掲げた言葉が通じているのは四割ほど
事業計画の表紙に「SDGs」と書き込むと、それだけで方向が伝わった気になる。買う側の理解がどこまで追いついているかは、計画書を書いている段階ではまず確かめない。地域で小さく起業するなら、ここを先に見ておいたほうが言葉の選び方が変わる。
消費者庁は令和7年11月6日に「令和7年度第2回消費生活意識調査」の結果を公表している。インターネットを使った調査で、サンプルは人口構成比に応じて割り付けた5,000人、実施期間は令和7年10月2日から10月6日までの5日間である。
言葉の浸透を聞いた問いでは、「言葉と内容の両方を知っている」と答えた割合がいちばん高いのがSDGsの42.2%だった。「言葉は知っているが内容は知らない」が37.5%、「どちらも知らない」が20.3%と続く。つまり中身まで届いているのは四割強で、聞いたことはあるという層が同じくらいいる。
同じ問いの他の言葉はもっと細い。サステナビリティが23.6%、フェアトレードが21.4%、サステナブルファッションが10.7%、エシカル消費は7.4%、ESG投資が6.2%、消費者市民社会が5.9%である。商品の説明文にこれらを並べても、内容まで通じる相手は十人に一人前後しかいない。
関心の順番では気候変動が先に来る
どの課題に関心が集まっているかは、商品の説明をどこに寄せるかの判断材料になる。社会的課題への関心を聞いた問いでは、「非常に関心がある」の割合が最も高いのは気候変動の23.3%で、次が生物多様性や資源循環などを含む地球環境問題の16.6%だった。
地域活性化・被災地支援は10.8%で三番目に入る。障がい者支援が10.0%、伝統文化・芸術支援が9.8%、ジェンダー平等を除く人権問題と動物福祉がそれぞれ8.7%、ジェンダー平等が6.8%、開発途上国支援が5.1%と並ぶ。
ここに「ある程度関心がある」を足すと順位の見え方が変わる。地域活性化・被災地支援は46.9%が加わって57.7%になり、気候変動の70.2%に次ぐ厚みを持つ。強い関心を持つ人は少なくても、話を向ければうなずく人は半分を超えるという形である。
地域で起こす事業は、この「地域活性化」の枠で受け取られる。開発途上国の労働環境を語るよりも、どこの誰がどう作っているかを示すほうが、関心の分布には合っている。地域の事業がどんな数字の上に立っているかは地域起業の現状の側から確かめられる。
日頃の買い物で意識されているのは「減らす」ほう
関心と行動は同じ順番には並ばない。日頃の消費行動で意識していることを聞いた問いでは、「かなり意識している」と「ある程度意識している」を合わせた割合の上位が、ごみを減らして再利用やリサイクルを行う53.1%と、レジ袋や使い捨ての食器類をもらわない50.6%だった。
| 日頃の消費行動 | かなり | ある程度 | 合計 |
|---|---|---|---|
| ごみを減らし、再利用やリサイクルを行う | 19.3% | 33.8% | 53.1% |
| レジ袋や使い捨てのフォーク等をもらわない | 21.3% | 29.3% | 50.6% |
| 地元産品を購入して地産地消を実践する | 9.2% | 30.5% | 39.7% |
| 容器や包装の少ないものを選ぶ | 8.1% | 29.9% | 38.0% |
| 被災地や応援したい地域の食品・商品を選ぶ | 5.2% | 26.4% | 31.6% |
| 環境に配慮されたマークのある食品・商品を選ぶ | 4.1% | 20.2% | 24.3% |
| 社会貢献活動に熱心な企業のものを選ぶ | 3.5% | 15.4% | 18.9% |
上の二つは支出が増えない行動である。これに対して、地産地消は39.7%、環境に配慮されたマークのある商品は24.3%、社会貢献活動に熱心な企業の商品は18.9%と下がっていく。お金の向け先を変える行動になると、意識する人の数はおよそ半分になる。
地域の産品はこの並びのなかでは上のほうにいる。被災地や応援したい地域の食品を選ぶ31.6%も近い位置にある。企業の姿勢そのものを理由に選ぶ層より、産地や応援先という具体的な対象で動く層のほうが厚いと読める。
興味は41.3%、実践は26.1%
