「どんな種類があるのか」には、二通りの答え方がある
助成金の申請書に「事業分野」の欄があり、別の欄には「法人格」を書かせる。同じ取り組みが、二つの別の物差しで仕分けられている。種類を知りたいという問いも、この二つのどちらを聞いているかで答えが変わる。
一つめは、何の課題に取り組んでいるかで分ける見方だ。介護なのか、空き家なのか、就労支援なのか。もう一つは、どんな器で事業を回しているかで分ける見方である。NPO法人なのか、株式会社なのか、企業組合なのか。
この語には法律上の定義がないため、どちらの分類も公式のものではない。ただ幸いなことに、国が集めた数字はどちらの軸にも存在する。分野の側は内閣府が定款から集計した統計があり、器の側は経済産業省が公募で選んだ事業者の一覧がある。数えられるところから順に押さえていく。
分野で分けると、NPO法の20区分が物差しになる
分野の目安として実務でもっともよく使われるのは、特定非営利活動促進法の別表に並ぶ20種類の活動である。もともとはNPO法人が定款に書く活動の種類を定めた表だが、課題の種類をほぼ網羅しているため、法人格を問わない分類としても流通している。
内閣府の集計は、2026年3月31日までに認証を受けた49,071法人の定款から、どの分野を掲げているかを数えている。一つの法人が複数の分野を掲げるため合計は法人数と一致しないが、課題ごとの厚みはこれでつかめる。
| 活動分野 | 掲げている法人数 |
|---|---|
| 保健、医療又は福祉の増進 | 28,503 |
| 社会教育の推進 | 25,020 |
| 子どもの健全育成 | 24,792 |
| 他の団体の運営・活動に関する連絡、助言又は援助 | 23,719 |
| まちづくりの推進 | 22,753 |
| 学術、文化、芸術又はスポーツの振興 | 18,601 |
| 環境の保全 | 13,098 |
| 職業能力の開発又は雇用機会の拡充の支援 | 12,833 |
| 科学技術の振興 | 2,700 |
| 条例で定める活動 | 376 |
上位と下位で75倍以上の差がつく。福祉と教育に集まり、科学技術や消費者保護は薄い。なお第14号から第18号は2003年5月以降、第4号と第5号および第20号は2012年4月以降に申請して認証された分だけが対象なので、古い分野ほど数が積み上がりやすい点には留意がいる。
融資の現場が見ている分野は、もう少し偏っている
定款の記載は「やろうとしていること」の一覧である。実際にお金が動いた分野を見ると、並びが変わる。日本政策金融公庫が2026年5月に公表した令和7年度の実績では、「社会的課題の解決を目的とする事業者」向け融資8,818件を活動分野別に分けている。分類はNPO法の区分に準じ、複数に当たる場合は主な分野に寄せている。
件数構成比の高い順に、保健・医療又は福祉の増進が27.5パーセント、農山漁村又は中山間地域の振興が11.6パーセント、まちづくりの推進が8.8パーセント、観光の振興が8.5パーセント、環境の保全が8.1パーセント、学術・文化・芸術又はスポーツの振興が7.3パーセント、経済活動の活性化が7.1パーセント。残り21.2パーセントがその他である。
内閣府の集計と見比べると、社会教育と子どもの健全育成が上位から消え、代わりに農山漁村・中山間地域の振興と観光の振興が二位と四位に入ってくる。資金を借りて回す形にしやすいのは、対価を払う相手が目の前にいる事業だということだろう。社会教育や子どもの健全育成は会費と助成で回る割合が高く、設備投資を伴う借入とは結びつきにくい。逆に農産物の加工や宿泊、交通の確保は、機械や車両という形で初期費用が立つぶん、融資の窓口に現れやすい。関係人口を切り口にした分類との対応は関係人口の種類と分類で整理している。
器で分けると、NPO法人と株式会社でおよそ八割を占める
法人格の側はどう散らばっているのか。経済産業省が2009年2月に公表したソーシャルビジネス55選は、全国から公募して55の事業者を選んだもので、公式ページに55者の名称がそのまま並んでいる。名称から法人格を数えると、分布が見える。
特定非営利活動法人が29者でもっとも多く、株式会社が16者、有限会社が4者で、会社形態を合わせると20者になる。残りは社会福祉法人が2者、一般社団法人が1者、企業組合が1者、法人格を持たない団体が2者だった。NPO法人と会社形態で49者、全体の約九割を二つの器が占めている。
