株式会社と合同会社の違いを設立費用・意思決定・信用力で比べる

株式会社と合同会社の違いを設立費用・意思決定・信用力で比べる

手が止まるのは、たいてい同じところ

事業を始めると決めたあと、最初に迷うのが器の選び方である。株式会社にするか、合同会社にするか。比較表は検索すればいくらでも出てくるのに、自分の場合はどちらなのかという答えには、なかなかたどり着かない。

ひとつの理由は、比較の軸が設立費用に偏りやすいことにある。初期費用だけを並べれば合同会社が安いという結論で話が終わり、数年後に効いてくる差が視野から落ちる。

もうひとつは、両者の違いの大半が会社法の条文に置かれたままで、日常の言葉に翻訳されないことである。任期、公告、持分といった語が続くと、目が滑る。

そこで以下では、設立の実費、決め方のしくみ、外からの見え方、毎年かかるものという四つの角度から、実際の金額と制度に当たりながら差を確かめていく。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

設立の実費は、合同会社のほうが10万円以上軽い

まず動かせない金額から見る。会社をつくるときに国へ納める登録免許税は、会社の種類ごとに額が決まっている。

国税庁の登録免許税の税額表では、株式会社の設立は資本金の額の1,000分の7で、計算額が15万円に満たないときは申請1件につき15万円。合同会社も税率は同じ1,000分の7だが、下限は6万円である。

もうひとつ差がつくのが定款の扱いになる。株式会社の定款は公証人の認証を受けなければ効力を持たない。これに対して法務局の商業・法人登記の申請書様式では、合同会社設立登記申請書に添付する定款は公証人の認証を受けていないものが前提になっている。

認証の手数料は資本金の額で三段階に分かれる。日本公証人連合会の定款認証に要する費用の案内によれば、100万円未満が3万円、100万円以上300万円未満が4万円、それ以外が5万円で、謄本は1枚250円。さらに会社の定款手数料の改定では、令和6年12月1日から、発起人が3人以内の自然人だけで全株式を引き受け取締役会を置かない場合に限り1万5,000円に下がった。

項目 株式会社 合同会社
登録免許税の税率 資本金の額×1,000分の7 資本金の額×1,000分の7
登録免許税の下限 15万円 6万円
定款の公証人認証 必要 不要
認証手数料(資本金100万円未満) 3万円(要件を満たせば1万5,000円) かからない
紙の定款の印紙税 4万円 4万円
電子定款の印紙税 かからない かからない

印紙税は国税庁の印紙税額の一覧表で第6号文書として4万円と定められているが、課税の対象は設立のときに作成される定款の原本に限られる。電磁的記録は印紙税法上の文書に当たらないため、電子定款で進めれば両者ともこの4万円はかからない。

資本金100万円で紙を使わずに進めた場合、株式会社は登録免許税15万円に認証3万円を足して18万円、合同会社は6万円で足りる。差は12万円で、認証の軽減に当てはまれば10万5,000円になる。

決め方と任期が、合同会社では緩くなる

費用の次に効いてくるのが、誰がどう決めるかという設計である。

株式会社では出資した人が株主になり、経営は取締役が担う。所有と経営が制度のうえで分かれているので、株主総会と取締役の決定という段を踏んで物事が進む。

役員には区切りもある。法務省の役員の変更の登記についての案内では、取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、監査役は4年。公開会社でない株式会社に限り、定款で定めることで10年以内まで伸ばせる。

任期が切れると、同じ人が続投する場合でも役員変更の登記が必要になる。登記の事由が発生した時から2週間以内に申請しないまま放置すると100万円以下の過料に処される可能性があり、最後に登記をした時から12年が過ぎた株式会社は休眠会社の整理作業の対象となって、登記官の職権で解散の登記がされる。

合同会社では出資した人が社員となり、その社員が原則として業務を執行する。任期の定めがないため、役員を定期的に登記し直す作業そのものが生じない。意思決定も定款の書き方次第で、出資額と切り離した配分を組める。

もっとも、所有と経営が重なることは、社員同士の考えが割れたときに逃げ道が少ないという意味でもある。法人格を取る段で揉めやすい論点は任意団体のまま進むか法人格を取るかを整理した記事でも触れている。