言葉を知らない人にも伝わるかどうかは、説明を添えたあとの反応で見える。調査では人・社会・地域・環境に配慮した消費という中身を示したうえで興味の度合いを聞いており、「非常に興味がある」4.9%と「ある程度興味がある」36.4%を合わせて41.3%が興味ありと答えた。先に見た認知7.4%との開きが、説明の効き方を示している。
実際にやっているかを聞くと、「よく実践している」2.8%と「時々実践している」23.3%で26.1%になる。四人に一人が自分では実践している側に立っている計算になる。
実践している1,304人に理由を聞いた結果は、売り方を考えるうえで示唆が多い。最も多いのは「同じようなものを購入するなら環境や社会に貢献できるものを選びたい」の57.5%で、次が「節約につながる」50.9%、三番目が「地元の地域の活性化につなげたい」36.6%だった。こどもたちの未来に役立てたいが32.7%、ストーリー性に共感するは12.9%にとどまる。
やっていない3,696人の理由は、作り手側の課題がそのまま出ている。「どれがエシカル消費につながる商品やサービスか分からない」が24.9%で最も多く、経済的余裕がない20.9%、参加方法が分からない16.3%、余分にお金がかかる13.5%、身近にない12.2%が続く。理念に反対する声は3.7%しかない。
売り場での確かめ方と、払える上乗せの幅
では買う人は何を見て判断しているのか。配慮した商品を購入したことがある3,007人に確認の方法を聞くと、店頭ポップアップや商品紹介が31.4%、認証ラベルの確認が16.5%、店やブランド名から事前に確かめるが13.3%、店員からの説明が10.9%だった。いっぽうで「認識せずに購入・利用した」が46.0%を占める。
認証を取っても、それを読む人は六人に一人である。売り場の説明文や作り手の言葉のほうが先に目に入る。地域で始めたばかりの事業が置かれる棚では、この順序はもっと極端になると考えておきたい。
価格の幅についても数字が出ている。通常の商品よりどこまで割高なものを買った経験があるかを品目別に聞いた結果、割高で買った経験がある人の割合がいちばん高いのは食料品の50.6%だった。内訳は0%より高いが10%未満が29.6%、10%以上30%未満が16.4%、30%以上が4.6%である。
その他生活用品は43.4%、衣料品は41.5%、家電は39.3%、電力は33.3%、自動車は31.9%と下がる。食品は上乗せが通りやすいが、三割以上の上乗せまで届く人は5%に満たない。原価を積んで値段を決めるとき、この一割前後という帯が現実的な上限になる。
購入したものの中身を見ると、リサイクル製品が30.2%、地産地消・地元の特産品が28.8%、省エネ製品が26.7%、被災地や応援したい地域の産品が14.1%で、有機食品は6.4%、伝統工芸品は4.9%だった。使える制度の側は地域起業の支援制度に、国の表彰や選定の枠は地方創生SDGsのアワードにまとめてある。
よくある質問
SDGsを掲げると売れるようになりますか。調査の数字からは、掲げるだけで動く層は限られる。同じようなものなら選びたいという57.5%を取りに行く形、つまり比べられる位置にまず商品を置くことが前提になる。
認証ラベルは取ったほうがよいですか。確認方法として認証ラベルを挙げた人は16.5%で、店頭の説明31.4%の半分である。費用と手間に見合うかは売り場の性質で変わるため、対面で説明できる販路から始めて、卸や通販に広げる段で検討する順番が合理的である。
値段はどこまで上げられますか。食料品で割高でも買った経験があるのは50.6%だが、その多くは10%未満の帯に入る。30%以上を受け入れた人は4.6%なので、贈答や限定といった別の理由を足さない限り、通常の価格から大きく離すのは難しい。
言葉は何に置き換えればよいですか。内容まで知られているのはSDGsの42.2%が最高で、エシカル消費は7.4%である。産地、作り手、使い道のように、説明がいらない具体語に置き換えたほうが届く相手は増える。学生のうちに案を人前で試すなら、FLASPOのような募集に出して反応を見る手もある。
出典は消費者庁「令和7年度第2回消費生活意識調査」である。結果の一覧は消費者庁の公表ページにあり、各問の数値は調査結果のPDFから確認できる。
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