関係人口は担い手不足を埋めるのか|2,263万人と加入率71.7%

「2,263万人」はどこから出てきた数字か

自治体の計画書で関係人口の規模が引かれるとき、ほぼ必ず同じ数字が出てくる。出どころは国土交通省が2025年6月27日に公表した「地域との関わりについてのアンケート」の結果で、18歳以上の全国居住者およそ1億275万人のうち約2,263万人、2割強が特定の地域と継続的かつ多様な形で関わっていると推計された。母数は令和2年の国勢調査にもとづく。調査そのものは令和5年9月から10月にインターネットで実施され、有効回答は118,963人である(国土交通省「全国の『関係人口』は18歳以上の2割強!」)。

内訳は二つに分かれる。実際にその地域へ足を運ぶ訪問系が約1,884万人で全体の約18%、訪問を伴わない形で関わる非訪問系が約379万人で約4%。足し合わせて約22%、つまり2,263万人という組み立てになっている。

同じ調査が置いている定義も確認しておきたい。関係人口とは、移住でも観光でもなく、単なる帰省でもない、日常生活圏や通勤圏以外の特定の地域と継続的かつ多様な関わりを持つ人を指す。定住人口と交流人口のあいだを切り出した概念で、「どこに住んでいるか」ではなく「どこに関わっているか」で人を数えている点が従来の統計と違う。

この数字が引用される文脈は、たいてい「地域の支え手が2,263万人いる」という読み方である。ただ調査が捉えているのは関わりの有無であって、関わりの深さや投じている時間ではない。担い手不足の話につなげるなら、総数の大きさだけでは材料が足りない。

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加入率71.7%の自治会で起きていること

受け入れる側の数字を並べると、関係人口の2,263万人とは別の景色が見える。総務省の「地域コミュニティに関する研究会」が令和4年4月にまとめた報告書では、600市区町村の平均でみた自治会等の加入率が平成22年の78.0%から令和2年の71.7%へ下がったことが示されている。10年で6.3ポイントの低下である(総務省「地域コミュニティに関する研究会報告書(R4.4)の概要」)。

報告書が問題にしているのは加入率そのものより、その先で起きる目詰まりだ。加入率の低下と役員・運営の担い手不足により活動の持続可能性が下がる一方で、防災、高齢者や子どもの見守り、居場所づくりといった新しいニーズへの対応が必要になっている。縮む体力と増える役割が同時に進んでいる、という整理である。

そのうえで報告書は三つの視点を立てている。地域活動のデジタル化、自治会等の活動の持続可能性の向上、地域コミュニティの様々な主体間の連携。二つ目の視点では、自治会の自己改革だけに任せず、市区町村の側が加入促進に取り組み、回覧板の伝達や行政委嘱委員の推薦といった行政協力業務を部局横断で棚卸しする必要があるとされた。外部人材の活用や地域担当職員制度の導入も、負担軽減の手立てとして挙がっている。

関係人口の受け皿を考えるとき、この「外部人材の活用」という一行が接点になる。地域の側が人を欲しがっているのは、交流の相手ではなく役割を分け持てる相手である。地域コミュニティの課題を担い手不足から分解した記事と合わせて読むと、必要とされている機能がはっきりする。

関わりの中身を見ると、数は重ならない

2,263万人と71.7%を並べても足し引きができないのは、関わりの濃さが揃っていないからだ。国交省の調査では、訪問系の類型を複数回答で聞くと「趣味・消費型」が最も多く、次いで「参加・交流型」、「直接寄与型」と続いた。買う・食べる・楽しむという関わりが土台にあり、地域の課題解決に直接寄与する層はその先にいる。

時間の使い方はさらに明確だ。訪問系の年間訪問日数は「1日以下」が約20%、「2〜7日」が約49%、「8日以上」が約31%で、半数近くが年に一週間未満しか現地にいない。例外は就労型で、現地就労とテレワークのいずれも「8日以上」が約半数を占めた。働くという形で関わる人だけが、滞在の長さの面で地域の日常に近づいている。

年間訪問日数 訪問系に占める割合 担い手として期待できる範囲
1日以下 約20% 単発のイベント参加や消費に限られる
2〜7日 約49% 季節行事の手伝いや短期の作業まで
8日以上 約31% 継続する役割を分け持てる層。就労型は約半数がここ
国土交通省「地域との関わりについてのアンケート」(令和5年度調査)の公表値から作成

