会社設立の流れを9つの手順で追う|準備から登記後の届出まで

会社設立の流れを9つの手順で追う|準備から登記後の届出まで

会社の誕生日は、登記された日になる

会社をつくる作業には、どこが本番なのかわかりにくいところがある。印鑑をつくった日でも、銀行口座が開いた日でも、名刺が届いた日でもない。会社法では、株式会社は本店の所在地で設立の登記をすることによって成立すると決められている。

つまり登記が通った日が会社の誕生日で、そこから先は法人としての義務が走り出す。税務署への届出にも年金事務所への届出にも、登記の日を起点とした期限がついてくる。

順序を間違えると手戻りが出る。資本金を払い込む前に登記を申請することはできないし、定款を直せば認証をやり直すことになる。期限のほうも、短いものは5日しか猶予がない。

以下では、商号を決めるところから設立後の届出までを9つの手順に割り、それぞれで何を決め、どの期限に縛られるのかを法務省と国税庁の資料に当たりながら並べていく。

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最初の4つは、紙を書く前に決めること

手を動かす前に、決めなければ先へ進めない項目がある。ここが固まっていないと、定款を書いても書き直しになる。

第1の手順は商号である。会社の種類を表す語を必ず入れ、同一の本店所在場所に同じ商号がある場合は登記できない。既存の商標とぶつかると、登記は通っても使えなくなることがある。この見極めは商標と法人名の制限から名前を絞った記事で扱った考え方がそのまま使える。

第2が本店の所在地で、第3が事業目的になる。事業目的は定款に書いた範囲が会社の活動範囲になり、許認可が必要な事業では、その文言がそのまま審査の対象になる。あとで足すと定款変更と登記が要るので、始める予定のものは最初から書いておきたい。

第4が資本金の額と、誰がいくら出すかである。払い込んだ額がそのまま資本金になり、登録免許税の計算のもとになる。1,000万円という線が税の扱いを分けるため、額は税負担まで見てから決めることになる。

第5の手順として、これらをまとめた定款を作る。発起人全員が署名または記名押印する書面で、記載を欠くと効力を持たない項目がある。どの項目が必須なのかという整理は定款の必要的記載事項から条文を起こした記事に書いた。

認証と払込みは、順番を入れ替えられない

第6の手順が定款の認証になる。法務省の株式会社の設立手続(発起設立)の案内では、発起人が定款を作成して全員が署名または記名押印し、公証人の認証を受ける必要があるとされている。合同会社の場合はここが丸ごと省ける。

認証にかかる手数料は資本金の額で分かれる。日本公証人連合会の定款認証に要する費用の案内では、100万円未満が3万円、100万円以上300万円未満が4万円、それ以外が5万円で、謄本は1枚250円。令和6年12月1日からは、発起人が3人以内の自然人だけで全株式を引き受け取締役会を置かない場合に限り、1万5,000円に下がっている。

第7が出資の履行である。設立時発行株式の引受け後に遅滞なく、引き受けた株式について出資に係る金銭の全額を払い込む。会社の口座はまだないので、発起人個人の口座に振り込み、その通帳の写しから払込証明書を作る。

第8が設立時役員の選任と調査になる。出資の履行が完了した後、遅滞なく設立時取締役を選任し、取締役会設置会社であれば設立時代表取締役も選定する。選ばれた設立時取締役は、設立の手続きが法令と定款に従っているかを調査する。

この調査の終了日が、次の期限の起点になる。だからここを飛ばして登記を急ぐと、申請書に書く日付が立たなくなる。

登記の申請には2週間という期限がある

第9の手順が設立登記の申請である。期限は明確で、株式会社の設立手続(発起設立)の案内では、設立の登記は本店の所在地において、設立時取締役等の調査が終了した日または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならないとされている。

申請書の様式と記載例は法務局が商業・法人登記の申請書様式として公開している。株式会社の様式では公証人の認証を受けた定款、就任承諾書、払込証明書、印鑑届書が添付書類として示され、合同会社の様式では定款に認証が要らない前提になっている。

オンラインで申請すると処理が速い。法務省の完全オンライン申請による法人設立登記の24時間以内処理では、役員等が5人以内、添付書面情報がすべて電磁的記録で作成された完全オンライン申請、登録免許税が収入印紙ではなく電子納付、補正がないこと、という条件を満たす申請について、受け付けた時点から起算して原則として24時間以内に登記を完了するとされている。ただし登記申請件数の多い時期は除かれる。

