会社設立と若者|29歳以下が7.0%という開業年齢の分布から読む

会社設立と若者|29歳以下が7.0%という開業年齢の分布から読む

同世代が会社を立ち上げたという話は、SNS上では珍しくなくなった。ところが公的な調査をたどると、開業した人のうち20代が占める割合は一桁にとどまる。見えている景色と統計の姿がここまで食い違う領域は、そう多くない。この差がどこから来ているのかを押さえておくと、会社設立を急ぐべきか待つべきかの判断がぶれにくくなる。

20代で会社をつくる人はどれだけいるのか

日本政策金融公庫総合研究所は1991年度から毎年「新規開業実態調査」を実施しており、2025年度調査は融資時点で開業後1年以内の8,517社を対象に、2,165社から回答を得ている(回収率25.4%)。この調査で開業時の年齢をみると、最も多いのは「40歳代」の36.9%、次に「30歳代」の28.0%が続く。「29歳以下」は7.0%で、「60歳以上」の6.4%に近い水準にある。

開業時の年齢 構成比(2025年度)
29歳以下 7.0%
30歳代 28.0%
40歳代 36.9%
50歳代 21.8%
60歳以上 6.4%
出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(図-1)

平均年齢は43.9歳で、調査開始以来もっとも高い。しかも「50歳代」の割合は3年連続で上昇している。つまり開業という行為の重心は、若い方ではなく上の年齢層へ動き続けている。20代の起業が目立つのは件数が多いからではなく、珍しいからニュースになる、という順序で理解しておくほうが実態に近い。詳しい数値は同調査の報告書で確認できる。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

年齢が若いことは何を安くし、何を高くするのか

同じ調査では、開業費用の平均値が975万円、開業時の平均従業者数が2.8人となっている。従業者数は3年連続で3人を下回り、開業そのものが小規模な方向へ寄っている。手元資金の少ない世代にとって、この小規模化はむしろ追い風に働く。数百万円の規模で始められる形が標準になりつつあるなら、資金の壁は昔ほど絶対的ではない。

一方で高くつくのは、実績という名の信用である。法人の銀行口座、事務所の賃貸契約、法人クレジットカードの審査、取引先の与信枠は、いずれも過去の決算や代表者の経歴を手がかりに判断される。20代の代表には、その手がかりがまだ積まれていない。ここは気合いでは埋まらず、時間か、第三者の裏づけでしか埋まらない部分だと割り切ったほうがよい。

逆に若い側が持っているのは、失敗したあとの回収期間の長さである。開業の総合的な満足度は「かなり満足」が31.8%、「やや満足」が43.1%で、合わせて74.8%が満足と答えている。項目別では仕事のやりがい、つまり自分の能力の発揮について「満足」が84.4%と際立って高い。収支より先にやりがいが満たされる構造だとすれば、その配当を長く受け取れる人ほど得をすることになる。

法人をつくるタイミングを分ける三つの条件

法人化を前に出すべきかどうかは、年齢ではなく取引の形で決まる。第一に、相手が法人格を求めているかどうか。官公庁の入札や大企業の購買では、取引先登録の段階で法人であることが条件になる場合がある。第二に、利益の水準。所得が一定を超えると法人のほうが税負担で有利になる局面が来るが、その逆の局面では社会保険料や決算の実費が重くのしかかる。第三に、共同創業者や出資者を迎える予定があるかどうかで、株式の持ち分を整理する必要があるなら法人格は前提になる。

設立の実費そのものは、会社の種類で差が出る。登録免許税や定款の扱いまで含めた積み上げは会社設立の費用の記事に、意思決定や信用力まで含めた比較は株式会社と合同会社の違いの記事にまとめてある。年齢の条件については、法律上の制限と実務上の制限が別物であるため、起業と年齢の決まりを扱った記事もあわせて読むと輪郭がつかみやすい。

