学生フリーランスと就活|両立の段取りと卒業後の進路を数字で確かめる

学生フリーランスと就活|両立の段取りと卒業後の進路を数字で確かめる

就活の暦と、申告の暦は同じ時期に重なる

在学中に仕事を請けている人が3年生の冬に直面するのは、二つの締切が同じ月に並ぶという事実である。内閣官房が示した2027年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請の日程ルールでは、広報活動の開始が卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、採用選考活動の開始が卒業・修了年度の6月1日以降、正式な内定日が同じ年度の10月1日以降とされている。

一方で所得税の確定申告は翌年2月16日から3月15日である。つまりエントリーシートを書き始める月と、前年の売上と経費を集計する月が重なる。この二つを同じ机の上で同時に片づけようとすると、たいていどちらかが雑になる。

順番を決めておけば回避できる。帳簿は毎月末に30分だけ触って、3月に残る作業を「数字を足すだけ」の状態にしておく。要請には学事日程への十分な配慮を求める記述もあるが、配慮されるのは授業と試験であって、個人の受注量までは誰も調整してくれない。2月に入ったら新規の受注を止める、という線を自分で引いておくほうが現実的である。

なお同じページには、春休み以降に実施される2週間以上の専門活用型インターンシップを経た学生について、6月より前に選考へ進める例外も記されている。日程ルールは原則であって、業界や経路によって前後することを前提に組み立てたほうがよい。

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内定率の曲線は、どこで動くべきかを教えてくれる

では、周りはどの時点でどれだけ決まっているのか。文部科学省と厚生労働省が共同で行う調査の令和7年度分では、令和7年12月1日現在の大学の就職内定率が84.6パーセントで前年同期比0.3ポイント上昇、令和8年2月1日現在が92.0パーセントで0.6ポイント低下だった。学校の種別ごとの2月1日現在の数字は次のとおりである。

区分 令和8年2月1日現在の就職内定率 前年同期比
大学(学部) 92.0パーセント 0.6ポイント低下
国公立大学 93.7パーセント 0.7ポイント上昇
私立大学 91.5パーセント 1.0ポイント低下
短期大学 82.9パーセント 2.0ポイント低下
高等専門学校 95.4パーセント 2.5ポイント低下
専修学校(専門課程) 87.6パーセント 0.2ポイント低下

出典は令和7年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(2月1日現在)で、12月1日現在の内訳は同調査の12月1日現在の公表に載っている。12月時点で国公立が86.6パーセント、私立が84.0パーセントだったことを合わせると、12月から2月のあいだに私立で7ポイント以上が動いていることが読み取れる。

この曲線から言えるのは、年明けの2か月が最後の山になるということである。受注を抱えたまま冬を越すなら、その2か月に納品が集中しない組み方にしておく。逆に12月までに決まっていれば、1月以降は仕事の側に戻せる余地が出る。

請けた仕事の記録は、そのまま職務経歴になる

面接で「学生のうちから仕事をしていました」と言うだけでは、相手は確かめようがない。ここで効くのが、取引のたびに受け取っているはずの書面である。厚生労働省の資料フリーランス法のポイントによれば、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第3条は、業務委託をした場合に書面等で直ちに取引条件を明示することを発注者に義務づけており、明示すべき事項は八つある。

当事者の商号や氏名、委託をした日、給付の内容、受領する期日と場所、検査を完了する期日、報酬の額と支払期日、現金以外で払う場合の支払方法。並べてみると、これは契約書というより実績台帳の原型である。案件ごとに保存しておけば、誰から何を頼まれ、いつまでに何を納め、いくら受け取ったかが日付入りで残る。

履歴書に書けるのは肩書ではなく、この具体性である。「Webサイトの記事を20本」ではなく「月4本の連載を6か月、1本3,000字で検収を経て納品」と言えるのは、記録が残っている人だけである。選考で深掘りされたときに崩れないのも同じ理由による。

口頭だけで進んだ仕事は、ここで損をする。明示は発注側の義務なので、書面が来ていなければ求めてよい。将来の選考で使う資料を自分で作っているのだと考えれば、催促の気まずさは少し軽くなる。

続けながら就活するなら、契約の長さで守りが変わる

就活期間中に契約を切られる、条件を一方的に変えられるという不安は、法律の側にある程度の答えがある。発注事業者に課される義務は相手の規模と委託期間によって段が変わり、同じ厚生労働省の資料は条文ごとに次のように整理している。

