地域コミュニティの課題|担い手不足86パーセントの中身を分解する | FLASPO MAGAZINE

地域コミュニティの課題|担い手不足86パーセントの中身を分解する

役員のなり手がいない。自治会の総会や市役所の窓口で最初に出てくる困りごとは、たいてい人の話に着地する。ただ「人手が足りない」という言い方のままでは、打ち手が決まらない。足りないのは誰で、足りていないのは何の仕事で、その仕事はどこから来たのか。全国の市区町村を対象にした公的な調査には、そこを切り分ける材料がそろっている。順番をつけて確かめていく。

市区町村が挙げた課題には、はっきりした序列がある

内閣府男女共同参画局が全国の市区町村に尋ねた調査では、回答した1,157団体が自治会の課題として選んだ項目に明確な差がついた。首位は「役員・運営の担い手不足」で86.1パーセント、二位は「役員の高齢化」で82.8パーセント。ここまでが8割を超え、三位以下を大きく引き離している。

順位 課題 挙げた市区町村の割合
1 役員・運営の担い手不足 86.1パーセント
2 役員の高齢化 82.8パーセント
3 近所付き合いの希薄化 59.2パーセント
4 加入率の低下 53.3パーセント
5 行政からの依頼事項が多い 36.2パーセント
6 行事(祭り等)の参加者が少ない 33.6パーセント
7 活動の慣習化 29.2パーセント
8 新旧住民の交流が図りにくい 28.2パーセント
9 活動費の不足 18.9パーセント
10 自治会・町内会会館がない 5.6パーセント

目を引くのは下のほうだ。活動費の不足は18.9パーセント、会館がないは5.6パーセントにすぎない。金と場所の話はほとんど出てこない。行政側から見た自治会の困りごとは、ほぼ全部が人の問題として認識されている。

ただ、上位二つは同じ現象を二方向から見ているだけかもしれない。次を引き受ける層がいないから同じ人が続け、続けるうちに年齢が上がる。二つを別々の課題として並べると、対策も別々に立てたくなるが、実際には入口が一つしかない可能性がある。そこで、なり手をどう決めているのかを先に見ておきたい。

担い手不足の正体は、会長の選び方に出ている

同じ調査は、単位自治会の会長をどう選んでいるかも聞いている。前会長など役員からの指名・推薦と、役員内からの互選がそれぞれ約7割の市区町村で行われており、班長などからの輪番、立候補者を募って総会等で選挙する方式が約6割。そして、くじ引きが16パーセントの市区町村で確認されている。

くじ引きが残っていることの意味は軽くない。意欲や適性で選ぶ手段が尽きたときの最後の方法であり、同時に「誰がやっても同じ」という前提を含んでいる。任期は概ね2年以内に収まり、期数制限を設けていない自治会が多いという結果も併せて読むと、短い任期で回しながら、やれる人には何期でもやってもらうという運用が全国に広がっていることがわかる。報告書は、1年程度の任期では事業の検討まで手が回らないという現場の指摘も記録している。

母数の使い方にも偏りがある。内閣府の白書によれば、令和6年時点で自治会長に占める女性の割合は7.3パーセント、前年からの伸びは0.1ポイントだった。同じ時点のPTA会長は20.3パーセントである。担い手が足りないと言いながら、住民の半分に近い層から会長がほとんど出ていない。くじ引きに至る前に、まだ引いていない札がある。

依頼の総量は、この十数年で減っていない

負担の中身を年で追える資料がある。同じ522市区を対象に2008年と2020年の状況を比べた比較では、自治会が引き受けている行政協力業務の傾向はほとんど変わらず、むしろ全般に増えていた。委員の推薦は67.8パーセントから83.5パーセントへ、防災対策は62.6パーセントから75.3パーセントへ、高齢者の見守りは46.9パーセントから62.3パーセントへ、緊急時の連絡網や告知は56.1パーセントから67.4パーセントへ、子育て支援は42.3パーセントから52.1パーセントへと、いずれも上がっている。

減った項目もある。ごみの分別・資源物回収は69.3パーセントから60.5パーセントへ、防犯活動は60.2パーセントから57.9パーセントへ、地球温暖化対策は11.7パーセントから5.4パーセントへ、住民窓口業務の取次ぎは5.6パーセントから4.0パーセントへ。ただ、減った分より足された分のほうが明らかに大きい。

依頼元は市区町村だけではない。国、都道府県、警察、消防、学校、それに行政ではない社会福祉協議会からも来る。研究会の資料は、とくに負担感が強く批判の的になるものとして、委員の推薦、募金集め、広報物の配布と回収、各種会議への出席、行催事への動員、二重三重に重なる団体の会費と役を挙げている。制度が新しくできるたびに、住民に一番近い組織として名前が呼ばれてきた結果である。

