地域に関わりたいが、そこまで通える距離ではない。この条件で探せる事例は意外と多い。国の推計には地域を訪れずに関わっている層が独立した区分として置かれており、総務省のモデル事業の記録にも、訪問が止まった時期に何が続いたかが自治体の言葉で残っている。訪問しない関わりが実際にどんな形をとったのか、その記録から拾ってみる。
訪問しない関わりは379万人、全体の4パーセント
規模から押さえる。関係人口の分類と推計値によると、2023年時点の関係人口は全国の18歳以上の約22パーセント、約2,263万人と推計されている。そのうち地域を訪問している人が約18パーセントで約1,884万人、訪問していない人が約4パーセントで約379万人である。
非訪問系として数えられるのは、ふるさと納税、クラウドファンディング、地場産品等の購入、特定の地域の仕事の請け負い、情報発信、オンライン交流などを継続的に行っている人だ。六つの行為が並列に挙げられており、寄附だけの区分ではない。全体に占める比率は訪問系の4分の1以下だが、人数にすれば380万人近い層である。
この六つに、総務省が支援したモデル事業の記録を当ててみると次のようになる。
| 訪問しない関わり方 | 記録に残った動き | 自治体 |
|---|---|---|
| ふるさと納税 | 流通が鈍化した時期に寄附で地域を支える動きが出た | 鹿児島県肝付町、岐阜県郡上市 |
| 地場産品等の購入 | 通信販売の呼びかけに通常より高い単価の注文が集まった | 秋田県横手市、秋田県鹿角市 |
| クラウドファンディング | 地域資源を商品化して目標額の9倍を集めた | 熊本県菊池市 |
| オンライン交流 | 高校と台湾の大学との交流がオンラインで続いた | 秋田県横手市 |
| 仕事の請け負い | 離れたままのミーティングから実証実験の企画が生まれた | 滋賀県長浜市 |
| 情報発信 | 行政情報の拡散や関係人口同士の呼びかけが起きた | 長野県泰阜村、奈良県下北山村 |
寄附と買い物は、呼びかけた側が驚く形で返ってきた
訪問が難しくなった時期の記録は、関係人口創出・拡大事業 検証結果報告書の参考資料にまとめられている。自治体が自由記述で寄せた内容なので、成果をよく見せる動機の薄い文章が並んでいる。
秋田県鹿角市は、首都圏の物産展や飲食店への納品が著しく落ち込んだため、取引業者の応援策として通信販売のサイトを開設した。関係人口へメールマガジンなどで知らせたところ、取り寄せて鹿角を応援したという投稿や、励ましの言葉を直接送ってくる人が現れたという。秋田県横手市は広報紙「よこて fun 通信」の2020年6月号で、市内の食品・土産物の生産者や経営者の商品の詰め合わせを買って支援してほしいと呼びかけた。注文は非常に多く、しかも中身を見ると通常よりかなり高い客単価だった、と記録されている。
同じ時期、鹿児島県肝付町と岐阜県郡上市はふるさと納税や物販で地域を応援しようとする動きを挙げ、福岡県うきは市は寄附や通販サイトでの支援にメッセージが添えられるようになったと書いている。新潟県村上市は、帰省できない市出身の学生へ特産品を送る取り組みを行い、学生から故郷への想いを綴ったコメントが多数寄せられたと報告した。買い物という最も軽い行為が、地域側には手応えとして届いていたことになる。
クラウドファンディングは9倍まで伸びた例がある
資金の集め方としてはクラウドファンディングが目立つ。熊本県菊池市では、市の地域活性化セミナーに参加した地域団体が地域資源を商品化して募ったところ、目標額の9倍の支援金を獲得した。さらに、予定していた関連イベントが中止になった後も、返金はいらないので今後に役立ててほしい、いつか必ず菊池へ行きたい、引き続き応援する、といった声が支援者から多数届いたという。
注目したいのは、中止になったイベントの返金を断る行動である。クラウドファンディングは返礼を期待する取引に見えやすいが、ここでは返礼が消えても支援が残った。京都府福知山市も、市が実施する感染症対応の事業への寄附や、資材物品の提供による寄附を受けたと記録している。
目標の立て方にも差が出ている。北海道標茶町はクラウドファンディングの実施と目標金額の設定そのものを事業の目標に置いた。鹿児島県いちき串木野市はプロダクトの売上額を指標にしている。資金を集めるところまでを成果とみる置き方と、集めた資金が商品として回り始めたかどうかを見る置き方の違いである。
