「最近は地域のつながりが薄くなった」という言い方は、自治体の計画書にも新聞の見出しにもよく出てくる。ただ、何がどれだけ薄くなったのかを数字で示した資料は意外と少ない。付き合いの頻度なのか、助け合いの実感なのか、団体の数なのか。指している対象が違えば、打つ手も変わってしまう。ここでは政府が実施した四つの調査を並べ、どの層が動いていて、どの層が動いていないのかを切り分けてみたい。
「付き合っている」と答える人は半分を超えている
内閣府政府広報室の社会意識に関する世論調査(令和6年10月調査)は、地域での付き合いの程度を尋ねている。「よく付き合っている」が9.3パーセント、「ある程度付き合っている」が45.0パーセント。合わせて54.2パーセントが、付き合っている側に分類される。半数を超えているという結果は、つながりが崩壊したという語感とは噛み合わない。
望ましい付き合いの程度は、1年あとの令和7年10月調査でこう出ている。「地域の行事や会合に参加したり、困ったときに助け合う」が26.2パーセント、「地域の行事や会合に参加する程度の付き合い」が27.4パーセント、「世間話をする程度の付き合い」が21.9パーセント、「挨拶をする程度の付き合い」が21.4パーセントだった。そして「地域での付き合いは必要ない」は1.4パーセントにとどまる。
最後の数字に目を留めたい。付き合いそのものを不要と考える人は、50人に1人もいない。望まれているのは関係を断つことではなく、関係の深さを自分で選べることである。行事への参加まで望む人と、挨拶程度でよいと考える人が、それぞれ4分の1ずつ並んでいる。ひとつの濃さを全員に求める運営は、この分布とずれる。加入率が下がる理由を意欲に求めると、対策の方向を誤りやすい。
孤独感は4割、ただしこの4年は動いていない
内閣府孤独・孤立対策推進室の「人々のつながりに関する基礎調査」は、令和6年12月1日を調査期日として全国の満16歳以上2万人に調査票を配布し、10,876件の有効回答を得た。有効回答率は54.4パーセントである。孤独感を直接尋ねた設問では、「しばしばある・常にある」が4.3パーセント、「時々ある」が15.4パーセント、「たまにある」が19.6パーセントで、合計すると約4割になる。
ここで見落とされやすいのは、この割合が動いていないことだ。令和3年から令和6年までの4回分を並べると、水準はほとんど変わらない。
| 孤独感 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 |
|---|---|---|---|---|
| しばしばある・常にある | 4.5% | 4.9% | 4.8% | 4.3% |
| 時々ある | 14.5% | 15.8% | 14.8% | 15.4% |
| たまにある | 17.4% | 19.6% | 19.7% | 19.6% |
| ほとんどない | 38.9% | 40.6% | 41.4% | 40.6% |
| 決してない | 23.7% | 18.4% | 17.9% | 18.4% |
つながりが年々細っているのなら、上二段は右肩上がりになるはずである。そうなっていない以上、孤独感の総量が急に増えたというより、もともと一定の割合で存在していたものが見えるようになった、と読むほうが実態に近い。施策を組むときも、増加を食い止める発想より、すでにそこにいる層をどう見つけるかという発想のほうが噛み合う。
はっきり変わったのは気持ちより世帯の形
明確な変化が出ているのは、人の意識ではなく世帯の構造のほうだ。令和7年版高齢社会白書によれば、65歳以上の者のいる世帯は令和5年現在で2,695万1千世帯あり、全世帯5,445万2千世帯の49.5パーセントを占める。昭和55年には三世代世帯が世帯構造の半数を占めていたが、令和5年では夫婦のみの世帯と単独世帯がそれぞれ約3割になった。
一人暮らしの比率も上がっている。65歳以上の人口に占める一人暮らしの割合は、昭和55年には男性4.3パーセント、女性11.2パーセントだったものが、令和2年には男性15.0パーセント、女性22.1パーセントへ。さらに令和32年には男性26.1パーセント、女性29.3パーセントになると見込まれている。
世帯が小さくなると、地域に出せる人手は世帯数ほどには増えない。三世代が同居していた頃は、誰か一人が当番に出ても家の中は回った。夫婦のみや単身の世帯では、抜けた分をほかの誰かが埋められない。加入率の低下として語られる現象の一部は、意欲ではなく世帯側の余力の問題として起きている。地方の人口減少を人数の話としてだけ見ると、この部分が抜け落ちる。
効いているのは「気軽に話せる相手がいない」