外から見た差は、お金の集め方に出る

信用力という言い方は曖昧なので、具体的な場面に落として考えたい。

株式を発行して出資を受け入れられるのは株式会社だけである。ベンチャーキャピタルからの投資や株式上場という経路は、合同会社には開かれていない。持分を譲るには原則として他の社員全員の同意が要るため、投資した側が持分を売って資金を回収する設計も組みにくい。

ただし数のうえでは、合同会社は珍しい形ではなくなった。東京商工リサーチの2025年の新設法人の集計では、2025年に全国で設立された法人は15万7,011社で、うち株式会社が10万558社、合同会社が4万4,991社。合同会社は前年から2,884社増えて6.8%増となり、新設法人の28.6%を占めた。

この数値は同社の企業データベースを集計したもので、法務省の登記統計そのものではない。比率の桁を押さえる材料として読むのが妥当なところである。

取引先の与信審査では、会社の種類より決算の内容や事業の継続年数を見られることが多い。それでも官公庁の入札や大企業の新規口座開設で、株式会社を前提にした書式に当たることはある。相手が決まっているなら、その社内規定を先に聞いておくほうが確実だ。なお設立に所轄庁の認証が必要な法人格もあり、選択肢は二つだけではない。認証の考え方はNPO法人の認証の基準を読んだ記事にまとめている。

毎年出ていくものは、思ったほど違わない

設立費用の差は一度きりだが、維持にかかるものは毎年積み上がる。ここを見落とすと、安いほうを選んだつもりで後から効率を落とす。

赤字でも納めるのが法人住民税の均等割である。総務省の法人住民税の説明によれば、資本金等の額が1,000万円以下で従業者数が50人以下なら、標準税率は道府県民税が2万円、市町村民税が5万円で、合わせて年7万円。この額は会社の種類では変わらない。

消費税の扱いも共通している。国税庁の基準期間がない法人の納税義務の免除の特例では、事業年度の開始の日における資本金等の額が1,000万円以上の法人は、基準期間がない事業年度であっても納税義務を免除されない。資本金を1,000万円で切るかどうかの判断は、器の選択とは別の軸になる。

違いが出るのは公告と登記のほうである。株式会社には決算を公告する義務があり、合同会社にはない。役員の任期を10年にしても、10年ごとの重任登記は残る。その登録免許税は、登録免許税の税額表では資本金1億円以下の会社で1件1万円、それ以外は1件3万円とされている。

まとめると、毎年の固定費はほぼ同じで、株式会社のほうに数年おきの手続きが足される構図になる。器を決めるときは、その手続きを自分で回すのか誰かに任せるのかまで含めて考えておきたい。地域で小さく事業を起こす人がどこに相談するかという論点はFLASPOでも扱っている。

よくある質問

合同会社から株式会社に変えられますか

組織変更の手続きを踏めば変えられる。ただし定款の作り直し、債権者を保護するための手続き、そして登記が必要になり、登記には別途の登録免許税がかかる。あとから変更できるとはいえ無料ではないので、最初の判断を適当に済ませてよい理由にはならない。

資本金はいくらにすればよいですか

法律上の下限はなく1円でも設立できるが、三つの線を意識すると決めやすい。1,000万円以上にすると設立初年度から消費税の納税義務が生じる。1,000万円を超えると法人住民税の均等割の区分が上がる。登録免許税は税率が1,000分の7なので、下限額を上回り始めるのは株式会社なら資本金およそ2,143万円、合同会社ならおよそ857万円を超えたところからになる。

一人でも会社をつくれますか

つくれる。株式会社は発起人1人・取締役1人で、合同会社は社員1人で設立できる。法務省の一人会社の完全オンライン申請の案内では、申請書情報と添付書面情報のすべてに電子署名を付ければ、管轄の法務局へ書面を持参することなく設立登記を完全オンラインで申請できると案内されている。

合同会社だと取引で不利になりますか

場面による。入札や与信の運用で株式会社を前提にした書式に当たることはあるが、2025年に設立された法人の3割近くが合同会社という水準まで来ており、名称だけで門前払いされる場面は以前より減っている。取引相手が具体的に決まっているなら、推測より先にその相手へ確かめたい。

設立の手続きは自分でできますか

自分でできる。法務局は株式会社と合同会社それぞれの設立登記申請書の様式と記載例を公開しており、電子定款と登録免許税の電子納付を組み合わせればオンラインで完結する。かかる時間を金額に換算して、専門家に頼む費用と比べて決めるとよい。学生が起業でつまずきやすい点は学生起業のデメリットを数字で確かめた記事にまとめている。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。