行政の計画書にも、企業の地域貢献の資料にも、この言葉はよく出てくる。ただ、会議で二人が同じ語を使っていても、片方は自治会を思い浮かべ、もう片方は移住者どうしの集まりを思い浮かべている、ということが起きる。輪郭がゆるい言葉だからこそ、まず制度として数えられている部分がどこまでなのかを確かめておきたい。数えられる範囲がはっきりすると、数えられない部分の位置も見えてくる。
法律が線を引いているところ
制度上の手がかりは地方自治法にある。同法第260条の2第1項は、町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体を想定し、その区域の住民相互の連絡を行うなど、良好な地域社会の維持及び形成に資する地域的な共同活動を行うことを目的とするもの、と定めている。総務省の調査では、これに当たる団体を地縁団体と呼んでいる。
鍵は「地縁」である。住んでいる場所によって自動的に対象が決まる集まりだけが、ここに含まれる。同じ資料は、婦人会や子供会、青年団はこの範囲に入らないと明記している。関心や属性でつながる集まりは、地域で活動していても地縁団体ではない。線はそこで引かれている。
この線引きは、実務では手続きの差になって表れる。区域の住民なら誰でも構成員になれることが求められるため、参加者を選ぶ運営はできない。逆に、テーマで人を集めるNPOや任意団体は、この制約を受けない代わりに、区域を代表する立場も持たない。地域コミュニティという語が曖昧に感じられるのは、性質の違う二種類を一語でまとめているからだ。
全国に29万、呼び名は土地ごとに違う
市町村が把握している地縁団体の総数は、令和5年4月1日現在で295,838団体だった。これは全国の市町村1,741すべてを対象にした総務省の調査による数字である。名称別に見ると、最も多いのが自治会で130,569団体、全体の44.1パーセントを占める。
次に多いのが町内会の67,329団体で22.8パーセント。以下、区が34,735団体で11.7パーセント、町会が17,882団体で6.0パーセント、部落会が4,218団体で1.4パーセント、区会が2,731団体で0.9パーセントと続く。どれにも当てはまらないその他が38,374団体あり、13.0パーセントを占める。
呼び名がこれだけ割れているのは、制度が上から名称を決めたのではなく、もともとあった集まりを法律が後から受け止めたからだ。転居して名称が変わると別物に見えるが、担っている役割はおおむね重なる。他の地域の事例を参照するときは、名前ではなく、区域と役割で対応づけたほうが読み違えが少ない。
| 名称 | 団体数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 自治会 | 130,569 | 44.1パーセント |
| 町内会 | 67,329 | 22.8パーセント |
| 区 | 34,735 | 11.7パーセント |
| 町会 | 17,882 | 6.0パーセント |
| 部落会 | 4,218 | 1.4パーセント |
| 区会 | 2,731 | 0.9パーセント |
| その他 | 38,374 | 13.0パーセント |
| 合計 | 295,838 | 100.0パーセント |
実際に手を動かしている領域
何をしている集まりなのかも、規約の目的から見当がつく。総務省が平成30年度から令和4年度までに認可した団体について集計したところ、区域の環境美化と清掃活動を掲げる団体が93.3パーセント、回覧板や会報の回付といった住民相互の連絡が92.5パーセント、集会施設の維持管理が85.8パーセントだった。ここまでがほぼ全ての団体に共通する土台である。
その上に、地域によって差のつく活動が乗る。防災と防火が48.5パーセント、交通安全と防犯が37.4パーセント、文化レクリエーション活動が31.5パーセント、スポーツ・レクリエーション活動が26.0パーセント、盆踊りや祭り、敬老会などの行事開催が25.8パーセント。高齢者を主な対象とした社会福祉活動は22.0パーセント、子どもを対象としたものは19.8パーセントとなっている。
並べてみると、掃除と情報伝達と集会所の維持という三つが中核で、防災や見守りはそこに積み増された機能だと分かる。行政から期待される役割が増えるたびに、この土台の上に仕事が足されてきた。担い手が細っているという話は、土台そのものが揺らいでいるというより、積み増しの速度に人手が追いついていないという形で現れている。