同じ孤独・孤立の調査には、属性別の集計が付いている。気軽に話せる相手が「いない」と答えた人のうち、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた割合は24.5パーセント。相手が「いる」人では2.7パーセントだった。開きは9倍近い。相談相手の有無でも、いない人が21.2パーセント、いる人が2.7パーセントで、同じ傾向が出る。
交流の頻度も測られている。同居していない家族や友人と直接会って話すことが「全くない」人は9.3パーセント。社会活動については「特に参加はしていない」が50.6パーセントで、いずれかの活動に参加している人は46.6パーセントだった。参加していない側のほうがわずかに多い。
行政やNPOからの支援については、日常生活に不安や悩みがあると答えた人のうち、支援を「受けていない」が85.1パーセントを占めた。受けていない理由の最多は「支援が必要ではないため」で62.6パーセント。逆に言えば、必要ではないと答えなかった人が4割近く残る。窓口の数が足りないというより、窓口までの経路が見えていない状態に近い。限界集落のように人口が極端に少ない地域では、この経路の細さが生活の維持そのものに直結する。
受け皿は増えている。足りないのは人のほう
組織の側の数字も見ておきたい。総務省の調査では、地域運営組織は令和6年度に全国で8,193団体が確認された。令和5年度の7,710団体から483団体増え、平成28年度の3,071団体と比べると約2.7倍である。ただし形成されている市区町村は893にとどまり、全1,741市区町村の半数程度でしかない。
整備は進んでいるが、まだ全国を覆ってはいない。そして整備が進んだ地域でも、詰まる場所は共通している。同じ調査で最も多く挙げられた課題は「活動の担い手となる人材の不足」で79.2パーセント。次いで「団体の役員・スタッフの高齢化」が62.1パーセント、「次のリーダーとなる人材の不足」が61.8パーセントと続く。上位三つがすべて人に関するものだった。
資金より先に人が詰まっている、というのがこの並びの読み方になる。若い世代と地域の接点を設計してきたFLASPOの現場でも、不足しているのは予算より、最初に声をかける相手だという話のほうが多く出る。関係人口という考え方が広がったのは、この入口を住民登録と切り離して考えたかったからでもある。
よくある質問
地域のつながりは本当に弱くなっているのですか。付き合っていると答える人の割合は54.2パーセントで、孤独感の割合もこの4年はほぼ横ばいだった。弱まったと言い切れる変化は、気持ちの面よりも世帯構成のほうに現れている。単身と夫婦のみの世帯が増えたぶん、同じ人数でも地域に出せる手が減った。
自治会に入る人が減っているのはなぜですか。要因は一つではないが、世帯の余力が落ちたことと、望まれる付き合いの深さが人によって違うことの二つが大きい。望ましい付き合いとして挨拶程度を選んだ人は21.4パーセントいる。加入が全員に同じ役割を求める形になっていると、この層は入口で止まってしまう。
孤独を感じやすいのはどの年代ですか。令和6年の調査では、孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた割合は20歳代で7.4パーセント、30歳代で6.0パーセントと高く、70歳代は2.5パーセント、80歳以上は2.8パーセントだった。高齢者の課題として語られやすいが、数字の上では若い世代のほうが高く出ている。
自分の地域の状況を調べるには何から見ればよいですか。市区町村に地域運営組織があるかどうかを確かめるのが早い。全国で893市区町村にあるので、およそ半々の確率で存在する。あれば活動報告に地域課題の一覧が載っていることが多く、なければ自治会連合会や社会福祉協議会が近い役割を担っている場合が多い。
周囲に声をかける人はどのくらいいますか。まわりに不安や悩みを抱えている人がいたら積極的に声掛けや手助けを「しようと思う」と答えた人は48.7パーセントだった。半数近くが手を出す意思を持っている一方で、支援を受けていない人が85.1パーセントいる。意思と行動のあいだに挟まっているのは、きっかけの不足である。
出典
内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和6年)」/内閣府「令和7年版高齢社会白書 第1章第1節3 家族と世帯」/総務省地域力創造グループ地域振興室「地域運営組織について」/内閣府政府広報室「社会意識に関する世論調査(令和6年10月調査)」/内閣府政府広報室「社会意識に関する世論調査(令和7年10月調査)」
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。