自己資金での起業に効く「起業特例」という仕組み

貯金を資本金に入れて会社をつくる、という形は若い世代ほど選びやすい。令和5年度の税制改正で、この自己資金による起業そのものが非課税措置の対象になった。経済産業省のエンジェル税制のうち「起業特例」と呼ばれる措置で、会社設立時の自己資金による出資額の全額を、その年の株式譲渡益から控除できる。控除の上限は設けられていないが、非課税となるのは20億円の出資までで、それを超える分は課税繰延として扱われる。

適用には、設立年数が1年未満であること、外部資本比率が1/100以上であることという条件が付く。手元に株式の譲渡益があり、それを元手に自分の会社を立てる人には直接効く設計になっている。制度の全体像と各措置の控除上限は経済産業省のエンジェル税制のページに表の形で示されている。

なお令和7年度の改正では、株式譲渡益が発生した翌年末まで(最大2年間)に投資した場合も対象になるよう再投資期間が延びた。同時に、非課税措置については株式を取得した翌年末までの保有期間が設定された。いずれも令和8年1月1日以降に取得した株式から適用される。こうした年度ごとの線引きは後から調べると取り違えやすいため、出資した日付を書き残しておく価値がある。

20代向けに用意されている公的な入口

政府は2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を取りまとめ、スタートアップへの投資額を2027年度に10兆円規模へ引き上げる目標を掲げた。計画のなかには、若い世代を名指しした施策がいくつも並んでいる。起業を志す若手人材をシリコンバレーへ送る「出島」事業は、派遣規模を5年間で1,000人規模へ拡大するとされ、学生や女性起業家を含めて広く募集する仕組みに改める方針が書かれている。

メンターによる育成も、高専生・高校生・大学生を中心とした若手人材へ対象を広げ、全体の育成規模を年間70人から5年後に500人へ増やす方向が示されている。資金の側では、若手キャピタリストが経営するベンチャーキャピタルに限定した出資枠の創設が検討課題として挙げられた。小中高生に起業家を講師として招く教育プログラムの新設も同じ計画に含まれており、入口は年々手前に移っている。原文は内閣官房が公開している計画本文で読める。

こうした制度を調べる手間を惜しまない人が少数派であることは、29歳以下7.0%という数字が示している。裏返せば、調べた分だけ競争相手が減る領域だということでもある。学生や若手がチームを組んで動き出す足場としては、FLASPOのようなコンテスト型の場を一段目に使い、法人化は取引の必要が生じてから検討する順序も現実的である。

よくある質問(FAQ)

20代だと法人の銀行口座は開けないのでしょうか。年齢だけで断られる決まりはない。審査で見られるのは事業の実在性で、事務所の契約書、取引の予定、事業計画の具体性といった材料が揃っているかが分かれ目になる。バーチャルオフィスのみで固定電話もない状態だと、年齢に関係なく時間がかかりやすい。

在学中に会社をつくると税金の扱いはどうなりますか。法人をつくれば学生であっても法人税の申告義務が生じ、役員報酬を受け取れば所得税の対象になる。扶養の判定にも影響するため、報酬をいくらに設定するかは設立前に家族と確認しておく方が安全である。

起業特例は資本金をいくら入れても使えますか。控除額そのものに上限はないが、非課税として扱われるのは20億円までで、それを超える部分は課税繰延に切り替わる。加えて設立1年未満という期間の条件と、外部資本比率1/100以上という条件を満たす必要がある。

先に個人事業で始めて、あとから法人に切り替えても遅くないでしょうか。遅くはない。ただし自分が営んでいた事業の全部を承継させた個人とその親族等は、エンジェル税制の投資家側の要件から外れる扱いになっている。将来この制度を使う可能性があるなら、個人事業からの引き継ぎ方は設計段階で確認しておきたい。

平均年齢が43.9歳まで上がったのは、若者が減ったからですか。この調査は構成比を示すもので、若い開業者の絶対数が減ったことを直接示すものではない。50歳代の割合が3年連続で上昇していることから、上の年齢層の参入が増えた結果として全体の重心が動いた、という読み方が自然である。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。