登記が完了したら、第9の手順の締めとして登記事項証明書と印鑑証明書を取る。法務省の登記手数料の一覧では、令和7年4月1日の改定後、登記事項証明書が書面請求600円、オンライン請求で送付520円、オンライン請求で窓口交付490円。印鑑証明書は書面請求500円、送付450円、窓口交付420円である。

登記のあとの届出は、期限の短い順に待っている

会社ができた時点で、手続きは終わりではない。ここからの届出は期限が別々に走るので、短いものから片付けるのが安全になる。

最も短いのが社会保険である。日本年金機構の新規適用の手続きの案内では、健康保険・厚生年金保険新規適用届の提出時期は事実発生から5日以内。法人事業所では、提出日からさかのぼって90日以内に発行された法人の登記簿謄本が必要で、写しでは受け付けられない。

次が税務署への届出になる。国税庁の新設法人の届出書類では、法人設立届出書は設立の日、すなわち設立登記の日以後2か月以内に提出する。青色申告の承認申請書は、設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日のうちいずれか早い日の前日までが期限で、初年度から青色申告にするならここを外せない。

手続き 提出先 期限の起点 期限
設立登記の申請 法務局 調査終了日か発起人の定めた日の遅い日 2週間以内
新規適用届 年金事務所・事務センター 事実の発生 5日以内
法人設立届出書 所轄の税務署 設立登記の日 2か月以内
青色申告の承認申請書 所轄の税務署 設立の日 3か月経過日と第1期末の早い日の前日
役員変更の登記 法務局 登記の事由の発生 2週間以内

都道府県と市町村への法人設立の届出、従業員を雇うなら労働基準監督署とハローワークへの手続きも続く。さらに法務省の役員の変更の登記についての案内では、役員変更の登記を登記の事由が発生した時から2週間以内に申請せず放置すると100万円以下の過料に処される可能性があるとされ、最後に登記をした時から12年を経過した株式会社は休眠会社の整理作業の対象になる。設立したあとも登記は続くという前提で、任期を手帳に書いておきたい。

地域で小さく事業を立ち上げる人がどこで詰まるかという話はFLASPOでも扱っている。制度の順番を知っているかどうかで、最初の1か月の忙しさがかなり変わる。

よくある質問

会社設立までにどのくらいの日数がかかりますか

決めごとと書類の準備にどれだけかけるかで変わるため、一律には言えない。登記の処理そのものは、役員等が5人以内で添付書面情報をすべて電磁的記録にし、登録免許税を電子納付して補正がない完全オンライン申請なら、原則として受付から24時間以内に完了するとされている。逆に紙で申請して補正が入ると、その分だけ後ろへずれる。

資本金はいつ払い込みますか

定款の作成と認証を済ませ、設立時発行株式を引き受けたあとに払い込む。会社名義の口座はまだ開けないので、発起人個人の口座を使い、入金の記録が残る形で振り込むことになる。登記の申請では、その記録をもとにした払込証明書を添付する。

合同会社だと手順はどこが減りますか

公証人の認証が丸ごと不要になる。法務局の申請書様式でも、合同会社の定款は認証を受けていないものが前提になっている。認証にかかる手数料と日数が落ちるため、実務上はここが一番大きい差になる。登記の申請以降の届出は、株式会社と同じ流れをたどる。

事業目的はあとから追加できますか

追加できるが、定款の変更と変更登記が必要になる。登記には登録免許税がかかり、株主総会の決議も要る。将来やる可能性のある事業は、始めるかどうかが未定の段階でも書いておくほうが安い。ただし許認可の審査では目的の文言が見られるので、関係のない事業を無闇に並べるのも得にはならない。

法人格を取るかどうかで迷っています

収入の規模、契約の相手、責任の切り分け方という三つで考えると整理しやすい。法人でなければ結べない契約があるか、個人の資産と事業の資産を分ける必要があるかが分岐点になる。任意団体として続ける道も含めた比較はNPO法人の作り方を逆算した記事が参考になる。

オンライン申請には何が必要ですか

申請者本人の電子証明書と、それを読み取る環境が必要になる。法務局は株式会社の設立登記のオンライン申請の案内で、申請用総合ソフトを使った手順と必要な電子証明書を示している。電子定款にしておけば印紙税の4万円もかからないので、オンラインで進める利点は日数だけではない。


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