関係人口のリアル交流事例|受け入れた集落の住民70票が示したこと

受け入れた側が本当に喜んでいるのかは、事例の紹介文からは読み取れない。写真に写る住民は笑っているし、報告書の成果欄には前向きな言葉が並ぶ。ところが総務省の検証では、ひと月の滞在を受け入れた集落の全戸にアンケートを配り、70票を回収していた。現地で交流する関わりが地域に何を残したのか、その数字から見ていく。

現地で交流する形は485万人、訪問系の4分の1

まず位置を確かめる。関係人口の分類と推計値では、地域を訪問している関係人口が約1,884万人と推計され、そのうち「地域の人との交流やイベント、体験プログラム等に参加」する参加・交流型が約26パーセント、約485万人とされている。訪問系のおよそ4分の1にあたる。

結びつきの深さでは中ほどに置かれた層である。消費や趣味を楽しむだけの段より深く、企画や運営を担う段より浅い。この位置づけが厄介で、地域側からは「来てくれたが、それで何が変わったのか」が見えにくい。イベントの参加者数は数えられるが、住民の受け止めまでは数字にならないからだ。

その空白を埋める調査が一件だけある。新潟県村上市山北地区の中継集落で行われた住民アンケートだ。

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大学生3名のひと月を、80戸の集落が受け入れた

中継集落は少子高齢化と人口減少によって担い手が固定化しつつある一方、1年を通して盆踊り、運動会、祭り、小さなマラソン大会といった行事を盛んに続けてきた。運営は中継ふるさとづくり推進委員会が担っている。明治大学の小田切徳美教授を通じて、毎年学生の農村調査実習も支援してきた。ただしこうした受け入れはその日限りの行事にとどまり、集落全体を巻き込む形にはなっていなかったと関係人口創出・拡大事業 検証結果報告書は記している。

そこでモデル事業では、公益社団法人中越防災安全推進機構が運営する「Iターン留学・にいがたイナカレッジ」のインターンプログラムの一つとして、令和元年の8月から9月にかけて大学生3名をひと月受け入れた。課題は「中継の志が詰まった冊子づくり」である。集落を巣立つ高校生や、すでに離れた人たちに中継を心にとどめてもらうための冊子を、住民への取材からつくる。

進め方は四段に分かれていた。最初のひと月の入口は集落内の挨拶まわりと、盆踊りと奉納相撲の準備である。次に冊子の目的とコンセプトを決め、勉強会を開く。それから住民に取材して編集し、最後に集落の住民に向けた報告会で成果を発表する。どの段も住民との会話なしには進まない設計で、学生が一人で完結できる作業は含まれていない。

70票が示したのは、高い認知と割れた評価だった

受け入れから1年あまり経った2021年1月、集落内の全戸80戸に紙のアンケートが配られた。配布と回収は推進委員会の人が各戸を訪ねて行い、70票が戻った。回収率は87.5パーセントである。集落規模の調査としては相当に高い。

設問 結果
インターンの受け入れを知っていた 95.7%
挨拶程度を含め何らかの形で関わった 55%超
滞在中に会話や挨拶を交わした 37.3%
祭りへの参加を支援した 22.4%
推進委員会として中核で関わった 17.9%
その他の交流イベントに参加した 16.4%
推奨度が8点以上 25人(35.7%)
推奨度が10点 8人(11.4%)

認知率は95.7パーセントで、ほぼ全戸が知っていた。関わり方には段差があり、会話や挨拶を交わした人が37.3パーセント、祭りの参加を支援した人が22.4パーセント、推進委員会として中核を担った人が17.9パーセントとなっている。参加した人の評価は高く、10段階で7点以上が6割、8点以上に限っても4割に達した。

一方で、他人に薦める度合いを尋ねた推奨度は5点が最も多く、5点以下が4割ほどを占めた。報告書は、こうした集落では極端な評価が出にくいとされる中で10点と答えた人が8人、11.4パーセントいたことを重く見ている。全員が沸いたわけではなく、深く関わった3割強に手応えが集まった、という読み方になる。

住民が期待したのは移住ではなく、知ってもらうことだった

何を期待していたかの回答が、受け入れ側の動機を映している。最も多かったのは「地域の魅力または課題をより多くの人に知ってもらう」で46パーセント、次が「自地域の人たちの地域に対する見方が変わり、希望・活力・地域活動に対する意欲が向上する」で30パーセントだった。移住者を増やすことは上位に来ていない。