自治会の役員、防災訓練の運営、見守りの当番といった仕事は、年に数日では引き受けられない。つまり2,263万人という総数のうち、担い手不足の穴に直接はまるのは8日以上の層、それも就労型に偏った一部ということになる。関係人口の増加を担い手確保の政策として語るなら、どの類型を何人増やすのかまで降りないと計画にならない。

関わりを止めているのは時間と費用だった

では関わりたい人を止めているものは何か。特定の地域と関わりを持ちたいと思っている人に今後必要な改善点を聞いた結果では、「仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保」が27.4%で最も多く、「移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減」が26.7%、「地域に行くための交通の利便性の改善」が26.4%と続いた。上位三つが時間・お金・交通で、しかも差はわずかである。

移動の実態もこの結果を裏づける。訪問系の流動人数は三大都市圏を除く「その他地域」から「その他地域」への移動が約763万人で最も多く、首都圏都市部からその他地域への約293万人、首都圏都市部内の約222万人がこれに続いた。都市から地方へ人が流れる図を思い描きがちだが、実際の主流は地方圏のなかの近距離の往復である。

交通手段は自家用車が約58%で最も多い。ただし新幹線以外の鉄道、新幹線、旅客機、都市間高速バス、一般路線バス、旅客船・フェリーを合計すると自家用車を上回る。車がなければ関われない地域と、公共交通で届く地域が混在しているという意味で、受け入れ側が整えるべき条件は地域ごとに違う。

この三つの壁は、地域の側で下げられるものと下げられないものに分かれる。時間は本人の事情に属するが、滞在費の補助や空き家の活用、乗り合いの足の確保は受け入れ側の設計で動く。関係人口がなぜ重要かを担い手不足の側から整理した記事でも、必要なのは呼びかけよりも条件づくりだという筋が通っている。

学生が入れる隙間はどこにあるか

三つの壁を学生に当てはめると、順番が入れ替わる。長期休暇をまとめて使えるため時間の制約は社会人より小さく、代わりに金銭的な負担と交通が前に出てくる。つまり滞在費と移動費を下げる仕組みがある地域なら、学生は「8日以上」の層に入りやすい立場にいる。

狙い目は、自治会が手放したい行政協力業務の周辺である。回覧板のデジタル化、安否確認アプリの操作支援、地域の居場所のリストやマップの作成は、研究会報告書が課題として挙げながら多くの市区町村で手が回っていない領域だ。報告書は住民の多くが操作に不慣れであることを課題として記録しており、ここは若い世代の参加が効く場所として明示されている。

関わり方を選ぶときは、就労型に寄せるほど滞在が長くなり、地域側の評価も具体的になる。短期のインターン、季節作業の受け入れ、地域おこし協力隊の前段としてのお試し滞在などは、いずれも訪問日数を押し上げる形をとる。進路の選択肢として地域での働き方を調べるなら、FLASPOのような地域と学生をつなぐ入口から受け入れ側の条件を確かめておくと、現地に着いてから迷わない。

ひとつ注意しておきたいのは、自治会の加入率は世帯単位で数えられていることだ。学生が単身で短期間滞在しても加入率の数字は動かない。数字を押し上げる存在になるのではなく、数字が下がった先で足りなくなった機能を埋める存在として入っていく、という理解のほうが現場と噛み合う。

よくある質問

関係人口が増えれば自治会の担い手不足は解消しますか。総数が増えるだけでは解消しません。国交省の調査では訪問系の約49%が年間2〜7日しか現地にいないため、役員や当番のように継続して引き受ける役割とは時間の単位が合いません。担い手の確保を狙うなら、訪問日数が多い就労型をどう増やすかという設計が必要になります。

加入率71.7%はどの範囲の平均ですか。総務省の研究会報告書が示した600市区町村の単純平均です。全国すべての自治体を網羅した値ではなく、地域差も大きいため、自分が関わる地域の数字は市区町村の公表資料で確かめるほうが確実です。平成22年の78.0%との比較も同じ600市区町村の枠内で行われています。

非訪問系の379万人はどう位置づけられますか。調査では訪問を伴わない関わり方として訪問系と区分されています。現地に行かない関わりである以上、現場の作業を分け持つ役割には直結しませんが、関係人口の全体像を2,263万人として語るときにはこの層も含まれている点は押さえておきたいところです。

関わる地域はどう選べばよいですか。調査で最も多い流動が「その他地域から その他地域」への約763万人だった点がヒントになります。遠い憧れの土地より、いま住んでいる場所から通える範囲のほうが関わりは続きやすい。交通手段は自家用車が約58%を占めるため、車を使えない場合は公共交通で届くかどうかを先に確かめておくとよいでしょう。


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