加入率は11年で6.3ポイント下がった

引き受ける側の分母も細っている。総務省が市区町村に行ったアンケートのうち、平成22年度から令和2年度まで毎年度の加入率を世帯単位で把握していた600市区町村の平均は、78.0パーセントから71.7パーセントへ、6.3ポイント下がった。

平均の動きより分布のほうが示唆的だ。この600団体のうち、加入率が下がったのは530団体で88.3パーセント。変化なしが56団体の9.4パーセント、上がったのは14団体の2.3パーセントにとどまる。下降はごく一部の地域の事情ではなく、ほぼ全国で同じ方向に起きている。

加入率が落ちると、同じ依頼を少ない世帯で分け合うことになる。会費収入も減る。人口そのものが減っている地域では、過疎化や限界集落の議論と切り離せない段階に入っている。逆に言えば、都市部で加入率だけが下がっている地域では、まだ打てる手が残っているということでもある。

効いているのは断り方より棚卸し

市区町村の側も動いている。同じアンケートでは、自治会の負担軽減に取り組んでいると答えた団体が1,111、必要性は感じているが実施していない団体が548、必要性を感じていないと答えた団体は82にとどまった。すでに大半の自治体が、何かしなければという段階には来ている。

1,111団体が実際にやっている内容で多いのは、活動場所の提供支援が556団体、担当窓口の一元化が328団体、広報物の直接配布が276団体。窓口の一元化がここに入っているのが重要で、依頼の量を減らさなくても、入口を一つにするだけで断る判断がしやすくなる。

広報紙の配り方には値段もついている。自治会に委託料として有償で依頼している351団体では、1世帯あたりの委託料の中央値が年額766円。業者へのポスティングを選んだ261団体は273円、新聞折込の90団体は254円だった。数字だけ見れば業者のほうが安いが、ポスティングは配るところまでしかしない。安否を確かめながら渡す機能まで含めて比べないと、置き換えたあとで別の穴が開く。

依頼の全体を一度並べ直した自治体の例もある。自治会への依頼業務の実態調査を行ってから活動活性化の条例を定め、負担感が下がった品川区。回覧や掲示、委員就任の依頼基準を定めたガイドラインをつくり、案件の集約と依頼の一元化を庁内全体で行っている川崎市。個別に断るより、年間の依頼を一覧にして担当課と向き合うほうが進みやすい。若い世代との接点づくりを外から持ち込むFLASPOのような関わり方も、役員の仕事を増やさない形で設計できれば、棚卸しの結果として空いた枠に入れられる。

よくある質問

役員を引き受ける人がいないとき、自治会は解散してもよいのですか。規約の定めに従えば解散はできる。ただ、解散すると行政からの連絡経路、集会所の管理、防災の初期対応の受け皿が同時に消える。先に試す価値があるのは、役の数そのものを減らすことだ。会計と広報を一人が兼ねる、行事ごとの実行委員制にして通年の役を置かない、といった組み替えなら規約の変更で足りる。

くじ引きで会長を決めるのは違法ではないのですか。地方自治法は認可地縁団体の代表者を置くことを求めているが、選び方を細かく定めてはいない。規約に手続が書かれていて総会が承認しているなら、くじ引きも有効である。問題は合法性ではなく、引き当てた人が孤立しやすいという実務のほうにある。

行政からの依頼を減らしてほしいと言うと、補助金を切られませんか。地縁団体は行政の下部組織ではないので、依頼を引き受ける義務はなく、断ったことを理由に助成を打ち切る根拠もない。総務省の研究会も、依頼事項の部局横断的な見直しを市区町村の側の課題として挙げている。個別の担当者と交渉するより、依頼の一覧を示して所管課をまたいだ整理を求めるほうが筋が通る。

女性の会長を増やすと何が変わるのですか。数が増えること自体が目的ではなく、候補者の母数が二倍近くになることに意味がある。平日の昼に動ける人、子育て世代とつながっている人、介護の現場を知っている人が役員会に入ると、引き受けられる仕事の種類が変わる。会議を平日夜から週末昼に移すだけで候補が増えた例も報告されている。

加入率が下がっても活動が回っている地域があるのはなぜですか。加入世帯の数と、実際に手を動かす人の数は別だからだ。名簿上の加入率が高くても動ける人がいない地域と、加入率は低いが行事ごとに人が集まる地域がある。加入率は入口の広さを示す指標であって、活動量そのものを測っているわけではない。

出典

内閣府男女共同参画局「持続可能な自治会活動に向けた男女共同参画の推進について(平成29年3月)」/総務省「地域コミュニティに関する研究会 報告書(令和4年4月)」/総務省「地域コミュニティに関する研究会報告書の概要」/内閣府男女共同参画局「令和7年版男女共同参画白書 第3分野 地域における男女共同参画の推進」


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