条文 発注者に課されるもの 適用の条件
第3条 取引条件の明示 従業員の有無を問わずすべての発注者
第4条 支払期日の設定と期日内の支払 従業員を使用する発注者
第5条 7つの禁止行為 1か月以上の業務委託
第12条 募集情報の的確表示 広告等で募集を行うとき
第13条 育児介護等との両立への配慮 6か月以上の業務委託
第14条 ハラスメント対策の体制整備 従業員を使用する発注者
第16条 中途解除等の30日前予告と理由開示 6か月以上の業務委託

注目したいのは最後の行である。6か月以上の期間で行う委託を中途解除するか更新しない場合、発注側は少なくとも30日前までに予告しなければならず、予告の日から契約満了までのあいだに求められれば理由も開示しなければならない。連載や保守のような継続案件を抱えている人にとって、これは収入が突然ゼロになる事態を一か月分だけ遅らせる装置になる。

報酬の支払期日も決まっている。発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に支払期日を定める決まりで、再委託の場合は元委託の支払期日から30日以内という別の線が引かれる。内定が出るまでの数か月を乗り切る資金計画は、この上限を前提に組む。第5条の禁止行為には報酬の減額と買いたたきが並んでいるため、就活で稼働が減ることを理由に単価を下げられたときは、条文を根拠に質問してよい。

なお条文でいう「従業員を使用」とは、週の所定労働時間が20時間以上でかつ継続して31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇うことを指す。個人で動いている相手との取引では、明示義務だけが残る場合もある。

独立という道そのものを比べたい人は学生起業のデメリットが、人数の実態から考えたい人は若者とフリーランスが材料になる。

卒業後に続けるか就職するかは、戻りやすさで考える

二択に見えるこの問いは、実際には「どちらが後から変えやすいか」という問いである。厚生労働省が令和7年10月24日に公表した令和4年3月卒業者の離職状況では、大学卒の就職後3年以内の離職率は33.8パーセントだった。3人に1人が3年のうちに最初の勤め先を離れている。

内訳はもっと示唆的である。同じ新規学卒就職者の離職状況によれば、大学卒の3年以内離職率は従業員1,000人以上の事業所で27.0パーセント、500人から999人で31.5パーセント、100人から499人で33.9パーセント、30人から99人で41.9パーセント、5人から29人で52.0パーセント、5人未満で57.5パーセントとなっている。規模が小さいほど離職率は高い。

この数字を就職の否定として読む必要はない。読み取るべきは、新卒で入った会社に定年までいる前提が統計上すでに崩れているということである。だとすれば在学中の受注経験は、就職しない理由ではなく、就職した後に一度やめても食いつなげるという保険として働く。開業届を出して帳簿を付けた経験は、消えない。

逆方向の戻りやすさも見ておきたい。卒業してすぐ専業になると、新卒採用の枠は原則として使えなくなる。要請では既卒者にも通年採用を含む選考機会を提供するよう求めているが、求められているのと保証されているのは別である。片方の道を選ぶなら、もう片方に戻る経路が何年後にどれだけ細くなるかを、先に確かめておくほうがよい。地域で働く選択肢を広げて考えたいときはFLASPOも覗いてみてほしい。

よくある質問

履歴書の職歴欄に、業務委託の仕事は書けますか。書ける。屋号があれば屋号を、なければ個人事業として開業した年月と業務の内容を記す。期間と委託元、担った範囲を具体に落とすと、雇用歴との差は問題にならない。

開業届を出していると、新卒扱いではなくなるのですか。卒業予定の学生であるかどうかで判定されるため、届出の有無で新卒の枠から外れることはない。副業や兼業を禁じる就業規則は入社後の話なので、内定後に扱いを確認しておけば足りる。

選考で収入額を聞かれたら、答える義務はありますか。答える義務はない。差し支えない範囲で規模感を伝え、金額そのものより、どんな依頼をどの手順でこなしたかを話すほうが選考では意味を持つ。

就活で稼働が落ちる時期を、発注先にどう伝えればよいですか。時期と落ち幅を先に書面で共有し、納期の引き直しを相談する。黙って遅れるのが一番まずい。1か月以上の委託なら給付内容の不当な変更は禁じられているので、条件の見直しは互いの合意として進める。

卒業後に専業へ移るなら、何を先に整えますか。国民健康保険と国民年金の手続き、売上の入る口座と生活費の口座の分離、そして半年分の生活費である。学生のうちだけ使える制度が切れるので、切れる順番を書き出してから日付を決める。


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