会議と交流が画面に移って、企画が生まれた
訪問が止まったことで浮かび上がったのは、関わりの中身のうちどれだけが移動に依存していなかったか、である。秋田県大館市は、打ち合わせがリモートだけになってもなお、横のつながりを広げる提案を関係人口から受けていると書いた。秋田県では予定していた取り組みが軒並み中止になった一方で、リモートの会議や交流会は各地で続き、熱量はむしろ高まっているようにも感じると報告している。
滋賀県長浜市は、離れていてもオンラインで打ち合わせができる関係を築けたと記した。この市の関係人口の多くがリモートワークを行う職種だったため、そこからオンラインを使ったイベント、サテライトオフィスの設置、ワーケーションの実証実験といった企画が立ち上がっている。奈良県下北山村では、関係人口同士が協力し、都市部でできることを自分から提案してきた。福島県矢祭町も、関わりを持つ方法の検討と提案が関係人口の側から出てきたと書いている。
教育の場でも続いている。秋田県横手市は、市内の高校と台湾の大同大學とのオンライン交流が行われ、前年度の事業でできたつながりが生きていると記録した。徳島県は、イベントや現地訪問が難しくなった状況を受けて、ウェブ発信やオンライン交流を使った関係人口の拡大へ軸を移したと述べている。福井県坂井市はリモート会議で関係づくりを進め、地震があった際には心配するメールを複数受け取った。
発信を関わりとして数える自治体がある
六つの行為のうち、情報発信は本人に負担が軽く、地域側には見えにくい。そこを指標として置いた自治体がいくつかある。
香川県三木町は、関係人口による情報発信件数を50件、SNSのグループなどで横のつながりが見える関係人口を20人と置いた。首都圏の関係人口登録者数150名という数字とあわせて、登録して終わりにしない設計になっている。秋田県横手市は台湾向けの情報発信用ウェブサイトの月間閲覧数1,000以上、交流促進のためのPRページのファン数5,000人以上、そして「横手応援人口@台湾」ネットワークのメンバー数100名以上という三つを並べた。徳島県東みよし町は動画視聴者数2,000以上とSNSのフォロワー数を指標にしている。
長野県泰阜村の記述が、発信という関わりの実像に近い。来訪できないことを残念がる声が届き、村内事業者の製品を買ってもらい、行政情報を拡散してもらい、関係人口同士で交流して地域を応援する動きまで生まれたという。一人の行動としては小さいが、束ねると地域の広報予算では届かない範囲に情報が運ばれる。規模の内訳は関係人口の現状を数字で確かめるに、事例全体の型は関係人口の地域事例とはに整理した。寄附という入口から地域を選ぶ見方はふるさと納税を地域で選ぶが近い。地域と関わる働き方についてはFLASPOでも発信している。
よくある質問
ふるさと納税をしただけでも関係人口に数えられるのか。国の調査上の分類では、ふるさと納税は非訪問系の関わり方として明記されている。ただし条件は継続的に行っていることで、一度の寄附で終われば継続とは言いにくい。寄附先からの報告を読み、翌年も同じ地域を選ぶところまで来ると、分類の想定に近づく。
オンラインだけの関わりは、現地に行く関わりより価値が低いのか。国の推計では訪問系を結びつきの深さで五つに分けているが、非訪問系の内側に深さの順位は置かれていない。報告書の記録を読むかぎり、返金を断った支援者や、自分から関わり方を提案してきた人の存在は、訪問の有無では説明できない。
自治体として始めるなら、どの行為から整えるのが現実的か。記録に多いのは、すでに接点のある相手への呼びかけである。ふるさと納税の寄附者、広報紙の読者、出身の学生といった名簿が先にあり、そこへ通信販売や寄附の呼びかけを乗せた形が目立つ。接点のないところから発信を始める順番ではなかった。
引用した記録はどこで読めるのか。自治体の自由記述は総務省自治行政局地域自立応援課が令和3年3月に公表した検証結果報告書の参考資料「コロナ禍と関係人口」に収められている。推計値は国土交通省「地域との関わりについてのアンケート」(2023年度)に基づく。現在の施策は総務省の関係人口のページにまとまっている。
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