得られたと感じた効果では、知ってもらうが34パーセント、意欲の向上が17パーセントで、どちらも期待を下回った。期待とほぼ同じだけ得られたのは「地域をにぎやかにして活気を与える人手が増える」の17パーセントである。目に見える手数は読み通りに増え、認知や意識の変化は読みほど届かなかったことになる。効果を期待していない、わからないと答えた人は、事前が31パーセント、事後が39パーセントだった。

関わり方の希望を自由記述で尋ねた欄も興味深い。行事の担い手としての活躍や、外からの客観的な視点への期待が複数書かれた一方で、お客様扱いをせず家族のように関わりたいという声、一定の距離を保って接した方がよいという声も一定程度あった。受け入れを頼むときに「歓迎する」か「構えずに付き合う」かで、住民の中に温度差があるということだ。村上市が置いた目標は、事業参加者のうち事業後も継続して来訪する人の割合を3割以上とするものだった。

行事を入口にした事例と、支えている人の構成

同じ現地交流型でも、入口の置き方は自治体ごとに違う。岐阜県郡上市は現地プログラムを1回開催することを目標に据えた。新潟県燕市は県外在住の若手デザイナーの来訪者数を数え、宮崎県五ヶ瀬町はシンポジウムと実践活動報告会の参加者を指標にした。香川県三木町は、地域課題の洗い出しに協力して関係人口を受け入れられる集落を1集落つくることを目標とし、受け入れ側の体制づくりそのものを数えている。鳥取県は令和6年度中までに関係人口の受入団体数を30団体へ広げるという、年次つきの目標を掲げた。

では現場は誰が回しているのか。報告書が74件の体制を段階ごとに集計している。事業実施の段階では主管課が67件で最多だが、NPOなどの法人組織が37件、地元の任意団体や個人が35件と、行政の外の担い手が広く入っている。地元企業が20件、域外の組織・企業が22件、地域おこし協力隊などの派遣制度を使った人材が13件、既存の関係人口が11件という内訳だ。

協力・支援の段階になると順位が入れ替わる。最も多いのは地元の任意団体・個人の42件で、主管課の41件を上回る。NPO等の法人組織が36件、庁内の他課と地元企業が各25件、派遣制度の人材が19件と続く。中継集落で各戸を訪ねてアンケートを配ったのも推進委員会の住民だった。現地で交流する関わりは、住民組織が動かないと成立しない形だと言える。自治体職員の立場からの関わりは地方公務員と関係人口づくりに、事例全体の型は関係人口の地域事例とはに、個別の取り組みは関係人口の成功事例16選にまとめた。地域と関わる働き方についてはFLASPOでも発信している。

よくある質問

短期の滞在でも地域の役に立つのか。中継集落の例はひと月の受け入れだが、住民が得られたと感じた効果のうち期待どおりだったのは人手が増えたことだった。報告書のヒアリングでも、ひと月の受け入れだと関係を継続しやすいという声が記録されている。日帰りの行事では集落全体を巻き込めなかったという前段があるので、滞在の長さが関わりの深さを左右していることになる。

受け入れる住民の負担は重くないのか。中核を担った人は17.9パーセントで、会話や挨拶にとどまった人が37.3パーセントいた。全戸が同じ重さを負う形ではなく、推進委員会という既存の組織が中心を引き受けている。負担の偏りはあるが、集落ぐるみで構える必要はない設計だった。

評価が割れているのは失敗なのか。推奨度5点以下が4割ある一方で、最高点をつけた人が11.4パーセントいた。報告書はこれを、一定の層にとっては相当に手応えのある取り組みだったと読んでいる。プログラムに少しでも参加した人の割合と、8点以上をつけた人の割合がほぼ一致している点も見逃せない。評価の割れは関わりの深さの割れを映している。

数字の出どころを確かめたいときは。住民アンケートは2021年1月5日から31日にかけて中継集落の全戸80戸を対象に行われ、70票が回収されている。各自治体の目標値と体制の集計も同じ検証結果報告書による。参加・交流型の推計人数は国土交通省「地域との関わりについてのアンケート」(2023年度)に基づく推計値で、施策の現状は総務省の関係人口のページで確認できる。


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