加入率の下がり方は、都市の規模で違う
加入率については、総務省の研究会が平成22年度から令和2年度までの推移を追っている。毎年度の加入率を把握している624の市区町村を人口規模で8つに区分して比べたところ、区分によって水準も下がり方もはっきり違っていた。
最も低いのは人口50万以上の市(指定都市を除く)で、各年度の平均加入率は70パーセントに届かない。逆に最も高いのは人口1万未満の市町村で、90パーセント程度を保っている。10年間の減少幅を見ると、最大は人口20万以上30万未満の区分でマイナス7.6ポイント、最小は人口1万未満でマイナス2.9ポイントだった。小さな自治体ほど水準が高く、下げ幅も小さい。
興味深いのは、加入率や加入世帯数の目標を条例や計画に定めている市区町村と、定めていない市区町村を比べた結果である。同じ資料は、目標を定めていることの効果は必ずしも確認できない、と結論している。705の市区町村が自治会に期待する方向性を条例や計画で掲げているが、数値目標を置くことと実際の加入率の動きは、直接には結びついていない。
法人格を取るという選択肢
地縁団体のうち、市町村長の認可を受けて法人格を持つものを認可地縁団体という。総数は平成30年度末の52,204団体から令和4年度末には56,078団体へ増えた。対前年度の増加率は1.5パーセントで、令和4年度中の認可は840団体、認可取消は11団体だった。全体29万に対して2割弱という水準である。
法人格を取る動機は、もともと不動産の扱いにあった。集会所の土地や建物を個人名義で持つと、相続のたびに名義の問題が起きる。ここを団体名義にできるのが認可の実益だった。令和3年の第11次地方分権一括法による改正で、同年11月26日から、不動産等を保有するかどうかにかかわらず幅広い地域活動を行う団体も認可の対象になっている。
ただ、その新しい目的での取得はまだ少ない。不動産等を団体名義で保有すること以外の目的で法人格を取った団体は、令和3年度77団体、令和4年度85団体にとどまる。認可地縁団体が所在する市町村は1,479で、全市町村1,741の85.0パーセント。制度としては全国に行き渡りつつあるが、使われ方はまだ従来の延長線上にある。
よくある質問
自治会に入らないと不利になりますか
加入は任意であり、入らないことを理由に行政サービスが受けられなくなることはない。実務上の差が出やすいのは、ごみ集積所の管理、回覧される地域の情報、災害時の安否確認といった、団体が担っている部分である。加入するかどうかより、その三つを自分がどう補うかを先に考えると判断しやすい。
地域コミュニティとNPOはどう違いますか
区域の住民であれば誰でも構成員になれることが求められるのが地縁団体で、目的に賛同する人が集まるのがNPOなどの団体である。前者は代表性を持つ代わりに活動の幅が制約され、後者は機動力がある代わりに区域を代表しない。近年は、両者が役割を分けて組む形が増えている。地域の課題を整理する段階では、分析の枠組みを共有しておくと議論がかみ合いやすい。
移住した直後でも入れますか
区域に住所があれば構成員になれるのが原則なので、居住年数は要件にならない。むしろ、先に顔を合わせておいたほうが、家や仕事の情報が届きやすくなる。移り住む前の段階で関わりを持ちたい場合は、関係人口として通いながら接点をつくる方法もある。若い世代と地域を企画でつなぐFLASPOが扱ってきた事例でも、最初の接点が後の定着を左右している。
役員のなり手がいないときはどうすればよいですか
総務省の研究会は、担い手の確保と並んで、役員の負担軽減と透明性の確保を検討の柱に置いている。行政からの依頼事項の整理、窓口の一元化、活動内容の見直しが具体策として挙がる。引き受け手を探す前に、引き受けたときの仕事量を減らす順番で手をつけたほうが、結果として人は残る。
出典
総務省自治行政局市町村課「地縁による団体の認可事務の状況等に関する調査結果」(令和6年3月)/総務省自治行政局市町村課「自治会・町内会の活動の持続可能性について」(令和3年10月25日)/総務省「自治会・町内会等とは」
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