| 法人格 | 55選の中の事業者数 | お金の出口の扱い |
|---|---|---|
| 特定非営利活動法人 | 29 | 分配できず、事業に戻す |
| 株式会社・有限会社 | 20 | 配当でき、出資も受けられる |
| 社会福祉法人 | 2 | 分配できず、所轄の認可が要る |
| 一般社団法人 | 1 | 分配できず、設立は登記のみ |
| 企業組合・法人格なし | 3 | 組合員への配当や任意団体のまま運営 |
器の種類が事業の種類を決めていないことは、この並びからも読める。農産物の加工を手がける事業者に株式会社と企業組合の両方があり、交通の確保にNPO法人と株式会社の両方がある。法人格は資金の集め方と利益の出口を決める選択で、取り組む課題とは別の軸だ。語そのものの輪郭はソーシャルビジネスの定義で分解している。
器の数え方には注意点が一つある。55選は2009年の公募に応じた事業者から選ばれているため、当時まだ件数の少なかった一般社団法人や合同会社は少なく出る。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の施行は2008年12月、合同会社を設けた会社法の施行は2006年5月で、どちらも公募の時点では新しい器だった。いま同じ公募をすれば分布は動くはずで、この並びは「2009年当時の先進事例がどの器を選んでいたか」として読むのが正確だ。
担い手の年代で見ると、増えているのは上の層
三つめの軸として、誰がやっているかで分ける見方もできる。同じ公庫の資料は、8,818件を年代別に分けている。30代以下が2,631件、40代が2,901件、50代が1,867件、60代以上が1,419件。前年度比では60代以上が112.8パーセントともっとも伸び、30代以下だけが97.9パーセントで前年を下回った。
もう一つ、創業の段階にある事業者の比率も出ている。ソーシャルビジネス関連融資18,032件のうち、創業前および創業後1年以内への融資は6,577件で、割合は36.5パーセント。令和4年度以降は35.6、37.8、38.4、36.5と三割台半ばで推移しており、新しい担い手が途切れずに生まれている。
この二つを重ねると、四つめの軸が見えてくる。誰が対価を払っているかである。公庫の枠がNPO法人と介護・福祉事業者と社会的課題の解決を目的とする事業者に分かれているのは、支払う主体が会員や寄付者か、保険と公費か、利用者本人かで、収支の組み立てが変わるからだ。介護・福祉事業者向けが9,029件・623億円という規模になるのは、報酬が制度で決まっていて借入の返済計画を描きやすいという事情が働いている。
地域の課題を事業として扱う相談先や実例はFLASPOにも集まっている。自分の取り組みがどの種類に入るかを決めるときは、分野の欄と法人格の欄を別々に埋めてから、年代と創業段階を添えて考えると、使える制度の当たりがつけやすい。四つの軸のどれを動かしても、ほかの三つは独立して選び直せる。
よくある質問
ソーシャルビジネスの種類に、公式な分類はありますか。ありません。法律に定義がない言葉なので、分野はNPO法の20区分に準じた分類、器は法人格ごとの区分が、それぞれ実務上の目安として使われています。
どの分野がいちばん多いのですか。定款ベースでは保健・医療又は福祉の増進が28,503法人で最多です。融資が実際に動いた件数でも同じ分野が27.5パーセントで一位になり、二つの物差しで一致しています。
NPO法人でなくても補助や融資を受けられますか。受けられます。公庫の区分は法人格で区切る枠と事業の性質で区切る枠に分かれており、後者には法人格の指定がありません。
一つの団体が複数の分野にまたがる場合、どう数えられますか。内閣府の統計は定款に掲げた分野をすべて数えるため、合計は法人数を超えます。公庫の分類は逆に、主な活動分野一つに寄せて集計します。
どの器を選ぶか迷ったときの順序は。十人以上の社員と毎年の報告を引き受けられるかを先に確かめ、そのうえで出資を受ける必要があるかを見ます。認証の手順はNPO法人の認証で確かめられます。
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