20〜24歳の23万2,500円から25〜29歳の26万7,200円まで、差は3万4,700円。この増えた分を5年間そのまま積めば、単純計算で208万2,000円になる。昇給のたびに家賃と通信費を上げていけば、同じ金額が固定費に消える。20代で決まるのは絶対額ではなく、増えた分の行き先だ。
固定費が一度上がると下げにくいのは、契約で縛られているからだ。家賃は契約期間、通信は端末代の分割、車は残価設定の支払いと、どれも数年単位で動かせない。逆に、増えた分を先に別の口座へ逃がしてしまえば、残りで暮らす形が自動的に出来上がる。先取りの仕組みの作り方は貯金の習慣化の記事にまとめた。
参考として、総務省統計局の家計調査(2024年平均)では単身世帯の消費支出は月16万9,547円だった。これは平均年齢58.7歳の全年齢平均なので20代の実額ではないが、所定内給与23万円台の手取りと並べると、生活費の上限をどのあたりに置くかの感覚はつかめる。
同じ調査の単身勤労者世帯は、実収入が月37万247円で平均年齢43.5歳。20代の所定内給与とは13万円以上の開きがあり、生活の規模をいまの収入のまま先へ延長すると見積もりを誤る。将来の支出は将来の収入で測り、いまの支出はいまの収入で測る。この2つを混ぜないだけで、計画の精度はかなり上がる。
20代にしかない制度を、取りこぼさない
学生のうちに国民年金の保険料を猶予していた人は、ここが宿題になっている。日本年金機構の学生納付特例制度は、所得が「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」の範囲なら申請できる仕組みで、承認された期間は老齢基礎年金の受給資格期間には入る。ただし年金額の計算には入らない。
取り戻す手段は追納で、承認を受けた期間から10年以内なら納められる。注意したいのは加算額で、承認の翌年度から起算して3年度目以降に追納すると、当時の保険料額に上乗せが付く。つまり就職してから2年のうちに手を付けるほど安く済む。放置すれば10年で権利そのものが消える。
追納しなかった分がどれだけ響くかは、受け取る側の金額で見るとつかみやすい。老齢基礎年金の満額は令和8年度で月7万608円で、これは20歳から60歳までの40年を納めきった場合の金額だ。学生時代の2年が空いたままなら、その分だけ満額から削られる。保険料の水準と納める人数の内訳は年金の保険料の記事で扱っている。
25歳までに決めると後が楽になること
勤め先は固定しないほうがいい。新規学卒就職者の離職状況では、令和4年3月卒の3年以内離職率は大学卒33.8%、高校卒37.9%だった。3人に1人以上が3年以内に動く環境で、いまの会社の昇給表を前提にした計画を立てても、すぐ合わなくなる。
代わりに決めておくと効くのは3つある。ひとつは家賃の上限で、所定内給与が23万円台から26万円台へ動く5年の間、上限を据え置けるかどうかで積み上げが変わる。ふたつめは年金の加入歴に空白を作らないことで、追納の期限と加算額の条件はここに直結する。みっつめは生活費の3か月から6か月分を、動かせる形で持っておくことだ。転職の合間や引っ越しの初期費用は、この手元資金で吸収できる。
勤め先を変える以外にも、働く場所を変える選択肢がある。地域を移すと家賃の水準が変わるため、同じ所定内給与でも手元に残る額が変わる。地域で働くことを試しながら考えたい人は、FLASPOのような地域と関わる入口から当たってみる手もある。
この3つはいずれも、勤め先や職種が変わっても意味を失わない条件になっている。昇給率の見込みや役職の時期を先に置く計画は、転職のたびに全面的な書き直しが必要になる。動いても残る条件から埋めるほうが、手入れの回数が少なくて済む。
よくある質問
所定内給与と手取りはどれくらい違いますか
所定内給与は額面から残業代と賞与を除いた金額なので、ここから社会保険料と税が引かれる。20〜24歳の23万2,500円がそのまま使える金額ではない。比べる目的なら額面の物差しで統一したほうが混乱が少なく、生活費を組むときだけ給与明細の差引支給額を使うという使い分けが現実的だ。
20代のうちに貯蓄はいくら持っておくべきですか
金額を先に決めるより、月数で持つほうが崩れにくい。生活費の3か月から6か月分という置き方なら、収入が変わっても自動的に目標が追従する。大卒の3年以内離職率が33.8%という前提では、転職や空白期間を吸収できる手元資金のほうが、長期の積立より先に要る。
学生納付特例の追納は優先度が高いですか
期限があるという点で優先度は高い。追納できるのは承認期間から10年以内で、承認の翌年度から3年度目以降は加算額が付く。つまり待つと高くなり、やがて払えなくなる。利回りの見通しに左右されずに老齢基礎年金の額が確実に増える支出なので、投資を始める前に片付けてしまうほうが判断が単純になる。
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